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ステータスオープン【魔法・技術】

「自分にしか見えないステータスウインドウってゲーム過ぎて好きじゃない」

それな。わかる。

でも魔法があるなら無理ではないって思うんですよね。

 カタカタカタカタ

 魔道具研究所にキーを叩く音が響く。


「先輩、先輩、いつもカタカタ何やってるんですか?」


 十代後半の赤毛の少女が俺の顔を覗き込む。

 最近研究所に入ってきた後輩だ。


「仕事だ」


 俺は短く答えると再びキーを叩きはじめる


「その小さい石がいっぱいついてる板を叩くとなにか起きるんですか?」


 どうやら後輩はキーボードが気になるらしい。

 まぁ、傍から見てれば虚空を見つめてカタカタやってる変な人だしな。

 仕方がない。教えてやるか。


「こいつはキーボード。叩くと魔法陣に使う書式を構築できるんだ」


「え? 何も見ないで書式が書けるんですか?」


「いや、見ながら作ってる。他の人からは見えないだけだ」


 頭にハテナマークが出ていそうな後輩に腕輪を渡す。


「それをつけろ。俺が見ているものが見える」


 後輩が腕輪をつけると表情が変わる。

 今なら後輩の目の前に文字が書かれた黒い四角が浮いて見えるはずだ。


「先輩! なんですかコレ!?」


「俺がキーボードでカタカタするとここに文字が出る」


 実際にキーをいくつか叩いて見せる。


「これで書式を構築して最後に魔法陣や魔法回路に書き込むんだ。わかったら返せ」


 俺は再びキーを打ち始める。

 魔道具の納期は待ってくれないのだ。


「先輩先輩、これってどうなってるんですか? こんな魔道具見たことないですよ!」


 そりゃそうだ。

 俺が作ったからな。


「どうなってると言われてもな。お前もステータスは開けるだろ?」


 後輩は頷く。


「アレと一緒だよ」


「ステータスと一緒と言われてもサッパリわかりませんよ先輩!」


 保存キーを押して作業を止めるとため息をついて後輩に向き直る。

 こいつは納得するまでつきまとうに違いない。


「ステータスは他人には見えない、それはわかるな? ではステータスはどうやって本人の目に見えていると思う?」


 後輩は首をかしげる。


「魔法で心当たりはないか? 自分だけに見えるものではなく、他人だけに見せるものであればどうだ?」


 後輩は手をポンと叩く


「夢ですね!」


「発想は近いがハズレだ」


 俺は短く詠唱して後輩に魔法をかける。

 後輩には舞い散る花びらが見えているはずだ。


「これって……幻影魔法?」


「そう。それがステータスウインドウの正体だ。幻影魔法を自分にかけることでそこに存在しないステータスウインドウを見せている。実際にはかなり細かい処理がされているが、原理は幻影魔法と同じだ」



 俺はだいぶ前に地球から異世界に来たが、冒険者ギルドで登録する時に使った「手を乗せるとステータスが見える板」に驚き魔道具の世界に飛び込んだ。

 なんせ空中に文字が書かれた板が浮いているのだ。

 地球の技術で言ったらVRを飛び越して裸眼ARだ。

 そりゃ驚く。


 それから魔道具を基礎から学び、使われる魔法陣の書式がプログラムのような規則性がある事も知った。

 基礎ができた頃、修理のために仕事場に置いてあった「例の板」をリバースエンジニアリングして、ステータスウィンドウの仕組みを再現する事ができたのだ。

 テストで自分のステータス表示を全部999にして遊んだのはいい思い出だ。


 魔道具はメインプログラムが入った石を単機能が入った石が補佐する形で回路が組まれている。単機能というのは例えば「自身にウインドウを見せる石」とか「表示する文字の形の一覧が入った石」のような感じ。

 これらの単機能の書式はわかりやすかったんで分析しやすかったがメインの石はまだ勉強中だ。

 ちょっと概念がね、地球と違いすぎる部分が多い。

 プログラムの中で神への儀式を行うとか言われてもわからんわ。


 で、理解できた機能を組み合わせて作ったのが俺が使ってるキーボードだ。

 自身に幻影魔法をかけて画面を表示し、押したキーに対応した文字を表示する。

 他人に見えるようにすることもできるのだが範囲魔法になるので書式が難しくなり消費魔力も大きくなる。そうなると実用的ではなくなるので表示は使用者に限定している。


 そのおかげで後輩の質問地獄に合っているわけだが。



「なんとなくわかりました」


 後輩は納得したようだ。


「でも先輩が仕事しているかいないかわからないのは困ります」


 と、言われてもな。

 納期を守れば文句は言わないのが研究所の掟だ。


「そのキーボードあたしにください。研究して誰でも見えるようにします」


「今使ってるのをくれてやるわけにはいかないが試作品がいくつかある。それを持っていく事を許可する」


 手を振って後輩を追い払う。

 これで仕事が再開できる。


 この後輩、幻影魔法での再現は結局諦めることになるのだが、後に魔道具でモニターを発明することになるとはこの時の俺は思いもしなかったのである。



 ―――おまけ―――


 ステータスオープン、異世界七不思議のひとつです。

 なんで情報ウインドウが出るんだよ。ゲームかよ。

 と、思われる事が多い設定の筆頭かもしれません。


「そういう世界だから」


 そんな言葉で片付けるのはあまり好きではないので、それなりに納得できそうな方法を探した結果が幻術でした。


 通常、幻術というのは通路に幻の壁を出して行き止まりだと思わせたり、倒したと思ったら「幻影だ」とか言いながら背後に現れたりする時に使います。

 共通しているのは「そこに存在しないものを見せる」という点。

 それであれば「そこに存在しない情報ウインドウ」を見ることもできるはず。


 これなら既存の魔法でなんとかできそうです。

 さすが魔法。

 やればできる子です。


 ただ、ステータスウインドウに表示するステータス自体はどうにも解決手段が浮かばないので話の中でも曖昧にしています。神様頼りです。


 実際に身長体重尿酸値握力背筋などなど一応数字にできるので、もしかしたらなんとかする方法があるのかもしれませんけど、今はまだ思いつきませんねー

 実現したら身体測定も健康診断もいらなくなりますね。

 便利そう。


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