第二話 荷物持ちはデートと言うのだろうか
長期休み前の登校日。 つまり、昨日のデートから一日が経った。
まだ空席の目立つ朝の教室で一朗は休みは何をしようかと考えている所に声を掛けられた。
「おっはよー!」
朝から元気ハツラツなウィンに少し戸惑いながら返事をする。
「おはよう。朝から元気だね」
「まぁねー。それより、昨日はどうだった?」
むふふっと楽し気な顔でよくわからない質問をしてくる。
「何の話だ?」
「もっちろん、姫々ちゃんとのデートに決まってるじゃん!」
よく通る声であまりにも大きな口調で言うものだから響く鐘の音のようにその問題発言は教室を駆け巡った。
「いや、あれはデート―――」
一朗が否定しようとした瞬間、ポンっと肩をたたかれる。
ぞわりっと背筋に凍えるものを感じて振り向くと口元を手で隠して微笑む竜宮寺 乙女の姿があった。
ただし、目は笑っていないが……。
「おはようございます、一朗様。そのお話、『詳しく』お聞きしてもよろしいでしょうか」
疑問形の言葉尻だが、有無を言わせない何かがそれにはあった。
「お、おはよう、竜宮寺さん」
なにがどうなっているのか、どうして竜宮寺が自分に声をかける必要があるのか、さっぱり意味不明だが明らかに良い状況じゃないのは一朗にも把握できた。
「はい。では、二人でお話出来る所へ参りましょうか」
挨拶をしただけなのに連行が確定していた。
段々肝が冷えて来た一朗がウィンに助けを求めようとする前に竜宮寺が先に言葉を発する。
「ウィルウィン・ゴールドさん。申し訳ありませんが先生には二人が授業に遅れるかもしれないとお伝え願いますか?」
逃げ道を塞がれた一朗は必死にウィンに目で訴える。
「りょ、了解しましたー!」
ピシっと姿勢を正して敬礼するウィンに一朗は開いた口がふさがらなかった。
「では、参りましょうか」
襟首をつかまれてずるずると引っ張られ教室を出る一朗。
それとすれ違う様に姫々が廊下を歩いており、その様子を見てさっそく痛い目を見ているなとくつくつ笑い、その揺れる頭には一朗の手渡したかんざしが煌びやかに朝日を浴びて輝いていた。
第二話
荷物持ちはデートと言うのだろうか
End