21. 狙い
『パパがね、一応予め間引いておいたが、気を付けろだって』
それはパパからの忠告だろう。そして私で倒せない強力な魔物は居ないという事でもある。
(…?)
通話を終えた私は殺気を感じる。周囲を見渡しても誰も気が付いていない様子だった。私はどこから誰に向けられた殺意なのかを探る。パパみたいに魔力を薄い膜で広げて周囲を探ってみたが、見える範囲には敵は居なさそうだった。
「アリス、どうした?」
「…いや」
アレックスさんに話しかけられて返事をしようとしたその瞬間、私達が向かおうとしていた森から矢が飛んできた。その矢はドミニクに向かっていた。私は剣を抜いて癖で魔力を込める。振動した剣が矢を二つに切断する。切断された矢の後ろ側は勢いが無くなり、地面に落ちようとしていたが、鏃が付いていた方はそのままドミニクの方に跳んでいき、ドミニクの腕に当たる。
「うあああああ」
「…やば」
矢を叩き落とすつもりが、切断してしまった。ドミニクが泣きわめいている間も殺気はまだ収まっていなかった。
「次が来ます!アレックスさん!」
「分かってる」
アレックスさんが大きな盾を構えて前に出る。アレックスさんの大きさで前が見えなくなる。
「アランは子供達の治療と守りを、ステラは後方を」
「おう」
「はい!」
アレックスさんの指示に従い後方に視線を向ける。前方の森程隠れる場所は無いが、今の状況で奇襲するなら後方からの方が成功するだろう。意識を集中させて周囲を探る。暫くしてドミニクの悲鳴は消えた。ドミニクの治療は終わったみたいだ。幸い毒などは塗られていなかったみたいだ。
前方からかなりの数の矢が飛んでくるのを感じる。私はアレックスさんの前に雷の矢を無詠唱で発動させる。雷の矢に触れた敵の矢は方向を変え、私達の周囲に突き刺さる。
「さんきゅうアリス!」
後方からは依然襲撃がある気配は無い。前方から大量の矢が飛んできた後すぐに感じていた殺気も消えていた。
「引いたか」
「みたいですね」
敵が引いた後、私達は森に向かう予定を変更して宿へと向かう。宿に着いた後はアレックスさんが周囲の警戒に行き、私達は安全が確認されるまで大人しくしていた。
矢を受けたドミニクは不機嫌そうだが、その表情に脅えが見える。他の二人は強張った顔をしながら俯いていた。
「アランさん学校側はなんて」
「まだ連絡を向かわせただけだ、何ともいっていない。まあ、今回の討伐は中止かな」
私と違ってすぐに誰かと連絡が取れない事を忘れていた。
(中止か、何もせずに仲良くもなれずに終了か…)




