75. 救出作戦
ステラ達は大人しくクリストフの後ろに付いて行き、山道を進んだ。暫く進んだところでダニーさんが馬を寄せて来た。
「ステラこちらを向かずに聞いてくれ。僕は今からアリスを探しに行く。ここにはルークに教えてもらったデコイってのを置いていく。これは簡単な動きしか出来ない。何かあればすぐに逃げてくれ。頼んだよ」
ダニーさんはそれだけ小声で言うとすぐに行動を開始した。ステラでも気が付かない内にデコイと入れ替わったようだった。肉体の無い魔力が今までと同じ動きをしていた。ステラのやる事はこのデコイの事がばれないようにする事だろう。その為にクリストフとその部下の動向を良く見ておく。彼らがこのデコイに近づき過ぎないように自然に誘導する。
(これが今のステラに出来る事)
他に出来る事が無いと言うだけだが、今一番大事な仕事の様に思えた。ステラがしくじれば、全てが終わる。
お姉ちゃんは恐らくこの周辺にはもう居ないだろう。時間が結構経っているので相当遠くに捕らわれているだろう。ダニーさんの捜索範囲は相当広い物になる。それに探している事が相手に気が付かれれば、その時点でお姉ちゃんは殺される。その為、ステラが稼がなければならない時間はあればあるだけ良いという事になる。最悪目的地の王城に着くまで隠し通さなければならない。
(頑張らなくちゃ)
ステラ達はその後も順調に道を進んで行く。天候にも恵まれ、何もアクシデントの無いまま進む事が出来ていた。もちろんダニーさんの事はばれていない。一応隊長さんにだけはダニーさんの事を話して協力をしてもらった。今までクリストフの相手はダニーさんがしていたが、今は隊長さんが全てを対応している。
(順調だ。このまま気を抜かずにいこう)
ステラ達はアジオンブリア王国の王都が見える位置まで、何事も無く来る事が出来た。大きな難関は王都に入る際の検査だろうと思っていたが、その心配は杞憂に終わった。ステラ達が人質を取られていて何も出来ないと思われているのか、何の検査も無く王都に入れてくれた。王都はタクステディア王国と比べるとあまり栄えていなかった。国民達は皆暗い顔をしていた。重税で国民が苦しんでいると聞いていたが、ここまで酷いとは思っていなかった。この状況を見ても貴族や国王は何も思わないのかと思わずにはいられなかった。国王の人間性が想像出来なかった。今まで周りに居なかったタイプの人間だろう。
(さて、どうやって時間稼ぎをしようか)




