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16. 不穏①

 俺には才能が無かった。特別な力や能力。スキルや才能は全く無かった。俺は貴族の家に生まれた。男爵家の家系だ。そこの三男坊として俺はこの世に生を受けた。


 ただ時間は過ぎ去っていく。俺は何も得られず、成長していった。特技と言えば気配を消すぐらいだ。でもそれは誰でも出来るし、特別珍しい事でも無かった。努力をしなかった訳では無い。前世の知識を使って体内の魔力を動かそうとしてみたり、魔法を発動させてみようとした事はあったが、それは全て上手くいかなかった。


 才能は無かったが、知識はあった。でも知識は役に立たなかった。前世では色々な便利な物があったが、それがどういう原理で動いているのか分からず、再現出来なかった。いつしか夢と理想だけ語る出来損ないと周囲からは見られていた。


 最終的に芸術方面に舵を切った。楽器は高くてどの楽器に才能があるのか確かめられなかったので、絵を描く事にした。幸い一流まではいかなかったが、ある程度認められた。前世美術の授業で見た絵を真似したら、一部の人から好評だっただけだ。そのお陰か、芸術好きの集まりに呼ばれるようになった。しかし、芸術を趣味にしている貴族は大概が金持ちなので、あまり裕福でない貴族家出身の俺は肩身の狭い思いをするその集まりが好きでは無かった。


 アジオンブリア王国に生まれた。王国は栄えておらず、重税に次ぐ重税で民は疲弊し、国力は低下の一途を辿っていた。貴族も位が低い家は年中金策に追われ、潰れる貴族家も多くなかった。この家は何をしているのか分からなかったが、裕福で無いにしろ貧乏で潰れそうでも無かった。


 そんな俺は影が薄く、気配を消すのが得だった為、タクステディア王国にある王立レノース学園に潜入させられる事となった。


(本当に家はどんな家系なんだろうか…)


 覚えるのは人並みに得意だった。魔法や剣は全く使えないが、座学のお陰か俺はBクラスに入る事が出来た。同じように他にも潜入者が居るらしいが、俺はそれが誰だか知らなかった。


 そんな初登校日、俺は運命の出会いをした。と言っても自分でそう思っただけだが。

 その女の子は銃を担いでいた。短い髪に少し吊り目な目、尖った耳が特徴の女の子だった。この世界の人達からするとそれ程美人ではない。銃を持っているのを初めて見たので俺は彼女も広義の意味での同郷の者だと思った。そんなこと関係なく、俺は彼女に一目ぼれした。


 しかしその彼女は誰とも馴れ合わなかった。表面上は穏やかだが、誰とも深く関わろうとしていなかった。当然俺の話も笑顔で聞いてくれるが、俺と本当の意味で友達にはなってくれないような感じだった。


 その彼女が唯一仲良くしている双子を見た時、俺はある事実を知った。推測だが、多分当たっている。


(…本国に報告するか)

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