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商人の税金【政治】

農民の税金は収穫から割合ダメージで徴収されるのが租税であると共通認識ができている。

しかし商人の税金はどうだろう?

ということで書いてみました。


支店についての質問をいただいたのでおまけに追記しました。

 俺が異世界に飛ばされて1カ月。

 折角なので商売を始めようと思い立ち、街の商人ギルドに来ている。

 木造ながらも上品なデザインのギルド会館は商人であろう人達でごった返している。


「ギルドへの登録は初めてですか?」


 顔に営業スマイルを貼り付けた美人受付嬢に頷く。


「営業形態はどのような形をお考えですか?」


 営業形態?


「商人ギルドのランクは星なしから星5つまでありまして、星なしは手伝い、見習い。星1つは店を持たない行商や露天商。星2つは店舗を構えての街商人になります」


 どれでも選べるの?


「選ぶことは可能ですが、それぞれ星が増えるごとに登録手数料、年会費が増えます」


 ちなみに費用は?


「星なしは無料。星1つは銀貨5枚、星2つは銀貨50枚必要です」


 結構変わるな。

 星なしが店舗構えて店を出したらどうなるの?


「店には当ギルドが提供するギルド紋章を掲げるのがルールになっています。密売店からは手数料を請求し強制的に星2にいたしますが、街の外ではその限りではありません。街の外の店舗を保護する事はできませんので」


 なるほどね。

 とりあえず星1つで登録して必要に応じてランクアップさせてもらえばいいか。

 懐から銀貨を出して星1で登録を頼む。


 名前と血液を使った個人認証を登録して手続きは終了。

 木彫りのクリスマスリースのようなものを渡される。


「こちらがボックターリ商人ギルドの紋章になります。取引をする際には見える場所にぶら下げてください。ギルド登録商人の証になります」


 なるほど、正規店アピールに使うわけね。

 ちなみに星2つの紋章はこちらですと見せられたのは直径1メートルはあるバカでかい紋章だった。看板がわりに使うみたいだ。


「以上でギルド登録は終わりです。何か質問はありますか?」


 張り付いた笑顔の向こうにとっとと帰れオーラが見えなくもないが、どうしても聞かなきゃならない事がある。

 税金がどうなっているのかだ。


「税金、ですか。星2ランクまではあまり気にしなくても大丈夫ですよ」


 と、いいますと?


「行商ですと、街に入る時の入場税、露店を出す時の出店税、街によっては関税がかかるぐらいですね。直接税なのでその時その時に払って終わりです」


 売上によって税がかかったりはしないのか。


「小商いの売上をいちいち監視したりはしないのが一般的です。もちろん領主様の方針なので一概には言えません」


 儲かっても儲からなくても取られる税金は同じという事はきっちり儲かる商売をする必要があるわけだな。


「小さな村だと入場税も出店税も無料だったりしますよ。その分売上も小さいですが」


 小さい村で税金取って商人が誰も来なくなったら困るもんな。

 名産品があるような村ならまた違うのかもしれない。


 行商以外の税金はどうなってるのかな?


「店舗を出す場合は、店舗を建てる時に税がかかり、それ以降は毎年店の大きさに合わせて税がかかります。ここボックターリだと小さい店舗で金貨6枚、月に銀貨50枚ぐらいで、街によって税の金額は上下します。街の中に店舗を出しているので人頭税もかかりますね」


 銀貨100枚が金貨1枚程度だからそこそこ税金高い気がする。

 ランニングコストとは別計算だもんな。

 どうなんだろう。


「あなたには関係ありませんが、貴族と取引できる星4つ以上になると売上に対して税がかかるようになりますよ。そのため、星3つ以上になるためには読み書きができる従業員の雇用と帳簿の記録が条件になっています」


 せめて「今の」あなたには関係ないと言ってくれないだろうか。地味に傷つく。


 それにしても異世界で帳簿か。

 簿記勉強しとけばよかったかー

 地球でも簿記はやや特別なスキルだったもんなー


「帳簿があっても脱税は多いみたいですがそれはおいといて、貴族との取引、国との取引、仲買を仕切る卸問屋ぐらいになるまでは細かい税の計算は必要ありません。印璽(いんじ)商人を目指してがんばってください」


 また知らない単語でてきたぞ? 印璽商人?


「星4つ以上の商人は取引の証明書に印璽(ハンコのようなもの)を使います。印璽が必要なほどの大商いができる商人を敬意をこめて印璽商人と呼ぶのですよ」


 なるほどなー

 小さい商売から始めて、店舗を構え、会計を学び、そこを超えればビッグビジネスに手を出せるわけか。ステップアップとしては理にかなっている。


 よし。

 なんとなく目標が見えてきた。

 地球の知識でいろいろ作って儲けるぞ!


 行商には荷馬車もあった方がいいよな。

 荷馬車ってどこで買えるんだろう?


「荷馬車ですか? 荷馬車は馬車ギルドで買えますよ」


 馬車ギルド?


「商人ギルドの下部組織です。登録しておいた方がいいですよ。手入れや修理が必要ですからね」


 美人受付嬢の冷ややかな笑顔に礼を言って商人ギルドを出る。


 後から知ったが異世界には馬車はもちろん宿屋からパン屋まで無数のギルドがあり、それぞれの仕事を守っている。

 その総括が商人ギルドなのだ。


 いや、同業者の連携とかご近所付き合いとか挨拶回りが大事なのはわかる。

 わかるけども。


 商売を始めるまで一体いくつのギルドに顔を出さねばならないのか。

 俺は準備した財布の重さを気にしつつ馬車ギルドへの道を急ぐのだった。




 ーーーーー以下おまけの設定ーーーーー


 異世界の税金のしくみ(封建制ベース)


 租税:地方税

 畑の収穫から割合で取られる税。

 3公7民から6公4民まで割合はいろいろ。


 人頭税:地方税

 簡単に言えば住民税

 市民の最低賃金の70倍程度が目安。不作の時に人売りが出る一因。


 施設利用税:地方税

 水車とか広場とか橋とか港とかを使用する時の税


 固定資産税:地方税

 所有する建物にかかる税。都市は高いが村は安い


 入場税:地方税

 街や村に入る時にかかる税。あまり高いとその街を避けるルートが開拓される。

 依頼などの用事で外に出る場合は免除される事が多い(要書類)

 入場税を払わず街の外に滞在すると、最悪のケースだが街の兵士が略奪に来る事がある。

 入場税をケチった相手に対する見せしめである。


 関税:地方税、国境の場合は国税

 持ち込む商品に対してかかる税。高いと迂回ルートの開拓はもちろん密輸が流行る


 出店税:地方税

 市で店を出す時にかかる場所代。


 賦役:地方税

 兵役や労働などで税の代わりとする一種の強制労働。


 売上税:国税

 貴族との取引や卸売りなど金額や量が大きい取引の売上から国に納める税。金を使えば使うほど国に税が入るため、金は溜め込むよりも使うのが貴族のステータス。

 金額の小さい取引を監視しても手間の割に税収に繋がらないため大きい取引のみに税をかけるようになった。貢物と下賜という形で税を回避する貴族や商人がいるとかいないとか。


 地方税=領主の収入

 国税=国の収入


 国の収入が少なく見えるかもしれないが王家は広い直轄地を持ってるのが常だからね。

 直轄地の地方税が王家の収入になるのです。


 王家と諸侯の関係

 王家と公爵侯爵(上級貴族)=領地持ちの協力関係

 王家と伯爵子爵(中級貴族)=王家から領地を貸与される形の主従関係。子会社オーナー。

 上中級貴族と男爵騎士爵(下級貴族)=領地の管理を任される代官。中間管理職。


 封建制なので上位の要請に応じて兵力を動かすのが義務となる。

 そのかわり領地の収入は領主のもの。



 商人ギルドのしくみ


 星なし:見習い、手伝い。単独での商売は禁止。

 星1:行商人、露天商。店舗を持たない商人

 星2:街商人。店舗を持つ商人で市民権が必須になる。

 星3:星4商人予備軍。帳簿の記録が義務付けされ、星4昇格時に監査が入る。

 星4:大商人。貴族との取引や大規模な買い付けが可能になり、取引の証明に使う印璽の作成が必要。春に決算をし、秋に税を払う義務が生じる。下位の商人が大取引する場合星4商人を間に挟む必要があるため、権力を持つようになる。星4になるためには推薦人が必要で、貴族が推薦する事が多い。

 星5:伝説の商人。特に規定はないが知名度や実績が必要。


 星4商人の下で働く幹部級スタッフは星0や星1が多いが、必要になれば星3を取れるぐらいの実力はある。星4商人の子供は星3商人として店を任され、帳簿の運用を身に着けた後に星4商人となり跡を継ぐのが一般的な流れ。



 商人ギルド紋章

 ギルドの紋章をかたどった物で、所属を表すもの。

 星1で15センチ程度の木彫りの紋章。

 星2で直径1メートル程度の木彫りの紋章。

 星3で鉄製になり、星4で銀が使われる。

 店舗に紋章をぶら下げることでまっとうな店であることをアピールする。

 当然偽造される事もあるが、バレたらギルドのプライドにかけて消しにくるのでやってはいけない。


 他のギルドも似たような仕組みがあり、例えば馬車ギルドの場合は馬車に独自の模様が描かれた旗を立てる慣例がある。



 支店について。


 支店は本店|(商人A)が手続きをすれば自由に出すことができる。

 手続きは個人が商店を持つ場合と同じ。

 支店で働くのは従業員であり、商人Aの店であることは明示する必要があり、当然責任も権利も商人Aが持つ。

 支店にかかる地方税|(建物など)は街商人と同じだが、星4以上の商人にかかる国税である売上税は全店合計で計算するため支店にも帳簿係は必要。

 帳簿が必要になる大取引は貴族との取引か卸売しかないため、直接的な支店はそれ専用に限定し、庶民向けの小売商店は傘下の星2~3の帳簿がいらないグループ店に任せる事ができる。

 地球でいうとセブン○ンドアイの本社が本店、仕入れと流通と外商|(※)が支店、コンビニがグループ店ってイメージになる。

 まぁ、たまに、ときどき、善良な商店を金と暴力で強引にグループ傘下にしようとする悪い商人もいたりいなかったり。


 ※外商:庶民と同じ場所で買い物をすることがないVIPなお客様に対応する御用聞き。セブンアンド○イにあるかどうかは知らん。

ご意見、ご感想、矛盾、気になる点などお待ちしております。

ある程度考えてはいますけど完璧ではないので。


税収については現在も引き続きわかりやすくて簡単な税体系を模索中なので変更される場合があります。

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