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Act.nine  作者: 夜空


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#2 「学年一位vs転校生」


 転校初日の挨拶から始まってしまった決闘。紅坂茜はエンジニアの花咲涼凪と共に格納庫へ向かい、カスタムした戦機神威乙式で入場を待機していた。


『陽咲焔、紅坂茜。両名は競技場内に移動してください。繰り返します。陽咲焔、紅坂茜。両名は競技場内に移動してください』


「……ふぅ、流石に緊張するな」


 両者の準備が完了したことで、決闘管理システムによる放送が流れる。本当に今から決闘が始まるという現実を前に、少し緊張している茜は息を整える。


『リラックスしてとまでは言わないけど、そんなに気負わなくてもいいと思うよ。良い勝負、期待してるからね』


「言われなくとも、吉報を待っていてください」


 少し緊張していそうな茜に、エンジニア兼サポーターとして涼凪は出撃前に声をかける。その応援を嬉しく思いながら、茜は返事をしてから通信を終了する。


 初陣、しかし恐れる事は何もない。茜はカタパルト起動スイッチを押してカウントダウンを始め、両手のハンドルを強く握りしめる。


「紅坂茜、神威乙式。……行きます!」


 カウントの終了と同時に、機体を乗せたリフトが凄まじい勢いで動き出す。端に着くと同時に機体の固定が解除され、その勢いで機体は空へ解き放たれる。


 投げ出されるようにゲートから飛び出した戦機神威乙式。姿勢を制御するために茜は脚部のバーニアを起動し、安定した着地で競技場にエントリーした。


 学年一位である陽咲焔と転校生である紅坂茜による決闘。その噂は瞬く間に学園中へ広がり、競技場には数多くの生徒が集まっていた。


 大小問わず様々なチームが観客席から見守る中、競技場三階席の実況席がライトアップされ、二人の人物が照らされた。


『決闘あるところに我在り、我在るところに決闘あり。本日も中々に驚くような決闘の予感がしておりますよ! 実況は放送部部長の口実(こうじつ)(ひびき)が、解説は見届人の市川先生でお送りします。市川先生、本日はよろしくお願いします』


『ええ、よろしくお願いします』


 照らし出された実況席、その席に座っていたのは放送部の部長で決闘同好会の会長である口実響と、決闘の見届人である市川識だった。


『それでは、早速選手の紹介に移りましょう! まずは我らが一年生の現チャンピオン! 学園内でも屈指の実力者である、陽咲焔の戦機神威丙式だー!』


「ふっ、簡単に倒れてくれるなよ?」


『続いては何と本日転入したばかりの転校生!? その実力は未だ未知数、紅坂茜の戦機神威乙式だー!』


「……自分に出来る事をやるだけです」


 実況席の挨拶から続けて選手の紹介へと移り、競技場内の二機がライトで照らされる。陽咲焔の神威丙式と、紅坂茜の神威乙式。距離こそ離れているものの、互いの目を見合って開始を待っていた。


『最強を背負う学年一位、実力不明の転校生。この決闘、市川先生はどう思いますか?』


『焔さんの動きに茜さんが対応できるかどうか、それが勝敗を分けるのではないでしょうか』


『なるほど、やはり鍵になるのは対応力だと。市川先生、ありがとうございます。さてさて、間もなく決闘開始を告げるスリーカウントが始まります。皆さんも一緒にお願いしますね!』


 決闘前にお決まりのトークが終わり、遂に決闘の開始を告げるカウントダウンが始まろうとしていた。ブザーの音を合図にスリーカウントが始まり、競技場内も決闘前のそれらしい空気感に変わる。


『それでは……3! 2! 1! レッツ、ブレイク!!』


 スリーカウントと実況である響のかけ声。ノリの良い観客も指折りと声でスリーカウントを数え、アクトナインの試合開始と同じように決闘が始まった。


 かけ声と同時に、ハイパーブースターを起動した神威丙式が前進を開始。対する神威乙式はと言うと、こちらも選んだのはブースターを起動し前進することだった。


『まずはお互いに開始地点から前進! 接近戦を仕掛けたい焔選手はともかく、中距離戦主体と思われる茜選手も突撃!? 市川先生、これはどういうことでしょうか?』


『恐らくは短期決着狙いでしょう。相手の得意な間合いで立ち回り、弾薬を惜しむことなく使って戦闘するつもりかと』


「正面突っ切って来るとは気に入った! そんなに戦いたいなら、望み通りぶっ壊してやるよ!」


 観客席や実況席に若干の困惑を与えた戦機乙式の突撃。その動きをレーダーで確認した焔は戦いの興奮で大きく口を開け、茜の作戦すら正面から叩き潰すことを選んだ。


 全力で吹かしていたハイパーブースターを突然停止させた焔は、着地したその一瞬で地面を蹴り、ブレードを起動しながら空高く跳び上がった。


「先手必勝、アサルトダイブ!」


「っ!? 方向転換、ブーストステップ!」


『おおっと! 焔選手の得意技である飛び上がってからの強襲攻撃、アサルトダイブだ! 何とか避けた茜選手だが、一瞬で間合いを詰められてしまった!』


 空中でエネルギーブレードを構え、敵機へ一直線に突撃する強襲技。その名もアサルトダイブ。先制技としてそれを使った焔だが、茜は咄嗟に大きく左へ動いて直撃を回避した。


 しかし、両者の距離は茜が想定していた以上に近づいてしまい、誰がどう見ても近距離戦を得意とした丙式が得意な間合いに入っていた。


「折角の追加武装も、この距離だと意味が無いな!」


「っ、させない! エネルギーシールド展開!」


 近接武器の間合いに入ったことで、エネルギーブレードによる接近戦を始める焔。神威丙式の攻撃を前に茜は防御を選び、左手のエネルギーシールドを展開して攻撃を防ぐ。


「ちぃっ、防いだか。でもな、シールドを使っても重撃で一撃なんだよ!」


 たとえ防いだとしても、その後が有利になるわけではない。それを知っている焔はエネルギーブレイドを大きく振りかぶったが、茜の狙いはその重撃だった。


「……今! エネルギーダガー起動、フルブースト!」


 振り下ろされる直前で茜は構えを解き、右手のエネルギーダガーを起動してからブーストを吹かせて全速力で前に出る。


 振り上げている最中の神威丙式、その脇を通り抜けた神威乙式。エネルギーダガーが蒼い軌跡を描き、気づいた時には神威丙式の胴部耐久力が二点減少していた。


『な、なんと! 振り下ろされるその刹那、茜選手は大胆にもブースターで切り抜け、さらに胴部へエネルギーダガーがヒット!』


『機転を利かせた見事な反撃でしたね』


 ほんの一瞬、たった一撃。優勢だと思われていたはずの神威丙式が先に攻撃を受けた。その事実は観客席で見ていた少女たちを驚かせた。


 茜の実力に驚かされたのは観客だけではなかった。攻撃を受けた焔もその動きに驚いたが、何故だかとても楽しそうだった。


「…………ははっ、あははは!! 乙式であんな動きされるなんて思ってもなかった。紅坂茜、あんたに実力があるのは分かったよ。でも、それだけじゃトップには足りないことを教えてやるよ!」


 誰にも届かない笑い声がコックピットの中に響き、それからすぐに神威丙式が背後を振り返る。既に姿勢を直している神威乙式と目が合い、焔はブレードを構えて突撃する。


「一撃決めただけで、それで終わりか!」


「ブレードの突撃ならシールドで――」


 ダメージを受けた側なのに焔は攻撃の手を緩めることなく突撃を仕掛ける。茜は冷静にシールドを展開しようと腕を動かしたが、結果的にその行動は攻撃の機会を与えることになった。


「同じ手は喰らわない! 腕部ビームガン展開、スプレッドショット!」


 シールドを構えようとする神威乙式の動きに焔は反応し、左手の構えを解いて右手を突き出す。動きに連動して腕部ビームガンが展開され、そこから十五発の弾丸が放たれる。


 胴体に向けて放たれた弾丸は、構えていたシールドの横を抜けて胴部に直撃。短時間の連続ダメージを防ぐ防御補正、その補正込みで神威乙式の胴部耐久力を三点も削った。


「くっ……ダメージは少ないけど、流石にシールドで全ては防ぎ切れない……」


「スプレッドも解放した以上、本気の読み合いが始まるのは必然。さあ、戦いはここからだ! 紅坂茜!」


 散弾を絡めた連続攻撃。茜は上手く体を動かしてブレードと散弾を躱そうとはするが、絶え間なく続く攻撃で神威乙式の耐久力は減る一方だった。


『茜選手、耐える事しか出来ていないぞ! この状況は流石に苦しそうだ! 市川先生、ここから逆転する手はあるのでしょうか?』


『相手の間合いから抜け出すか、或いは近距離戦を制するか。どのような選択をするにせよ、まずはこの攻撃を切り抜けないと厳しいですね』


「攻撃の合間に差し込まれる散弾だけは、どうしてもシールドが無い部分に当たる……どうにか隙を見つけて反撃するしか……」


 ブレードをシールドで防げば散弾が、散弾をシールドで防げばブレードが。決して少なくないダメージを受けながら、茜は逆転の一手を探していた。


「さあ、これで八点目だ! その左腕、使えなくしてやる!」


「!! 大振りな近接、今しかない! グレネードポッド、フルオープン!」


 ダメージが蓄積していたシールド付きの左腕、そこを狙ったブレードの攻撃。それを好機と捉えた茜は腰部のグレネードポッドを開き、超至近距離で三発のグレネードを起爆する。


『おおっと! 茜選手、今度は自爆覚悟のグレネード射出で無理矢理攻撃の手を止めさせた! 痛み分けとなったが、結果的に最低限の損害で焔選手を引き離した!』


『被弾を抑えながら距離を取る。素晴らしいダメージコントロールですね』


「シールドを捨ててでも戦うつもりか、面白い! この決闘に勝ちたいのなら、お前の全てを私に見せてみろ!」


「……何をしてでも、勝ちを取る。勝利こそが絶対だと言うなら、腕の一本なんて捨てて、残りの弾を全て吐き出してでも掴み取る!」


 エネルギーグレネードの起爆で発生した青い煙の中から、それぞれ反対の方向に飛び出した。神威丙式は全体的にダメージを負わされ、神威乙式は左腕が耐久力の全損によって機能停止状態となった。


『さあ茜選手、出し渋っていたグレネードを見せてしまった上に左腕とシールドを失った! 戦いは仕切り直して中距離戦となったが、一体どうなる!?』


「射撃戦には持ち込ませない! このまま近づいて終わらせる!」


「キャノンとミサイルで最大限牽制、グレネードは間に差し込み、相手の攻撃を喰らってでもダガーで攻撃を当てる。絶対に散弾は撃たせない!」


 共に痛手を負ったはずだが、二人はすぐに戦いを再開した。互いに奥の手を見せた状態で正面からぶつかり合い、文字通りの全力を尽くした。


 激しい攻防を見せる茜と焔。神威丙式のエネルギーブレードと、神威乙式のエネルギーダガー。蒼い斬撃の応酬でお互いの機体がダメージを負い、どちらも気づけば一撃も受けられない状態になっていた。


「学年一位の私が、全戦全勝を達成するためにも!」


「学園での初陣……これだけは絶対に!」


「「負けたくない!!」」


 熱い想いが込められたフルブーストの一撃、それをほぼ同時に放った二人。エネルギーブレードとエネルギーダガーが互いの胴部を切り裂きながら、両機共に着地する。


 次の瞬間、競技場の中心で機体が膝をついた。神威丙式も、神威乙式も、まったく同じタイミングで完全に動作を停止した。


『な……な……何ということだ!!?? エネルギーブレードとエネルギーダガーが同時にヒット! ほぼ同タイミングでコア耐久力が無くなったぞ!?』


『これは……ビデオ次第、となるでしょうね』


『えー、現在ビデオ判定をしておりますが……結果が出ました! な、な、何と! 完全に同じタイミングで両機共に胴部耐久力を全損!! 本決闘の結果は引き分けです!!』


 学年一位と転校生による決闘。その衝撃の結末に、観客は動揺を隠せなかった。あの学年一位が引き分けとなった。負けではないものの、最強が揺らいだ瞬間を見せられたのだ。


 その日、転校生紅坂茜は名を刻んだ。神威女学園という場所に、そこに通うアクトレスたちに。新進気鋭のダークホース、トップアクトレスを目指す者として。

――装動戦機のちょっとした話#2

「今日は装動戦機をさらに深掘りしちゃうよ! 茜ちゃんは装動戦機にどれだけのスロットがあるか知ってるかな?」


「頭部、胴部、肩部、腕部、腰部、脚部、背部にそれぞれ左右二つの武装枠があります」


「その通り! ただし、武装は付ければ付けるだけ良いってわけでもないんだよね。武装を付け足せばその分重くなるし、操作も複雑になるからね」


「機体コンセプトとの相性もありますよね。軽量機は武装を減らして機体を軽くしたり、重量機は武装を増やして攻撃の手数を増したり。その辺りは人によって様々ですよね」


「そうだね! 後はフレームも大事かな。最も一般的な二脚型のスタンダードフレーム、拡張性が高いアドバンスドフレーム、後は変形するトランスフォームフレームとかもあるからね」


「どんな戦い方をするか。それに合わせてカスタマイズするのが大事、ということですね」


「そういう事! それじゃあ今回はここまで。次回も涼凪ちゃんの後書きコーナーをよろしくね!」

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