68. 日常
翌日から日常が帰って来た。いつも通りの学園生活が開始した。武闘大会は中止になった。仕方ないとは言え、二年連続での中止は生徒達に不満を持たせた。
「おはよう。昨日あの後どうだった?」
朝一にマイケルが話しかけてきた。良く寝て休んだのか、それとも違う理由か、マイケルは元気だった。
「ああ、私達ちょっと他国に行かなきゃいけないみたい」
「へー、留学って事か?」
「まあ、そんな感じ」
私達はキャロリンお姉ちゃんに口止めをされているので、あまり詳しく話す事が出来ない。曖昧にマイケルの質問に答えた。
「なんか大変そうだな。まあ、その間に俺はもっと強くなってやるからな」
「あー、頑張ってね」
「えっ⁉それだけ?」
そんな他愛の無いやり取りをしているとある男子が私達の元にやって来た。マーク・バーデンだ。一年の時の魔物討伐で一緒のパーティーになった人だ。今日は珍しく私達に話があるみたいだった。
「ブルスジルさん、二人ともちょっと良いか?」
「「うん」」
私達は廊下の人気の無い場所に移動した。そこでマークは小声で話し始めた。
「他国に行く件、僕も行く事になったんだ。よろしくね」
「へー何で?」
「僕の父が今回の護衛に選ばれてね。君達と年の近い人も居た方が良いんじゃないかってなってね。それで僕が選ばれたって訳だ」
別に同い年のマークが居ても居なくても何も変わらないと思ったが、今は言わないでおいた。
「それだけ。じゃあ、よろしくね」
「ええ、よろしく」
「よろしくお願いします」
教室に戻るとマイケルがニヤニヤした顔で待っていた。不思議に思ったが、席に戻る。
「お前等って好きな奴とか居るのか?」
「好きな奴?何で?」
「いや、お前等って結構モテるからさ。それにバーデンは多分アリスの事が好きだぞ」
「へー、興味ないな」
「うわっ、可愛そ」
誰が誰の事が好きという話はこの学園では良く聞く。私は誰か異性を好きになった事は無い。もちろんパパの事は好きだが、この場合のそれは違う好きだろう。それに、今はそんな事より強くなる事を考えたい。
(マークが私より強かったら好きになったりしていたのだろうか…)
私は嫌いな人は殆ど居ない。皆好きだと言っても過言では無いだろう。でもそれは恋愛感情による好きでは無い。誰かを恋愛感情で好きになった事は無い。それが普通なのか普通じゃないのかは分からない。
(とにかく行きたくないな)




