84. 心
私は数週間休んだ後、復学した。キャロリンお姉ちゃんが色々手を回してくれて、特別に休学扱いにしてくれた。
私達が去った後もアジオンブリア王国との関係に進展は無かった。変わらず、国境付近で睨み合いをしている。
マークは投獄され罪を償っている。罪が全て明るみになれば、恐らく死刑になるだろうとキャロリンお姉ちゃんが言っていた。
ステラは帰って来た次の日から学園に行き、放課後はダニーさんに修行を付けてもらっていた。
私はずっと安静にしていた。暇だった。
「お姉ちゃん、もう大丈夫なの?」
「うん、ばっちり!」
久しぶりの登校日に同室のステラが心配しながら聞いてくれた。実は数日前から元気だったが、何だか学園に行く気が起きなかった。理由は良く分からなかった。
「お!思ったより元気そうじゃん!」
表向きには怪我で療養中にしてもらっていたので、マイケルがピンピンしている私に元気にそう声を掛けてくれた。私は普段通り元気にマイケルに話しかけた。
(何だろう。何か元気が出ないんだよね)
今回、捕らわれて何も出来なかったからだろうか。同級生に殺意に似た憎しみを向けられたからだろうか。理不尽な暴力に心が折れかけたからだろうか。
(私はその程度なんだ)
理由は思いつかなかったが、私はその程度で心が弱ってしまう弱い人間なんだと思った。いつまでもくよくよしていられないのは頭では分かっているが、心と体が動いてくれなかった。当然、鍛錬にも集中が出来なかった。魔力操作の練度が低下しているのが実感できた。ヤニックさんの訓練場でも叱られてばかりだった。
何に対しても集中できなかった。
「はあ~」
最近、溜息が多く出るようになった。自分の頬を叩いて気合を入れても気持ちは変わらなかった。
(どうしちゃったんだろう。私……)
気持ちが弱くなると戦闘でも弱くなる。それを今実感していた。対処法が分からなかった。気分転換に買い物や遊びに出かけても、その時は楽しいが、宿に帰って布団に入ると気持ちが落ちていくのを感じた。
こんな状態だから周りに心配を掛けているのも感じていた。皆が気を使ってくれている。それが分かると何とも言えない気持ちになった。
こんな風に悩んだ時、今まではパパに相談していた。それで解決しなかった事は無かった。しかし今はパパが居ない。自分で何とかしなきゃという気持ちばかりが大きくなっていた。
(明日起きたら治っていますように)




