性教育【文化・習慣】
タイトルは性教育ですが中身はせいぜいR15です。
安心してください!履いてますよ!
ギルドで昼飯を食べているとダニエルとアンジェラの二人が深刻そうな顔で聞きたいことがあると尋ねてきた。
こいつらはラブラブカップルの冒険者で結婚間近ともっぱらの噂だ。
爆発しろと思っていたが、本当に爆発しそうなほど表情が暗い。
何があった?
「昨日、宿でアンジェラといい雰囲気になったんだけど……」
おう、爆発しろ。
「その、結局どうすればいいかわからなくてな。お前は物知りだろ? その辺教えてもらおうと思ったんだ」
え? セッ……性行為のハウツーを聞きたいって事?
いやまぁ俺は転移してきた異世界人それも日本人ですから?
童貞でも知識は豊富ですけども?
そういうのは俺じゃなくてよくない?
言われてみると俺が得た知識は保健体育の授業だったりネットのエロ動画から得たものがほとんどだ。親から教わった事などほとんどない。
かつては川原にエロ本が隠されているなんてこともあったらしいが……
異世界にはエロ本もエロ動画もない。多分。
異世界ではどうやって学ぶんだ?
あ、ちょうどいい所にギルマスが来た。
「一番多いのは娼館だろうな」
あくまで一般的な話だぞ、と念を押してギルマスは去って行った。
娼館、つまりはプロのおねーさんの手ほどきを受けて学ぶという事だ。
個人差はあるにせよ肝心な部分は共通だろう。
お前もそろそろ大人だな、女を教えてやろう。
とか言いながら娼館へ連れて行ってオトナの扉を開かせるわけだ。
悪くない習慣じゃないかな?
地球でも男女交際に厳しい地域や宗教の場合、初夜まで異性の裸を見たことがないなんて話もあるぐらいだからな。ぶっつけ本番で大失敗した日には結婚生活に影響が出かねない。
ダニエルも娼館行ってくればいいんじゃないか?
「俺にはアンジェラがいるのに娼館なんかに行けるかよ!」
キリっとした顔で答えるダニエルにアンジェラは頬を赤らめまんざらでもない様子。
こいつらめんどくせえ……
「アタシは孤児院で育ったし孤児院だと子供は神様が授けてくれるものって感じだったしシスターも未婚の人が多かったし」
あー、まー、宗教的にはそういうのもあるんだろうな。
それで通しきるのもどうかとは思うけど。
もしかして教会だと誰も知らない場合もありうるのか?
他の女子はどうしてるんだろう。
男娼? いや、男娼は同性向けだよな。
ちらりとギルドの受付の方を見る。
受付には何人も女の子がいるが「子作りの方法知ってる?」とか聞いた日にはセクハラでギルドから抹消されかねない。
仕方がないので通りかかる知り合い|(男)を捕まえては聞いてみると意外とパターンが多い。
娼館はないが娼婦を兼ねている旅芸人が定期的にやってくるのでお世話になる村。
新婚のカップルの初夜を未婚の男女が見学に行く習慣のある村。
適齢期になると夜這いイベントが起こる村。
冬は豪雪で動けなくなる村では越冬用の建物にみんな集まり、夜は相手を決めずに子作りに励むなんていうのもあった。子供は村の子、という考え方らしい。
娼館もないような地方には性教育と実益|(人口増)を兼ねた風習があるわけだ。
現代日本人の倫理観からすればとんでもないが、100年200年前だとないとは言い切れないなー
ともかくもみんながみんな知らないわけではないので安心した。
俺以外に聞ける奴がいるって事だもんな!
じゃあ後は知ってる奴に聞いてくれ。
「いや、お前の話を聞いておきたい」
新郎|(予定)たるダニエルくんの眼差しは真剣だ。
なんでだよ!
「みんなからの話を聞くときも具体的だったし、すごく余裕があったし、ね」
アンジェラがダニエルに視線を投げるとダニエルもうんうんと頷く。
「俺たちの未来のためにはお前に教わるのが一番だと冒険者の勘が告げているんだ!」
今いらねえよそんな勘!
冒険中に使え!
「指名依頼されますか?」
受付の女の子がひょっこりと顔を出す。
前髪パッツンのすました顔をしているがその目は良く言えば恋バナを見つけた女子高生、悪く言えばゴシップを嗅ぎつけたパパラッチだ。
「そうか! 指名依頼なら断れないな!」
ダニエルは渡りに船と言わんばかりに提案に乗っかってきた。
お前らああああああああ!
よーしやってやろうじゃねえか。
ダニエルがどんな変態になっても恨むんじゃねえぞ!
俺は二人に保健体育の基本からエロ動画、エロ本で得た知識まで惜しげもなく叩きこんだ。
前戯から本番、ピロートークまでの流れ、特殊なプレイや趣味趣向まで全てだ。
全部聞きかじりだけどな!
二人は「えっ、そんなことまで」とか言いながらお互いを横目で伺ったりしてるしたまに見つめ合ったりしてるし手をつないだりしてるし
ああああそういうのは家に帰ってからやれ!
燃え散ってしまえ!
なんで童貞捨てる前にしったかぶって講釈たれなきゃならないのか。
悲しくなってきた。あー彼女欲しい。
数日後、ツヤツヤニコニコした二人に礼を言われた。
うまくいったみたいだな。
末永く爆発してほしい。
「なあ、『性の伝道師』ってのはアンタかい?」
は?
見ない顔だけどどちらさま?
「夜の生活の事ならなんでも解決してくれる男の噂を聞いたんだ。最近ちょっとカミさんに夜の方を断られることが増えててーーー」
なんでもじゃねえよ! 知ってることだけだよ!
流石に夫婦生活のトラブルは管轄外……俺独身よ?
一応相談には乗るけどさ。
誰に聞いたのそんな話?
「受付の嬢ちゃんが言ってたぞ」
受付のパッツン前髪が依頼の手数料狙いで噂を流し、俺は『性の伝道師』『100人斬り』『金の指を持つ男』『子宝地蔵』『夜の騎士』などさまざまな二つ名を押し付けられることになった。
なんだよ夜の騎士って。ちょっとカッコイイじゃねーか。
こうなったのもパッツン前髪が悪い。
責任を取って彼女の作り方でも教えてもらうとするか。
指名依頼で。