しません。
「ん~、そうでござるなぁ。
もう一人女子の戦士が増えるなら、ホワイトやピンクもすてがたいが、拙者的にはブルーが良いでござる。
海のイメージのブルーなら、水着の期待も高まるというもの」
「もう一人は、正統派のイケメンがいいなぁ~。
ジロちゃんはレッドだけど、名前も顔も地味だもんね。
ね、ジロちゃん、知り合いにいいイケメンいない?」
いや全く決まってないどころか、めども立っていないのか。やる気はあるのだろうか。
「さ、三人でファイブなんですか……?」
「うむ。戦力はまだ充分ではないが時間がない。急いで名乗りの練習だ!
……レッド、こんな形でコードネームを伝えるのは本意ではなかったが……」
長官は背後に置いてあった風呂敷包みを次郎に渡した。
風呂敷包みには何か書いてある付箋が貼りつけられている。次郎はその付箋に目を落とした。
「なになに……?
レッド・フォックス……動物モチーフなのか……?」
「レッドのポーズは今日は即興で良い。総員、練習急げ!」
「はい!
……ヴェーダ・チェンジ!
創世の! 赤き翼!! ブラフマァァ~~~レッドぉ!」
美優の身体が光に包まれ、赤いなんちゃらスーツが生成された。
「おお、変身した!」
思わず感嘆の声を上げる次郎。
だがこちらも完全へそ出し、絶対領域は完全生脚。ゴーグルはあるが、顔の下半分と艶やかな髪も露出していた。これ、戦隊のスーツと言えるのか。だが自己紹介アクションとも相まって、これは完全に目の保養。神が許さなくても筆者が許すぞこのデザイン。
「ぬぅん!
ベリアルチェンジ!
至高の暗黒……。スプリィィム! ブラック!」
ダークメイスンの身体が闇に包まれ、黒いなんちゃらスーツが生成された。こちらは完全露出一切なしの、スタンダードスタイルのスーツだ。
「よし、僕の番……えっと、変身は……」
変身の仕方は付箋に書いていなかった。きょろきょろして慌てている次郎に、長官は鋭く指示を飛ばした。
「早く、その包みを開けて着替えろ!」
「き、着替え?」
まさか、風呂敷包みの中になんちゃらスーツが入っているのか。着替えるのか。
「はーい、改造したらフルオートでお着替えできるようにしとくから、今はがまんしてねー!」
スプリームブラックが次郎の肩をぽんぽんっと叩く。やっぱり着替えるのか。
「急げ!」
追い打ちをかけるような長官の一喝。次郎も腹をくくる時が来たようだ。
「は、はい……。
……えっと……。
き、着替えチェンジ!」
次郎は風呂敷包みを持って部屋の隅っこに移動した。
できるだけブラフマーレッドの視界に入らないように背を向けてジーパンを下ろす。お着換えの始まりだ。
「ん……んしょ……っと。
あ、いてっ……」
女子のいる部屋で着替えなければならないなんて、小学校のプールの時以来だ。緊張や焦りでいつもより手間取ってしまう。
「結構どんくさいね、ジロちゃんて」
いやそこは大目に見てやって欲しい。ブラフマーレッドの存在が、彼を緊張させているのだから。
「まぁまぁ。それも改造までの辛抱だから~ガマンガマン~♪」
何故かうきうきした様子のスプリームブラック。
どうにか着替えを済ませた次郎は、付箋をもう一度チェックする。
「……よしできた!
え……と。
赤いきつね! レッドフォックス!
……ってちょっと待っ……」
次郎の言葉を無視して、ブラフマーレッドがポーズを決めた。
「究極無敵爆裂防衛戦隊!!」
「な……なんちゃらファイブ……」
「参上で~す♪」
仕方なしに見様見真似で集合ポーズに参加するレッドフォックス。もうこれは完全に同調圧力である。
「うむ、そんなもんだろう。ゆけ! なんちゃらファイブ!」
「ちょ、ちょっと待って下さい! 赤いきつねってなんすか、赤いきつねって!」
確かに。大丈夫なのか。商標的に問題が生じたりはしないか。「各種団体との折衝」はちゃんとなされているんだろうな?
「ぬ? レッドが気に入らないなら、グリーンにするか?」
「グリーン……って! まさか緑のたぬ……」
「はいはい、時間ないからいくよ~」
ブラフマーレッドに引っ張られながら、レッドフォックスの必死の抵抗は続いた。
「それに、僕まだ、普通の人間ですよ! 着替えただけの!」
確かにそうだ。魔改造手術はまだ行われていない。スーツへの着替えさえ手動の状態だ。
「案ずるな。
地球を守るために瀕死の重症を追った田中次郎は、その勇気を認められ、改造手術でよみがえった!
胸アツ展開だ!」
それはそうなんだろうが。筆者もその胸アツには共感するが。この場合はちょっと違うんじゃないだろうか。
「死んじゃったら元も子もないでしょ!」
はい、その通り。
「心配、ない。もし、死んだら、頭脳も、AIに、する」
「なるほどぉ! 完全無敵ロボットレッド!!
ジロちゃん最強じゃん!」
テンションMAXのブラフマーレッド。いや、さすがにそれは……。
「それ、もう僕じゃないでしょ!」
はい、これも正解。だがそんな事に耳を傾ける彼らではない。
「じゃー長官、初出動、いってきまぁ~す♪」
「ほーらジロちゃん、いーくーよ☆」
レッドフォックスの腕を抱きしめたブラフマーレッドの胸がむにゅっとひしゃげた。これが田中次郎、最期の思い出となってしまうのか……。
「あー待って! はなしてぇ~~~!」
力なく引きずられていくレッドフォックスを、長官は腕組みをして見送った。
「……頼んだぞ、なんちゃらファイブ。
地球の運命は君たちにかかっている!!
ゆけ! なんちゃらファイブ!
飛べ! なんちゃらファイブ!
戦え! なんちゃらファイブ! 愛と正義のために」
完
短い間でしたが応援ありがとう!
「究極無敵爆裂防衛戦隊なんちゃらファイブ」のメンバーはともかく、筆者は応援してくれた読者のみんなを忘れないぞ!
千楽亭先生の次回作にご期待ください!
……というわけで、筆者こと私も暇になってしまった。
さぁ、別の次元でも征服しに行くとするか。我が配下、ゴズメズーンの精鋭達と共に。
あぁ、そうそう。評価やコメント等頂けると嬉しいです!