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オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~  作者: 紫 和春


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第31話 ようやく到着しました

 九王たちは山から下り、トラックが置いてある広場で一休みする。

 数時間ほどすると朝日が昇り、やがて初夏の日差しを浴びることができるだろう。

 暦上では季節は夏に入ろうとしていた。しかし、実際には気温は20℃に届かず、比較的肌寒い日々が続いている。これも核の冬の影響なのだろう。

 そして休息を取った九王たちは、そのまま新東名高速道路に乗って静岡市を横断しようとする。


「まだ高速道路が生きているからいいが、あと10年くらい経ったら、このインフラも使えなくなるんだろうな……」


 小堀が弱気なことを言う。


「どうしたんですか? いつもの小堀さんじゃないですね」

「いや、まぁ、この辺りの所感も報告しないといけないからさ。なんか……、漠然とした不安に襲われているんだよ」

「小堀さんにも、そんな感情あったんですね」

「全身機械の九王君には言われたかないわ」


 そんな話を挟みつつ、数日かけてようやく浜松市の外縁に到着した。


「お疲れ様です。浜松市に入りました」

「ようやくか……。かなりの旅路に思えてきたぞ」

「実際2週間くらいかかっているからね」


 小堀の愚痴に、ウッマが冷酷な数値を出してくる。


「絶対無駄な時間が多かったって……」

「とにかく、市の中心部に行ってみましょう。今日の移動はそこで終わりです」


 下道に下り、通れる場所を選んで進む。やはり瓦礫が多く散乱しており、何かと進むのに不便である。大回りする形で浜松市の中心部にほど近い、旧航空自衛隊浜松基地へと到着した。


「航空基地だっていうのに、何もないな……」


 滑走路そばのエプロンを爆走しつつ格納庫の中を確認するものの、主要な航空機や周辺機材などはすっからかんである。


「くそー、移動手段に航空機って選択ができるかもしれなかったのに……」

「その燃料はどこで調達するんだい?」


 小堀の願望に、容赦なくツッコむウッマ。結局、敷地の北にある宿舎を寝床に利用するしか使い道がなかった。


「しばらく寝てないから、今回ばかりはたっぷり寝る。大体20時間くらいだな。その間は安静にさせてくれ。本当に緊急の場合は、前やったみたいに起こしてくれ」

「分かりました」


 そういって小堀は長時間の睡眠に入った。


「みこね。この時間、どうする?」

「そうですねぇ……。せっかくですから、ちゃんと街の様子を見ておきたいです」

「じゃ、散歩だね」


 そういって九王たちは、基地の近くの街中を散策する。

 どこもかしこも荒れているが、程度に差があるようだ。ほとんど壊れていない家。半壊しているアパート。完全に倒壊している小さなビル。

 それらを見て、九王は何か思う所があるようだ。


「こうして見ると、人類のいた痕跡がどんどん消滅していってるような気がします……」

「しょうがないよ。この宇宙は物理法則に則って動いている。エントロピーの増大によって、どんな物も乱雑に、無秩序になっていく。そしてそれらは自発的に戻ることはないんだから。これが自然の摂理だよ」


 九王はウッマに諭される。実際彼の言っている通りなのだが、どうしても胸の奥にある何かがそれを拒絶している。


『私たちはここにいる! ここで生きている!』


 九王はそのように叫びたくなった。しかし、機械である九王が生きていると叫ぶのは何か変な感じがするだろう。

 そんなしんみりとした感じで街を巡っていると、あっという間に日が暮れる。九王たちは小堀が寝ている部屋の隣で休憩することにした。

 そして翌朝。


「それじゃあ、その目的地に向かうか」


 小堀はエンジンをかけて、九王に聞く。


「その……なんていう寺だったっけか?」

永爛院(えいらんいん)鍾皇寺(しょうこうじ)ですよ。地図上ではここから車で20分って出ていますけど、多分2時間くらいかかりますよ」

「不安だなぁ……」


 そんなことを呟きながら、小堀はトラックを発進させる。

 そして案の定、瓦礫に道を阻まれながら、やっとの思いで鍾皇寺の門までやってきた。


「それでは、ご対面と行きましょう」


 九王はルンルン気分でトラックから降り、正面の門から敷地内を覗く。

 そこにあったのは、建物が崩壊し、瓦礫の山しか存在しない鍾皇寺の姿だった。

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