CHITKU・CHETKI②
あるよる、おひめさまはじいやにいいました。
そのひはおひるねをしたのでぜんぜんねむくなかったのです。
「ねえじいや、きょうはよふかししてもいいかしら。だっておひるにすこしいねむりをしてしまったんだもの。もうねむくないの。」
じいやはもちろんくびをたてにはふりません
「おひめさま、よるはみんなねるものですよ。」
おひめさまかわいらしくくびをかしげてたずねました
「どうして?どうしてよるはねむらなくてはいけないの?だれがきめたの?」
どうして?
じいやはこまりました。
だってよるはねるものだときまっているだけで、どうしてねるのかということはじいやもしらなかったのですからね。
じいやはうーん、うーん、とくびをひねってかんがえます。
おひめさまはどうして、どうして、ときいてきます。
こまったじいやがもういちどくびをおおきくひねったとき、あるかんがえがひらめきました。
(そうだ、おひめさまをこわがらせてしまえばいい。そうすればこわがってきちんとねるにちがいないぞ。こいつはめいあん、だいめいあん)
じいやはぽん、と、てをたたいてにっこりわらいました。
そしてへんじをいまかいまかとまつおひめさまにこうささやいたのです。
「おひめさま。どうしてよるはねむらなくてはいけないか、ですって?
それはとってもかんたんなことですよ。よるにいきるものはなんだとおもいますか
おひめさまがおねしょするくらいにこわーいかいぶつどもですぞ
かみはぼさぼさ
はだはかさかさ
つめはのびほうだい
くちからでるいきはとてもくさい
やつらはよいこのみんながねたあとに
うすきみわるいもりのおく
きたないわらのベッドからはいだして
はだしでつちのうえをはしりまわり
そこらじゅうのたべれるものをくちにほうりこみ
もちろんコウモリやトカゲなんかもばりばりたべる
そこらじゅうのたべれないものにのろいのことばをはく
きらわれもののかいぶつです
いいですか、おひめさま
よふかしするこはみんな、みにくいかいぶつになってしまうんですからね
あなたはそんなふうになりたくはないでしょう?」
と、いいながらじいやはおひめさまのかおをみると
ああ、なんということでしょう!
おひめさまはかおをかがやかせているではありませんか!
「すてき!」
おひめさまはきぬのネグリジェにつつまれたからだをふるわせてさけびました。