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Act.nine  作者: 夜空


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17/17

#15 「交わらぬ道の先で」

※2026/02/09 後書きの追加


 第四世代型装動戦機の参戦、新たなコマンダーの勧誘を経て、遂に訪れた四月二十九日。月末恒例の勝ち抜き戦が幕を開け、当然茜も出場することになったのだが……






「……つまり、今月は個人戦ではなく団体戦に集中して欲しいということでしょうか」


「ええ、その通りです。チームノインヴェルトにとって今回の勝ち抜き戦は、今年の活躍を期待させる良いプロモーションになりますので」


「紅坂茜という存在はチームノインヴェルトにとって大きなPRになる、というのが私たちの出した結論だ」


 勝ち抜き戦開催前日、チームルームに呼び出された茜。そこで優花里と羅兎から聞かされたのは、団体戦のみの出場にして欲しいという話だった。


 だが、茜にはその話を受け入れたくない事情があった。そう、陽咲焔との約束。月末の勝ち抜き戦個人の部で決着をつけるという約束が茜にはあった。


「一つ質問なのですが、団体戦の部にチームナインエレメントは出場すると思いますか?」


「ナインエレメント……陽咲焔のチームか。今月は人数不足で出場しないと聞いたが」


「何か特別気になる理由でもありましたか?」


 個人が無理なら団体で。そう思った茜はチームナインエレメントのことを聞いたが、返ってきたのは出場しないという答え。


 そして何か気になることがあるのかと質問を返された茜は、あの焔との決闘の翌日にあったことを優花里と羅兎に話した。


「なるほどな……確かに、そんなことがあったなら気にするのは当然のことか」


「はい。もし可能であれば、個人の部にも出場させていただきたいのです」


「……約束は大事なことだと思います。ですが、チームリーダーとしては送り出すことは出来ませんね」


 優花里の口から出たのは否定する言葉。それに茜は思わず口を挟みそうになったが、感情を抑えて強く拳を握り込む。


「っ……そう、ですか」


「第一に、専用機同士での戦いとなれば茜さんはまた集中状態に入り、その深さは私たちと決闘をした以上になると思われます」


「……否定はしません。あの時は途中で終わってしまいましたが、長く続けばその分さらに集中すると思います」


「となれば、その反動は私たちと決闘した時以上になるでしょう。果たしてそうなった場合、翌日に影響が出ないと茜さんは約束出来ますか?」


「それは…………」


 優花里の言葉は残酷なほど正しかった。紅坂茜が戦いで見せたあの集中状態、その反動を対策出来なければたとえ勝利したとしても翌日に響く可能性があると。


 そしてそれは茜も否定出来なかった。全力の戦いとなれば、その集中はより深くより長くなる。そう知っているからこそ、茜は何も言い返すことが出来なかった。


「ですから、今回だけは個人戦ではなく団体戦に集中して欲しいのです。それに、この選択には茜さんのこれからに期待してもらうという意味もあるんですよ」


「ああ。集中状態の反動を知られた場合のデメリットもそうだが、個人戦と団体戦の両方で強い選手はそう多くない。学内外問わず、アクトレスとしての評価に影響するだろう」


「アクトレスとしての評価……」


「はい。トップアクトレスを目指すためなら、このお話は決して悪くないと思います」


 何も言えず口をつぐむ茜に、優花里と羅兎が話を続ける。デメリットを知られるリスクは、今後のアクトレス生活において問題になると。


 そして何よりも茜の心に響いたのは、アクトレスとしての評価にも繋がるというところだった。個人と団体の両方で良い戦績を収めれば、トップアクトレスへの道にも影響するだろうと。


「……分かりました。紅坂茜、勝ち抜き戦は団体戦のみ出場いたします」


「こちらの無理を聞いていただき、ありがとうございます。後悔はさせないと、お約束いたします」


「ああ。やるからには全力で臨み、必ず優勝を掴み取る。学園に見せてやろう、私たちの力を」


「はい。改めてよろしくお願いします」


 話に納得した茜は、今回の提案を受け入れることに決めた。良い返事を聞けた二人と向き合い、改めて固い握手を交わす。


 そして時は現在へと戻る。勝ち抜き戦個人の部当日、茜は涼凪に誘われて特設観客席に座り、巨大モニターを眺めていた。


「……ということがあったので、今日は観戦に集中したいと思います」


「それも良いと思うよ! しっかり見て分析して戦いに備えるのも大事だからね」


 二人仲良く並んで席に座り、飲み物を片手に画面の方を向く。今か今かと待っている内に遂に開始時刻となり、盛大なファンファーレと共に映像が動き出す。


「お、さっそく開会式が始まるみたいだよ! 放送部による実況解説とかそれ以外のあれこれも、この神威女学園の名物なんだよね~」


『会場にお集まりの皆様! そして観客席や配信で視聴中の皆様! 大変お待たせいたしました。ただいまより月末恒例勝ち抜き戦、個人の部を開始いたします!』


『一年の始まりである四月。一年で最初の勝ち抜き戦は、今後のイメージを与える大事な戦いです』


『今月はどのような戦いになっていくのか、まずは気になる対戦表の発表です! 今回の勝ち抜きトーナメントは……こんな感じだぁ!』


 ファンファーレの終わりと同時に画面に現れた二人の少女。放送部の口実(こうじつ)(ひびき)海貝(みかい)雪李(せつり)による毎度恒例のトークと共にトーナメント表が映し出される。


 最初の勝ち抜き戦ということもあってかかなりの出場人数の中、茜が最も気になるのは陽咲焔の名前がどこにあるのか。


「うーん……一体どこに……」


「んんん……あ、あった! Bブロックの一番下、対戦相手は……火那(ひな)ちゃんかー」


星川(ほしかわ)火那(ひな)……確か、現生徒会工士の方でしたよね」


「そうそう。エンジニアたちのまとめ役って感じなんだけど、いきなり焔ちゃんと当たっちゃったかー」


 陽咲焔の名前があったのはBブロック。その気になる対戦相手は、生徒会のエンジニアまとめ役である工士の星川(ほしかわ)火那(ひな)だった。


 学年一位対エンジニアのトップ。これまで類を見ない対戦カードに、茜と涼凪は期待や不安を抱えながら試合が始まるその時を待つ。


 まずはAブロックの対戦が始まり、複数の会場で同時に決闘が行われる。月に一度の戦いということで気合いが入っているのか、各会場で激しい戦いが巻き起こる。


 次々と各会場で勝者が決まり、あっという間にAブロックの第一試合が全て終わった。そして始まったBブロックの試合、当然一番注目されているのは焔の試合だった。


『さあさあ、各会場で熱い戦いが繰り広げられておりますが! やはり外せないのはこの勝負! 学年一位の陽咲焔VS生徒会工士の星川火那!』


『学年最強のアクトレスを相手に、エンジニアの知識が戦いにどう影響するのか。目が離せませんね』


「はっ! 生徒会とは言え、この程度か!」


「くぅぅぅ……流石は、学年一位……!」


 高い推進力を活かし、怒涛の連続攻撃で攻める焔の戦機神威丙式。対する火那の戦機神威乙式はシールドを構え、攻撃を防ぎながら後退を続けていた。


 焔は抜群のバトルセンスで行動を選び、反撃させることなく攻めの一手を続ける。焔の予測能力は凄まじく、何度もダガーが体を掠める。


「相変わらず焔ちゃんは凄いねー、迷いはないし狙いも正確だね!」


「……ですが、火那さんも相当な実力者ですね。あの動き、余力をまだ感じます」


 焔の攻める動きに興奮を隠せない様子の涼凪。その一方で焔を気にしていた茜は、気づけば火那が操る乙式の動きにばかり注目していた。


 戦況自体は誰がどう見ても焔の優勢だった。しかしそんな中でも火那はまだ被弾しておらず、最小限の動きで焔の攻撃を防ぎ続けている。


 お互いに決め手が無く、どちらが勝つかはまだ分からない。そんな勝負の最中、先に大きく動き始めたのは焔の戦機神威丙式だった。


「そろそろ、終わりにしてやるよ!」


「飛んだ!? ということはアレが――」


『おおっと、丙式ここで飛び上がった! まさかアレが炸裂するのか!?』


 アサルトダイブ。陽咲焔の得意技である、飛び上がってからの強襲攻撃。飛び上がったその動きから火那含めて誰もがそれをすると思った。


 だが、丙式の動きは少し違った。そのまま急降下するのではなく、まさかの空中で武装を構え、ブーストを吹かしながら射撃を始めた。


「はっ、いつも同じことばっかりやっても面白くないだろ!」


『なんと、まさかのアサルトダイブではない! 焔選手、翻弄するかのように戦場を舞っている!』


『あの動きは……マニュアルコントロールじゃないですね。解放せずにあれほどの動きをするとは、流石ですね』


「空中での高速移動……くぅ、捉えきれない……」


 まるで空を舞うかのように動き、異なる角度から連続で攻める焔の丙式。火那もどうにか対応しようと体の向きを変え続けるが、流石に盾で防ぐには限界があった。


 徐々に乙式の被弾が目立ち始め、どうにか反撃したとしても動き続ける丙式には当たらない。一方的な戦闘は終わりへと向かい、遂に胴部へ狙いを定めた焔がブレードを起動した。


「さあ、これで終わりだ!」


「っ、その動きなら――」


 決着をつけようとブレードを構えた焔の丙式。遂にアサルトダイブが来ると思い、それを反撃の機会として火那の乙式も構えを取る。


 このままアサルトダイブが来るなら、構えを取り直しても迎撃が間に合う。振り下ろしではなかったとしても、胴部への直撃は避けられるはずだと。


 だが、火那の読みは外れた。焔はあろうことか持っているブレードを投擲し、隠し持っていたもう一本のブレードを振り下ろした。


「っ、投擲!? 一体何を――」


「はあぁぁぁぁ!!!」


 投擲されたブレードを反射的に弾いた火那。だがその動きが勝敗を分けた。がら空きとなってしまった乙式の胴部に、ブレードの蒼い刃が届いた。


『き、決まったぁぁぁ! まさかのブレードを投擲してからの蒼い一閃! 戦いに勝利したのは、陽咲焔だぁぁぁ!』


「ふっ、同じ動きばっかじゃつまらないだろ?」


 投げたブレードを拾い上げ、立ち姿で勝利をアピールする焔。まさかの動きを見せた焔に、各観客席からは溢れんばかりの賞賛の声と拍手が上がった。


「いやー、一回戦目からやってくれたねー。まさかあんな技を見せてくるなんて」


「そうですね。マニュアルコントロールなしであの動き……やはり強いですね、焔さん」


 拍手喝采の中、見せつけられたその強さを静かに噛み締める涼凪と茜。改めて越えなければいけない壁の高さを知った茜は、その強さに感心すると同時に心が燻っていた。


 もし今回の勝ち抜き戦個人の部で戦っていたらどうなっていたか。あの焔と戦っていたらどんな結果になっていたか。


 チームのために仕方なかったとはいえ、叶わなかった焔との戦いに思いを馳せる茜。その戦いを夢見ていたのは、茜だけではなかった。


「……ふっ、これで十分思い知っただろう。先で待っているぞ、紅坂茜……!」


 賞賛と拍手を浴びながらも、コックピットの中でただ一人のことを想う焔。学年一位の余裕を胸に、いずれ叶う茜との戦いへ思いを馳せる。


 焔と火那の戦いが終わって程なくして、Bブロックの第一試合も全て終わり、勝ち抜き戦は順調に決勝へ向かって進んでいく。


 数多の決闘が繰り広げられ、観客席の盛り上がりは最高潮に。そして戦いは決勝まで進み、遂に対戦カードが映し出される。


『さあさあさあ、勝ち抜き戦個人の部も遂にこれが最後の戦いだぁ!』


『気になる対戦カードはー……この二人ー!』


『まさかあの孤狼と戦えるなんて、今年は最高のスタートが切れそうだ!』


『……ふんっ、狼の牙を見せてやろう』


『最強の学年一位に対するは、どのチームにも属さない孤独な狼! この戦い、果たしてどうなってしまうのか!』


『気になる戦いは……CMの後で』


 学年一位、陽咲焔。孤狼、狼屋直桜(ろうやなお)。まだ今年最初の勝ち抜き戦だというのに、その対戦カードは皆の期待を大きく上回った。


 強い力と強い力がぶつかり合う、熱い戦いを望む少女たち。茜もまた焔の見せる力に期待し、モニターの前でさらに白熱した戦いを願う。


 期待が集まる中、少女は新たな力を魅せる。最も大事な場面に相応しい、新たな機体と共に。

――神威女学園のちょっとした話#4

「今回は月末恒例勝ち抜き戦についてのお話だよ! 茜ちゃんは今回が見るのも参加するのも初めてだよね。実際に見てどうだった?」


「そうですね……普段の決闘とはまた違う、己の実力を試すような空気感がありましたね」


「うんうん、それもそのはず! この月末恒例勝ち抜き戦は個人やチームの実力を示す場として開催されてるから、皆新しく出来るようになったことを披露してるんだよね」


「なるほど……ということは焔さんも……」


「うん、間違いなく何かは持ってくるだろうね。専用機か新技か、それとも新機体……なんてこともあるかもね」


「新機体……出てくるんでしょうか」


「そこも含めて楽しんでいこう! それじゃあ今回はここまで! 次回も涼凪ちゃんの後書きコーナーをよろしくね!」

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