78. 拷問
「それで?私をどうしたいの?」
「…契約が成立するまでは殺せないんだよね。大人しくしていてよ。暇になったら僕と話そう」
契約の事は分からないが、どうやら私はまだ殺されないらしい。その間にここから逃げる方法を考えようと思った。まずは周囲を確認する。上手く魔力を使えずに広い範囲を探知出来なかったが、ここには彼以外は居ないようだ。彼をどうにかし、拘束を解ければ後は簡単に逃げ出す事が出来そうだった。
「でもね」
マークは鞭を取り出して、私に向けて叩きつけて来た。顔に当たった。魔力で防御する事も出来ずにその攻撃をそのまま食らった。単なる打撃よりも鞭による打撃の方が痛いと聞いた事があったが、確かに痛かった。魔力で防御出来ていないのもあるが、かなり痛く、拷問向きの攻撃だと思った。
「君を痛めつける事に制限は無いんだよ」
マークは更に笑みを深めた。こいつは私を痛めつける事を喜んでいた。
「やはり普段は魔力で防御しているみたいだね。この部屋では出来ないみたいだ」
「何で」
「何でこんな事を?って?」
私が全てを言い終わる前に食い気味に私の言葉を遮った。
「前々から気に食わなかったんだよ。転生者の僕には何の才能も無かったのに君には色々な才能があって、ムカついてたんだよ」
「転生者?」
「…君は違うみたいだね。なら知らなくて良い言葉だ」
何を言っているのか分からなかった。才能が無いなら努力をすれば良いと思った。第一、才能があっても努力しなければ何も身に付かない。最近のマイケルを見ていて本当にそう思う。
これはただの妬みだ。
「惨めだね」
私の言葉に表情を変えず、マークは何も言わずに私を鞭で叩いた。
「そういう上から目線。止めた方が良いよ」
上から物を言っている自覚は無かった。だが、マークにはそう見えたらしい。そう思ったところでふと思いつく。
「そうか。私もステラも居なくなれば、お前が一番になれる」
「そうだよ」
マークの実力は私達の学年で三番目だ。武闘大会の準決勝でステラと対峙していたのもマークだった。こいつはただ努力もせずに一番になりたいんだと理解した。いや、努力をせずに諦めて楽な方を選んだんだ。
「そんな事で」
「そんな事、ああ、確かにそんな事だろう。でもね、僕にとっては一番大事な事なんだよ」
理解できないし、分かり合えないと思った。それと同時に説得も無理な事が分かった。
(倒すしかない)




