1. 無力
(私は、弱い…)
私には両親が居ない。昔、魔物に襲われて死んだと育ての親から聞かされた。唯一生き残った私と双子の妹のステラは育ての親、パパに拾われ大切に、大事に育てられた。パパは仕事が忙しくて居ない時も多く、寂しい思いをした時も少なくなかった。そんな時、私達の相手をしてくれたのはパトリシアお姉ちゃんだった。彼女は不愛想で表情が分かりにくいとよく周りに居れていたが、私達にはそう思った事は無かった。いつも優しく私達を見守ってくれたり、時には手助けをしてくれて、とても尊敬していたし、大好きだった。
私の世界の全ては幸せだった。
終わりは唐突に訪れた。
私達の我儘で魔界でパパと一緒に居たいと駄々を捏ねた所為で、パトリシアお姉ちゃんは死んだ。パパが言う、危ないからここに居ちゃいけないと言ってた意味が分かっていなかった。
「もうすぐ着きます」
パパがそのあとすぐに魔族や魔物、魔王を倒してくれたから私達は無事に生き残ることが出来た。脅威は去ったが危ないからと私達と友達のティナは王都へと向かっていた。
(私にもっと力があれば……違うか)
我儘を突き通す為の力が足りなかった。パパは誰の所為でも無いと言ったが、私は違うと思う。明らかに私達が弱かった所為だ。
(もっと強くならなきゃ)
もう大切な物を失わない為に、強くなる事を誓う。今までパパに鍛えてもらっていたので、同年代の子供よりは明らかに強い。自惚れでも無く、それは事実だ。
(でも、それだけじゃダメ…ダメなんだ!)
私は前を向く。隣に座っていたステラも前を向いていた。ティナは馬車の壁に寄り掛かって眠っていた。
(自分達の事は自分達で守れるようにならなきゃ)
私一人では、すぐには強くなれない。まだ八年しか生きていないからだ。でも、この三人でならパパぐらい強くなるのは無理でも、大切な物を守れるだけの力は手に入れられると、不思議と確信した。
「ステラ」
「何?お姉ちゃん」
「帰ったら特訓しよう」
「…うん」
私達は双子だ。全て言わなくてもしっかりと伝わった。
「皆さん着きましたよ」
私達は御者に案内されてキャロリンお姉ちゃんの家まで来ていた。キャロリンお姉ちゃんが屋敷の前で出迎えてくれた。
「いらっしゃい。疲れたでしょう?中に入って」
「「「お邪魔します」」」
パパと住んでいたファームトイルムの家よりも大きくて豪華な家だった。キャロリンお姉ちゃんは貴族だと言っていた。貴族は皆金持ちだとパパが言っていたので納得は出来たが、驚きはした。
(これから、ここから、私は強くなる)