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昼食、ジャンクフードです!

 おいしい食事というものは、家族と一緒に囲うものが最高だ、という人間はそう少なくない。それはけして錯覚でもなんでもなく、愛情……、この人と一緒に食べていると楽しい、うれしい、ほっとする。そういった感情が味覚の鋭さを上げているのだ。料理がおいしくなったわけではない。それを食べる側が、鋭くなっているだけである。

 なにも、そう言った意味でのおいしい食事は、何も家族だけではない。親しい間柄、気の置けない友人同士、そして、恋人同士であっても、なりたつのだった。


 「…………なんか、メグと一緒に食ってるとウン百円のハンバーガーがうまくなるな」

 「私もです!」


 全国……それも、国境を越えたレベルの全国にチェーン店を持つ、超有名ハンバーガショップ。彼女らはその窓際の席に座り、ハンバーガーをほうばっていた。


 「あの、礼人君」

 「うん?」


 最初こそゴシックファッションに身を包んでいることを気にしていたメグだったが、今では特に気にした風はない。あきらめたか、それとも恋人が目の前にいることで盲目になっているかのどちらかだろう。


 「あの、この服とかって、あなたの趣味なんですか?」

 「いや? でも、ハニーが来たらきれいだろうなって」

 「……そ、そんな、おだてないでください」

 「俺はおだてたりすんのが苦手なんだよ」

 「でも……」

 「ま、趣味じゃねえって言ったらウソになるかもしれねえけど。似合ってるぜ」

 「……ありがとうございます」


 メグは顔を赤らめた。


 「これからの予定とか、決めてるんですか?」

 「カラオケに行く予定だけど……嫌だった?」

 「まさか! カラオケ大好きです!」

 

 メグの笑顔はひきつっていた。彼女はカラオケが苦手なのである。それでも大好きな礼人の手前、無理をする。


 「そりゃよかった。そうそう、これはちょっとした話なんだけどよ」

 「?」

 「最近のカラオケじゃ、一つ一つの個室に監視カメラがついてるんだって」

 「へえ。何でですか? プライバシーとかあると思うんですけど……」

 

 にい、と礼人は笑った。すごくいやらしく。


 「たしかにな。恋人同士がヤるのも、プライバシーだよな」

 「!?」


 茹でられたタコのように顔を紅潮させて、言葉にならない言葉を叫ぶメグ。


 「ま、まさか、れ、礼人くん」

 「だから、監視カメラついてるって言ってんだろ? 何もしやしねえよ。……カラオケでは」

 「え?」

 「……なんでもねえ」

 「いや、なんでもないで済みませんよ!? なんか今すっごい発言を」

 「カラオケの後は、家に招待しようかな、と」

 「……え」

 「ちなみに、両親はいない」

 「…………え」


 両親のいない男の家に上がりこむ。それがどんな意味を持つかを知らないメグではない。どころか朝母親に釘を刺された手前、そうなってはならないと思っていた。しかも、デートが始まるまえ、信じられない宣言をされたこともあって、メグは内心冷や汗たらたらだったりする。


 「あ、あの」

 「ん?」

 「あの、私、その……」

 「今すぐ行きたいってか?」

 「いえ、そうではなくて……」

 「どうしたの?」

 「……その、今日はお邪魔になるわけには……」

 「どうして?」

 「……ええっと……」


 まさか母親に言われたから、だなんてもう高校生にもなって言えるわけがない。

 

 「あ、あの。うちの門限、八時なんですけど……」

 「あ、そうなんだ。じゃあ、無理だな。今日はカラオケで歌って帰るか」


 すぐに了承してくれたことを意外に思いつつも、メグは肩を落とした。これで礼人君を犯罪者にしなくてすみます……。そう安堵する。

 実際もしそんな関係になってしまった場合、メグは彼氏が檻に入ることよりも命の心配をしなければならないのだが……今の彼女に、それを知ることはできない。


 「そうですね」

 

 昨日とは全く違う、健全なデートを楽しめる……。


 今のメグは、そんな希望に満ちていた。











 二人が今後の予定を決めている最中、その遥か後ろでは。


 「……むう、カラオケ、ねえ」

 「健全でいいことじゃない。あの子も少し安心したみたいだし」

 「……でも……」


 クレアは不安げにメグたちの方を見る。どうも、安心できる要素がなかった。たとえ今は手を出さないと言っていても、さっきの宣言、つまり責任とってやる云々のせいで、まるで信用できなかった。


 「……大丈夫かしら?」

 「メグの貞操のこと?」

 「…………まあ、そうよ」

 

 そっけなく装っていたが、クレアの頬は少しだけ赤かった。


 「まあ、大丈夫じゃない? 監視カメラあるって言ってたし」

 「……屋上でも襲うような奴よ? 私が隣にいるにも関わらず」

 「……そりゃ大変」


 口ぶりではそう言ったが、沙耶の表情にメグを心配する色のものはなかった。


 「あんたねえ。親友なのよ?」

 「クレアはね。メグはそうでもないよ」

 「なんてあっさりな……」

 「わきまえてると言ってよ」

 「ううん……」


 冷徹にも聞こえるが、沙耶がメグを心配しないのは、彼女が親友でないからではない。心配する必要がないからだ。沙耶は口にこそ出さないが、メグのことを親友と思っている。


 「大丈夫だよ」

 「どうして?」

 「礼人君はね、乱暴そうに見えて、すっごく相手のこと思いやるタイプだよ」

 「昨日の襲撃は?」

 「それは、その、もてあましたんじゃない? いろいろと」

 「今日はおもてあまさないと断言できる……?」

 「………心配になってきた」


 沙耶は早々に前言を撤回した。

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