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オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~  作者: 紫 和春


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第18話 ちょっと喧嘩しました

 九王たちは数日ほど理研の敷地内で過ごした。次の遠征が待っているからだ。そのために九王とウッマは軽いメンテナンスを行い、小堀は脳の体調を万全にしていた。


「では新たな観測地を目指して、次の目的地へと向かいましょう」

「しばらく待機時間だったのはこれのためか」

「そうだね。今回のメンテナンスは軽いものだったから、こんなに休憩を取らなくてもよかったんだけどね」

「準備を万全にするのは大事じゃないですか。準備が良ければ、危険が差し迫っていても対処できますからね」


 九王はドヤ顔で言い切る。


「まぁ確かにその通りだ。それで、今回はどこに行くとか決まっているのか?」

「今回は静岡県の浜松市に向かいます」

「どのくらい離れている?」

「直線距離で200kmくらいですねぇ」

「200kmかぁ……。第4銀河艦隊(うち)の標準戦艦の全長と同じくらいだな」

「そんな巨大な建造物があるんですか?」

「銀河艦隊では普通に建造できるぞ。無重力だから資材をその辺に放置できるし。これでも|第2銀河艦隊や第3銀河艦隊《俺たちの仮想敵》に比べれば圧倒的に数が足りていない」

「宇宙は広いですねぇ……」


 そんな話をしながら、九王たちはトラックに乗り込む。


「ところで、浜松とかいう場所に行ってどうするんだ? 何か目的でもあるのか?」

「もちろんです。今回は永爛院(えいらんいん)鍾皇寺(しょうこうじ)というお寺に向かいます。ここには日本全国から集められた呪物が納められているとネット記事に書かれていました。もしかしたら、とんでもない心霊現象を観測できるかもしれませんよ」


 それを聞いた小堀は、エンジンをかけようとした手を止める。


「九王君、俺は行かないぞ」

「……はい?」

「結局心霊に関する環境測定を行うつもりじゃないか。俺は言ったはずだ、オカルトや心霊は苦手だと」

「それの何が悪いんですか? 嫌いではないのでしょう?」

「ぅ……」


 小堀は図星のような顔をするが、すぐにトラックから降りる。


「とにかく、今回は俺は運転しない。行くなら勝手に行ってくれ」


 そのままトラックから数メートル離れる。ウッマはそれを黙って見ていた。

 一方で九王は、人間的な感情が少しだけ出る。


「そんな……! そんなのないですよ小堀さん! 寝食を共にした仲間じゃないですか!? もういいです! そんなに行きたくないのなら、私とウッマだけで行きますよ!」


 そういって九王は運転席に移動し、エンジンをかける。しかしブレーキとクラッチを同時に踏んでいなかったために、いくらキーを回してもエンジンはかからない。


「みこね、ブレーキとクラッチを一緒に踏まないとエンジンはかからないよ」

「ぐっ……」


 九王は一瞬ウッマのことを睨んだが、すぐにキーと向き直ってエンジンを始動させる。

 今度はちゃんとブレーキとクラッチを踏んでいたため、エンジンが動き出した。


「本当に行っちゃいますからね!? いいですか!?」


 九王は最後の確認をするように、小堀に問いかける。


「あぁ、好きにしたらいいだろ」

「小堀さんの気持ち、十分に分かりました! では、ここでお別れです!」


 そういって九王はアクセルを踏む。しかしエンジンの回転数が上がるだけで何も起きない。


「みこね、アクセルを踏みながら半クラにしないと……」

「うぅ……」


 九王はウッマの助言通りに、クラッチから足を離す。しかし勢いよく離したことでトラックは前後に大きく揺れてエンストした。


「くっ……、まだ……!」


 再びエンジンを始動させて前進しようとするが、またもやエンスト。三度エンジンを始動させて、またまたエンスト。一向に進む気配がしない。


「えーん、トラックが言うこと聞いてくれませぇん……」

「みこねの運転が悪いだけだと思うよ」


 九王の泣き言に、ウッマが心無いツッコミを入れる。

 その様子を見ずに音だけ聞いていた小堀は、さすがに無視できなかった。


「あぁもう! 分かったから! 俺が運転するから変われ!」


 小堀は運転席のドアを開けて、九王を助手席へと追いやる。


「小堀さん……」


 九王が見ている横で、小堀はシフトノブを動かし、スムーズにトラックを前進させる。


「俺はこの列島の環境データが欲しい。九王君は環境測定を専門にデータを収集している。なら互いに利益がどこかにある。ウィンウィンの関係だ。俺が運転手になるから、その代わりとして俺は心霊観測に絶対に同行しない。これでいいだろ?」


 九王の表情が明るくなる。


「もちろんです!」


 トラックは理研の敷地を出て、大通りを走っていく。


「じゃあ取引成立……」


 そう言いかけた小堀は、次第に顔を青くする。


「どうかしました?」

「いや……。やっぱり心霊観測する時も同行する。うん、その方がいい」


 頭にクエスチョンマークを付けている九王。荷台から答えが飛んでくる。


「どうせ一人ぼっちで待機している時に心霊現象が起きたら、怖くていてもたってもいられないんでしょ?」

「ウッマてめぇ!」


 小堀が大声を出す。小堀とウッマが言い争いしている横で、九王はなぜか笑いだしていた。

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