CHITKU・CHETKI⑦
おしろをぬけるとのはらがありました。
そこをずーっといくと、もりがありました。
ぶきみなもりです。
しっ!
しっ!
しししのし!
いきをひそめておそるおそるもりのなかをうかがうおひめさまを、ふくろうたちがわらいます。
「おじょうちゃん、どうしたの」
「わたし、チック・チェッキにあいにきたの」
「チック・チェッキ?そいつはなにもの?」
「こわいおばけ」
「ふうむ、おばかならしっているけど」
おひめさまはめをかがやかせてききました。
「だれ?」
しっ!
しっ!
しししのし!
ふくろうたちはわらいながらはねをのばしました。
そのぎょろぎょろとしためだまといったら!
ましてやふくろうたちはみんなするどくてぶきみなつめとくちばしをもっているのですよ!
ちいさくてかよわいおひめさまをふるえあがらせるにはじゅうぶんすぎるほどです!
「それはおまえさ、おじょうちゃん!」
あさはかな
おろかなおじょうちゃん
なにしきたの
おまえがくるばしょなんてこのもりにはないよ
いのちしらずなおじょうちゃん
はやくかえりなはやくかえりな
おまえがいるばしょなんてどこにもないよ
おばかのろまなおじょうちゃん
おまえのめんたまくってやろうか!
イヒヒ、イヒヒ!
いじきたなくわらうふくろうなんかもうみたくもありません。
おひめさまははしりました、あさになってもおひさまのかおがみえないようなふかいふかいもりのおくへとわけもわからずはしるのでした。
そのあいまにきぬのネグリジェはのばらのとげでびりびりとやぶれていきます。
きれいなくりいろのかみはよつゆでぬれておもくなります。
うつくしいはだやてあしはどろんこになりました。
もはやうつくしくかわいいおひめさまのすがたはありませんでした。
それでもおひめさまはこころのなかでうたうのです。
ちいさなこえで、でもたしかにうたうのです。
ちっくたっく
ちっくたっく
とけいのはりがじゅうにじをまわったら
チック・チェッキが
おどりだす
どんなかたちをしているの
(さあね)
どんなものをたべるの
(なんでも)
わらのベッドからはいだして
(ときにはどろのなか)
おどりましょう
(ひとりで?)
いいえみなでおどるの
はやしをかきわけてどんなところにでも
うまれたままのあしで
はしったり
さかだちしたり
じぶんたちだけのステップをつくってみたり
ティン・タッタ
トゥン・タッタ
はやく
おそく
ステップ、ステップ
そこでターン、フィーニッシュ!
とけいのはりがじゅうにじをまわったら
チック・チェッキがおどりだす
おどりだすったらおどりだす…