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オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~  作者: 紫 和春


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第28話 未知と遭遇しようとしました

 朝になり、九王たちはトラックに乗り込んで、目的地である浜松へと向かう。

 富士宮市に突入すると、新東名高速道路に乗って西へと進む。

 その道中のことであった。


「この辺りから静岡市ですね。ここまで来れば、浜松市までもう一息ですね」

「どのくらいで着くんだ?」

「今までのペースで、おおよそ4日くらいですかねぇ」

「……それのどこがもう一息なんだ?」

「今回の調査は、割と大回りな道を通ってきているので、余計に時間がかかっていることが原因ですね。このまま何も無ければ、最速で4日で到着する計算です」

「大体お前が原因じゃねぇか。なんでそんな遠くまで行こうと思ったんだよ」

「呪物が安置されている寺院があるからですよ」

「はぁ……。そういや行動原理がそういう風に設定されているんだったな……」


 小堀は頭を抱えるが、そういうものだと考える。

 すると九王が小堀にナビゲーションする。


「あ、小堀さん。そこのインターチェンジを下りてください」

「あ? ここに何かあるのか?」

「もちろんです」


 小堀は九王の言葉を無視しようとも考えたが、無視した時の損害を思うと無下に断ることはできなかった。

 小堀は言われた通りにインターチェンジを下りる。


「んで、どうするんだ?」

「今、横に広場が見えてますよね? そこにトラックを停めてください」


 小堀は言われるがまま、広場にトラックを停める。


「ここは……どこだ?」

「静岡市の清水区ですね」

「みこね、ここには何があるの?」

「よくぞ聞いてくれました! ここにはなんと、オオツチザルがいるんです!」

「……はい?」


 九王の自信満々な発言を聞いたが、小堀はいまいちピンと来ていないようだ。


「その……、オオツチザルってのはなんだ?」

「知らないんですか!? オオツチザルってのは、とある界隈で有名な未確認動物(UMA)ですよ?」

「俺は知らないな……」

「僕も知らない。みこねの言うその界隈って狭くない?」

「そんな訳ないじゃないですかぁ!」

「あー……。とにかく、そのオオツチザルってのはどういうUMAなんだ?」


 小堀は頭を抱えながら九王に聞く。


「オオツチザル……別名静岡のビックフットはですね━━」

「それもうビックフットでいいじゃねぇか」

「━━土の中に巣を作ると言われているヒト型のUMAなんです。目撃された場所では40cmもの大きな足跡が残されていたことから、富士山の守護者とも言われています。その生態は、山の急斜面に穴を掘り、そこで暮らしているとされています。実際に巣と思われる横穴も発見されており、その周辺では猪や熊などの大型哺乳類の骨があちこちに散らばっていたとも報告されているんです。ですが、遭遇例は非常に少なく、その歴史も他のUMAから比べれば短いため、激レア中の激レアとも言われているんです」


 九王はかなり興奮した様子で言う。


「それ、ソースというか出所はどこだ?」

「分散型ソーシャル・ネットワークのオカルト板に張られていたネット記事ですが?」

「じゃあまず信憑性は皆無だろうがよ」


 小堀はキレそうになりながら突っ込む。


「でもオカルトってそういうものじゃないですか?」

「うーーーん……」

「小堀、ここはみこねの自由にさせておいたほうがいいよ。こうなったみこねは、もう誰にも止められないんだ」


 九王に対して降伏するように諭すウッマ。小堀も、九王の奇行の理由をこれ以上考えたくなくなってきた。


「あー、分かった。とりあえず霊長類っぽい動物を探せばいいんだな?」

「話が早くて助かります。それと、用意するものがあります」


 そういって九王は、どこからともなく雑巾のような布を取り出す。その布からは、熟しすぎたフルーティーな香りがするだろう。


「ネット記事によれば、オオツチザルの好物はバナナを中心としたフルーツとのことです。そこで、様々なフルーツの香りを再現した布を用意しました」

「さっき自分で猪や熊の肉食ってるような発言していたよな? まるっきり発言が矛盾しているじゃねぇか」

「いいんですよ、そんな細かい話は」

「どこも細かくねぇだろ」

「とにかく、この布を5枚用意したので、餌として仕掛けましょう。捕縛のために、簡単な罠も設置します」

「はいはい……」


 小堀は手伝わされることを覚悟して、トラックを下りた。

 トラックの停まっている広場を中心に罠を仕掛ける。お互いの距離は100m程度。九王曰く、このくらいがちょうどいいとのことだ。


「このまま一晩待ちます」

「えらく気の長い待ち時間だなぁ……」


 しかし睡眠が取れるメリットもある。このチャンスを利用して、小堀は睡眠を取った。

 そして夜が明け。昨日仕掛けた罠を一つ一つ見ていく。しかし、その罠にも動物が触れたような形跡はなく、小さな蛾や昆虫が数匹とまっているだけだった。


「そもそもだな、核の冬で絶滅したって可能性は考えなかったのか?」

「それは……、忘れてました」

「じゃあ調査はここまでじゃないか?」

「……いえ」


 九王は声を張り上げる。


「絶対にいます! オオツチザルは絶対に生き残っています!」

「うぉ、急に声量変わるじゃん」


 その熱量に負けたのか、小堀は一つ溜息を吐く。


「分かったよ……。明日だ。明日までに何の成果も得られなかったら、すぐにここを出発する。いいな?」

「もちろんです!」


 九王はやる気に満ちていた。

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