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オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~  作者: 紫 和春


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第19話 少し対話しました

 九王たちは、東京23区の下道をひたすら走っていた。

 理由は単純。理研からいい感じに乗れる高速道路がないことと、都内を通る高速道路の半分近くは崩落しているからだ。

 そのため、通れる場所を探すと、必然的に道幅が広い道路を通ることになる。しかしそれでも、途中の道路が陥没していることが多く、下道でも回り道をさせられる場合が多い。


「インフラをそのまま使うことができるって理由で、俺は地球の調査に来ているけど、これだけ道路の修復が必要だってなると気が滅入るな……。一度全部を更地にしたほうが早そうだ」

「それはいい考えかもしれないですね。けどどっちにしろ、相当量の労力が必要なのは明白です」

第4銀河艦隊(俺らの総力)なら出来ないことはないが、やるとなったら面倒なことになるな……」

「それでも出来てしまう宇宙人類はすごいですね」


 小堀の推測に、九王は素直な感想を述べる。


「ですが人類が信仰していた価値観によると、誰かのお墓を荒らすことで悪霊が出現するようになると信じられていたそうです。それでも小堀さんはやりますか?」

「……それはあんまりやりたくないな」

「そうですよね。なら、この都市をそのまま利用するしかないんじゃないですか?」

「……一介の調査員がどこまで発言権を持っているか分からないけど、とりあえず上官に進言してみるよ」


 そういってトラックを走らせる小堀。


「しかし、こうして下道を走っていると、高速道路のありがたみが良く分かるよ」


 そんなことをぼやきながら、世田谷区に入った。すると、小堀はトラックを路肩に停める。


「何かありました?」

「なんかガソリンの減りが早い気がしてな……。ちょっと調べるから二人とも降りてくれ」


 小堀は運転席から降りると、座席の下に置いていた小さな整備台車を取り出す。そのまま台車に寝そべって、トラックの下に入り込んだ。


「どのくらい時間かかります?」

「分からん。少なくとも1時間はかかるかもしれない」


 九王とウッマは顔を見合わせる。そして九王が提案した。


「環境測定しましょうか」

「そうだね。せっかく時間が空いてるし」


 こうして九王たちは、急遽環境測定を行う。


「では清応49年5月15日、世田谷区にて通常の環境測定を行います」


 そういって計測装置と同期して、環境測定を開始する。この日はそよ風が吹いていて、普通の人間にとっては過ごしやすい環境だろう。放射線量が高いことを除けば、だが。


「ここも風の流れによっては、放射性物質が降着する可能性がありますね。生命が存在しない理由もよく分かります」

「でも小堀の仲間はここに入植するつもりなんでしょ? 可能なのかな?」

「分かりません。前に宇宙放射線のほうが酷いと離していましたが、それでも限界というものがあると思います」

「それすらも何とかなる技術力が宇宙人類には存在するのかぁ」


 そんなことを言っていると、小堀がトラックの下から出てくる。


「やっぱりだ。ガソリンが漏れていた」

「すぐに直せるものなんですか?」

「多分な。俺の見立てでは、ボルトの締め付けが悪かったと思われる。どこにスパナしまったっけな……」


 そういって小堀は運転席の下を探り、スパナを取り出す。そして再び台車に乗って車の下に入っていった。

 5分ほどで小堀が出てくる。


「これで問題ない。出発できるぞ」

「こちらも環境測定が終了しました。出発しましょう」


 そうして九王たちは東名高速道路へと進んでいく。

 小堀はデコボコになった道路を見て、ポロリと言葉をこぼす。


「人のこと言えないんだが、人類ってのは愚かなのかね」

「と言いますと?」

「ここまで世界を荒廃させた戦争をしておきながら、同じ祖を持つスペーサー(俺たち)がもう一度支配しようとしている。歴史を繰り返し、再び戦火を交えることになっても、な」


 小堀が皮肉のように言う。


「それでもいいんじゃないですか?」

「……理由を聞こう」

「万物の生命にとって、戦うことは生命の基本原理であると思います。戦うことで生き延びる、戦うことで獲物を捕らえる。戦うことで何かが得られます。生命同士が戦うことは、何も不思議なことではありません」

「なるほどな……。戦ったり、争ったりすることが、生命の本質ということか。それは一理ある。だが、争う必要がないのなら、それに越したことはないと思うがな」

「完全に争うことを止めれば、それはもう死んでいると同義ではないですか?」

「……想像はしにくいが、もしかしたらそうなのかもしれないな」


 そんな時、小堀にある疑問が浮かんだ。


「そういう九王君たちは、戦う本能みたいなのはあるのか?」

「……分からないですね。一応防衛戦術教本みたいなデータはプリインストールされていますが……」

「そうか。まぁ、そういう武力っていうのは、使わないのが一番だ」


 そんな話が行われながら、トラックは目的地へと進む。

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