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80. 体術

「護衛に居た魔法使いか。良くここまで来れたな」


 落ち着いたのか、マークは立ち上がった。ダニーさんを警戒している様だった。


「大変だったよ。彼らからの視線を誤魔化して、魔力を使わずにアリスを探すのはね」

「…」


 マークは黙っていた。ダニーさんは相変わらず余裕の笑みを見せていた。


「でも、残念だったな。ここでは魔法は使えない。不意打ちは受けたが、お前に僕は倒せない」

「そうみたいだね。厄介だ」


 その言葉と共にダニーさんは前に出た。マークはその拳を躱すが、ダニーさんの次手の拳を躱す事は出来なかった。再びマークは吹き飛ばされた。


「でも、君は僕より弱いみたいだよ」


 ダニーさんはマークを煽っていた。マークの体術ではダニーさんには敵いそうになかった。マークは悔しそうな顔をしていた。


「それに僕はここでも魔法を使えるよ」


 私はそれを聞いて思い出す。ダニーさんはここに来てまず私に回復魔法を掛けてくれた。この魔力を乱される空間で魔法を発動していた。そして今、ダニーさんは雷の矢を発生させた。


「ルークが昔言っていて興味深かったからね。練習したんだ。魔法師を潰すなら魔力を操れなくするのが一番簡単だってね。この装置も非常に興味深い」

「…化け物が」


 マークの言葉を無視して、ダニーさんは魔法を放った。ダニーさんの放った雷の矢を受けてマークはその場に倒れた。気絶しているみたいだった。雷の威力を弱めたのだろ。パパも同じ使い方をしていたのを思い出した。


「殺しはしないよ。僕もこの状況には怒りを覚えたからね。君には罪を償ってもらうよ。地獄の中で生き続けてもらう」


 ダニーさんは冷たい声でそう言い放った。少し怖かった。


「それにしても良くここが分かったね」

「ああ、それね。ルークから聞いていない?魔石は分割しても魔力的な何か不思議な繋がりがあるんだ。ステラの持っていた通信機を借りて来た。君が通信機を持ち続けていてくれて助かったよ」


 私はそれが普通の人に出来る芸当では無い事を瞬時に理解した。やはりこの人は何でも完璧に出来る。パパの上位互換の様な存在だ。


「まあ、ルークに教えてもらわなかったら気付けていなかっただろうけどね」


 とにかく、私は助かった。その事実に今更ながらホッとした。ダニーさんは倒れているマークを拘束し始めた。私はそれを眺めながら残りのパンに齧り付いた。パンは普通のパンだったが、極限の状態で食べるととても美味しく感じた。


(後はここから脱出するだけだけど、体に力が入らない…)

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