44. ステラ②
ステラはパパの元に駆け寄った。周りを見るとさっきまで対峙していた彼は球に向かって跪いていた。不思議な光景だった。
「あれは何だ?」
「分からない、何かを飲んだらああなった」
パパに問われてこうなった経緯を簡単に答えた。パパに答えていた時、彼に纏わりついていた黒い靄が球に吸い込まれていった。彼はその場に倒れ込んだ。さっきまでは出ていなかった血を流しながら倒れていた。
それは黒い靄を吸って黒くなった球から出てきた。魔族の様な見た目に黒い肌、そして背中から生える黒い翼。
「あれは悪魔だね、顕現時の魔力不足で魔族よりの見た目だけど」
「えっ?ダニー!」
いきなり誰かが現れた。ティナの様に耳が尖った男の人だった。パパの知り合いみたいだ。ダニーさんと言うらしい。
「色々聞きたい事はあるが、あれ倒すの手伝ってくれ」
「ああ、良いよ。それにあれは顕現したてで状況が分かっていない。倒すなら今だ」
パパとダニーさんは短いやり取りをした後、現れた悪魔に攻撃を仕掛けた。まず、ダニーさんが土を飛ばしていた。恐らく魔法だろう。かなり洗練されていた。思わず見とれてしまった。その魔法を追いかけるようにパパが空を飛んで行った。
ダニーさんの魔法が当たりそうな時にダニーさんはステラに向かって話しかけてきた。
「ちょっと離れていてね」
ステラは頷いてその場から離れた。
ダニーさんはステラが離れた後にパパと同じように空を飛んで行った。飛んでいくと同時に武道大会の会場は土の壁に覆われた。ダニーさんの魔法だろう。凄い範囲と精度だった。会場が全て覆われて辺りが暗くなった。
会場を土の壁が覆った直後に凄い音が響いた。土の欠片がぽろぽろ落ちてきていたが、壁が崩れる事は無かった。そして、もう一度大きな音がした。
暫く上を見て様子を伺っていると、土の壁が出来上がった時と反対に消滅していった。そしてパパとダニーさんが空から下りてきた。
悪魔をやっつけたのだろう。二人は楽しそうに話しながらこちらにやって来た。
「ステラ、空いてる教室にダニーを案内してやってくれ」
「分かった」
「よろしく頼むよ。お嬢ちゃん」
私はダニーさんを連れて会場を後にしようとした所で、お姉ちゃんとシシリーを見かけた。医務室に向かう途中みたいだった。
(皆無事でよかった)
と思った所で、ジョン・ベッキンセイルの存在が頭を過った。結果的に私が殺したわけではないが、急に罪悪感が込み上げてきた。私の気持ちを知ってかダニーさんが私の肩に手を置いてきた。
「気にする必要はない」
ダニーさんはそれだけ言うとお姉ちゃん達の後を追いかけて行った。
(……)




