43. ステラ①
二日目、気が付くとお姉ちゃんは居なくなっていた。
「お姉ちゃんは?」
ティナに聞いたがティナは知らないようだった。まあ、試合は最後の方なので大丈夫だろうとステラは会場に向かった。今日は二日目というだけあって、昨日よりも観客が多い気がする。ステラの試合は最初の方なのでティナと別れて、選手の控室に向かう。
(ここにもお姉ちゃん居ない。どこ行ったんだろ)
お姉ちゃんに会えないまま、ステラの出番になった。相手はジョン・ベッキンセイル。シシリーの情報によれば、相手は魔術も剣も平均的な少年だ。正々堂々戦えば、負ける事は無いだろう。
(…ん?)
対峙したジョン・ベッキンセイルはどこか様子が可笑しかった。彼はいきなり何かを飲み込んだ。飲み込んだそばからどんどん様子が可笑しくなる。視点が定まっていなくて、体の周りに黒い靄の様な物が見える。感じからしておそらく魔力だろう。それが可視化されるほど集まって彼の体に巻き付いていた。
審判が始めの合図をする前に彼はステラに突っ込んできた。ステラはそれを冷静に躱した。彼はその勢いのまま、壁に激突した。
土煙が舞う中から彼は無傷で歩いて出てきた。
(どうしよう)
思えば、こういう事態の時にはお姉ちゃんかパパが居た。ステラだけで判断しないといけない状況に考えを巡らせる。
試行している間にも彼はステラに襲い掛かって来た。今度はステラの正面で止まって剣を振ってきた。今気が付いたが、それは試合に貸し出される木刀では無く、真剣だった。ステラはそれをギリギリで躱す。
(早い)
考えながら相手を出来る程余裕はない。
「おい、止まりなさい!」
審判がステラと彼の間に入って来た。
「だめ!」
審判は一瞬で彼に切り殺されてしまった。会場から悲鳴が聞こえる。逃げる観客が見えた。早く終わらせないともっと大変な事になる。
(…これはしょうがない事、しょうがない事……)
そう自分に言い聞かせながら彼の頭に氷の矢を生成させて消滅させる。確かに頭を矢が貫通していたはずだが、彼からは血すら出てこなかった。もちろん彼の動きは止まらなかった。
(最初から死んでいた?)
状況は全く分からないが彼は執拗にステラを狙ってきた。
遂に彼の拳がステラに当たった。亜空間から魔力を引っ張り出してそれを防御に使ってもステラは吹き飛ばされた。咄嗟に体の後ろにも魔力を集めて壁にぶつかる衝撃を減らした。
(助けて、お姉ちゃん、パパ)
涙が零れそうになるのを必死に堪えて、ステラは立ち上がった。その時、会場の中心から地面を突き破って透明な球が出てきた。それを追うようにパパが空いた穴から出てきた。
(パパ!)




