住処
狭い道を通りついていった先では、様々な人がいた。羽が生えた人間、灰色の存在、耳の長い人間。10を超える集会で同じ種族の者は一人としていなかった。そして、その多くが怪我をしていた。それこそ、目がなかったり、腕がなかったり、足がなかったり、五体満足の人の方が珍しい。
それでも彼らは陽気に笑っている。話している言語こそわからないが、楽しんでいるのはわかる。
「ようこそ」
そんな中で進み出てきたのはエルフのような耳をした女性。その左右には鱗を生やした隻腕の男性と、角の生えた隻眼の男性だ。
「私はゼロ。私たちはあなたを歓迎する」
「……」
「私の日本語おかしい?」
「いや、わかる」
説明を聞くために沈黙していただけだ。しかし、彼女の言い方からすると日本語は本来ここで使われている言語ではないらしい。異世界だし、言語が違うこともあるだろうけど、面倒だな。
「まず、ここは地球ではない……と思う」
「思う?」
「地球が私にはよくわかってない。でも元居た場所と違うはず。知らないだけであったと言われたらそれまでだけど」
「周りの人を見たら、なんとなく地球ではないなってわかるよ」
翼の生えた人も、角を持った人間も、緑の肌の人間も、ケモミミの少女も、地球にはいない。それが存在するのはファンタジーの世界だけだ。
「私たちの目的は地球」
「……えーと、侵略するとかそういう話?」
「ううん、ただ行きたいだけ。その先は今はあまり考えてない」
異世界転移の定番だと呼ばれたけど帰れないなんてことがザラなのだが、どうやら違うようだ。帰れるというのは少し安心した。見たいアニメとかもあるし、何よりチートの力をもって現代に帰ると考えると楽しみだ。
「そのための準備を私たちはしている。あなたにはその協力をしてほしい」
「わかった」
「……悩まないの?」
「ああ、任せとけって」
どうせうまいこと行くのだ。なら自信をもってうなずいても問題はないだろう。それに地球に帰れる方法は確立しておきたい。
「一応、私たちのことを説明する」
そういって彼女はいくつかの説明をしてくれた。ここの住民は数字を持っており、1は隊長、2は索敵などがあるらしい。作戦の実行には通し番号を与えなおしているらしい。彼らはそれぞれ特殊な力、というよりは聞いている感じ種族の特性を持っているみたいで、それを利用して戦っているらしい。
そして相手は研究機関で地球に行くための技術を独占しているのだと思う。いずれにせよ、地球に行くのを止めている組織があるみたいだ。
「しばらくは生活に慣れてほしい」
そうして、生活に馴染むため俺はそこで暮らすことになった。