CHITKU・CHETKI⑤
でもね、おひめさまはひとりぽっちでした。
めずらしいとりのはねをもっていても
がいこくからとりよせたこうすいをつけていても
まちでみかけたおんなのこがもっていたおかしをとりあげたって
みんなにはおっかさんとおっとさんがいるけれど、おひめさまにはじいやとめしつかいしかおりません。
おひめさまはひとりぽっちでした。
おひめさまはそらをみあげました。
とてもきれいなよるでした。
おつきさまがまんまるにふとっていて
おほしさまがかんらかんらとわらっているようでした。
なにをかなしそうなかをしているの
おつきさまがかおをかしげます。
なんでもないの
おひめさまはくびをふります。
なんでもないってかおじゃないよ
ぼかあ、しんぱいだなあ
おほしさまがさわぎます。
いいえ、ほんとうになんでもない
おひめさまはうつむいてしまいました。
いってごらんよ、おひめさま
おつきさまはかおをゆらゆら、ゆらしてささやきました。
いってごらんよ、おひめさま
なにがかなしいの
なにがうれしいの
なにがほしいの
ここにはわたしとあなただけ
あとのやつらはとんまなやつら
なにをいっても
ぜんぜんまったくきいてなんか、いやしないから
おつきさまのこえはひくくてゆっくりとしたこえ
おひめさまのみみにとってもきもちよくきこえました。
あのね
おひめさまはうん、とつまさきをのばしてささやきました。
うんうん
おほしさまはからだをくねらせてあいづちをうちます。
わたしほしいのよ
さいしょのひとつは
なんだったかはわすれてしまったけれど
うまれたときからなんでもほしくなってしまったの
それで?
それでいまはわたしね
ほしいものがあるの
それはなに?
おほしさまがうたいだします。
「それはなに?おひめさま!」
あれ?
これ?
それ?
いろんなものがあるよ
とかげがちぎったしっぽのミイラ
りょうりじまんのおかみさんがつくったとくせいのじゃむ
あじあのおくにのアジアンティー
なんでもあるよ、なんでもあるよ
なにがいい?
なにがいいかを
きっちりはっきりおしえておくれ!
なにができるかはわからないけれど