86. 伝える事
「お姉ちゃんちょっと来て」
ステラはお姉ちゃんの手を引いて学園の訓練場にやって来た。そして向かい合った。
「今のお姉ちゃんは好きじゃない」
「…え?」
ステラは今思っている事を全てお姉ちゃんに伝える事にした。ステラが一人お姉ちゃんの事で悩んでいるのが馬鹿馬鹿しくなった。
「何があったのか教えてくれない。いつまでもくよくよしている。それを自分で隠して一人悩んで、相談もしてくれない。周りがどれだけ心配してるか分かってる?」
「…分かんないよ」
「え?」
「頭の良いステラには私が、私が今どれだけ苦しんでるか分かってない!」
ステラはその言葉にカチンときた。分かるわけがない。何も言ってくれないんじゃ、何も分からない。そんな事もお姉ちゃんは考えられてない。
ステラは剣を抜いてお姉ちゃんに駆けて行った。お姉ちゃんに剣が当たる直前にお姉ちゃんも剣を抜いた。剣と剣がぶつかり合った。
「分かんないよ!だって何も言ってくれないんだもん」
「…それは…」
お姉ちゃんは一瞬歯を食いしばってから続けた。
「私も分かんないんだよ!」
お姉ちゃんの剣に力が籠って、ステラの剣が押し返された。お姉ちゃんはそのまま追撃を仕掛けて来た。ステラはその剣に自分の剣を合わせて防いだ。
「何が原因か分かっていたら!こんなに悩んでない!分かんないんだよ…心の中ぐちゃぐちゃで…」
お姉ちゃんの剣から力が抜けていった。そしてそのまま、お姉ちゃんは涙を流してその場に膝を付いた。そのまま力なくその場に座り込んだ。ステラはそんなお姉ちゃんを抱きしめた。
「やっと言ってくれた。お姉ちゃん、今思ってる事も何も言ってくれないから、何も分かってあげられなかった。でも、今、どれだけ悩んでいたのか少しだけ分かった」
私は一呼吸おいて続ける。
「言語化出来なくても良い。今の気持ちを吐き出してみて、全部聞くから」
その後、お姉ちゃんは泣きながら話始めた。途中何て言っているか分からなかったところもあったが、遮らずに全部聞いた。
「ありがとう!話したら少しすっきりした」
お姉ちゃんは笑いながらそう言った。その笑顔はさっきまでの物とは違って見えた。
「お姉ちゃんごめんね」
「ん?」
「ステラはお姉ちゃんの力になってあげられない。でもお姉ちゃんが強い事は知ってるから」
「…意味わかんないよ」
ステラはお姉ちゃんの悩みに共感してあげられなかった。
「これはステラの我儘。ステラは強いお姉ちゃんが好き」
「そう」
ステラ達は立ち上がって教室へ向かった。途中で回復魔法を掛けてあげて、目の腫れを引かせてあげながら歩いた。
ステラが今した事は何の解決にも繋がってないだろう。でも、仕方ない。これはお姉ちゃん自身の問題だ。ステラに出来る事は時々こうやって話を聞いてあげるくらいだ。
(お姉ちゃん、好きだよ)




