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コンビニ事件簿!?  作者: 渡井 彩加
迷子事件簿!?
9/9

コンビニ事件簿!?迷子事件簿!?後日談

 数日後。


 組長はすぐに動いてくれたらしく、店長が頼み込みに行った次の日には宮間養護施設には悪い噂が立ち、その2日後には「こちらで児童虐待が行われている可能性があるという匿名の垂れ込みを貰った」という事で警察が抜き打ちで検査に入ったらしく、その日には宮間園長が現行犯逮捕されたという報告を聞いた。

 聞いた児童虐待の内容は思い出したくもない。


 そして、当然すぐに園は閉園に追い込まれ、園にいた子供たちは違う園に引き取られたりした。




 で、芽琉ちゃんはというと…。


「芽琉は俺が引き取る!」

 閉園の報せを聞いたその日の仕事終わりに、店長が店の事務所で声高らかに宣言した。

「マジですか」

「何か不満か?」

「不満っていうか、心配しかないです。借金とか色々あるみたいだし…」

「お前、いつ借金の話聞いたんだ!?」

「店長が事務所に行っている間に。山内さんとの出逢いの話も聞きましたよ」

 私がそう言うと、店長は心底嫌そうにチッと舌打ちをした。

「あいつ、余計なこと喋りやがって…」

 そんなに嫌がらんでも。

「まぁ、でも芽琉には苦労させねぇよ」

「えー?本当にですか?」

 そんなことを話していると。


「店長、篠原さん。芽琉ちゃんと山内さん来たよー」

「あ、オーナーありがとうございます」

「うす!兄貴!姉御!芽琉ちゃん連れてきたっす!」

「誰が姉御ですか」

「すいやせん、姉御って呼びやすいので」

 今、芽琉ちゃんは店長の家にいて、私も店長も側にいれないときは山内さんが預かってくれていた。


「おにーちゃん、おねーちゃーん!」

 芽琉ちゃんは私と店長を見るなり駆け寄ってきた。

「芽琉ちゃーん!いいこしてた?」

「いいこしてたー!」

 あぁ、かわいい。一日の疲れが吹き飛ばされる…。

「おぅ、芽琉。いいもん食わせて貰ったか?」

「あのねー、おいちゃんとねー、あいちゃんとねー、オムライスたべにいったのー!とってもおいしかったのー!」

「そうか、良かったな」

 そう言って店長は芽琉ちゃんの頭をわしわしっと撫でた。

 店長、顔思いっきりデレてますよ…。


 まぁ、店長の超デレ顔の事は置いといて。

 それより…

「あの、あいちゃんって誰ですか?」

 ちなみにおいちゃんって言うのは山内さんの事なんだけど、あいちゃんって言うのは私は初めて聞いた。

「あ、あいちゃんって言うのは自分の嫁の名前っす」

「へー、そうなんですか」

 …っていうか、山内さん結婚してたんだ!?

 知らなかったわ。


「そうだ。それであの…実は今日はお二人にお話がありまして…」

 山内さんが言い出しにくそうに言った。

「何だ?」

「ここじゃアレなんで、いいっすか?」

「…おぅ。えっと、んじゃ芽琉は…」

「芽琉ちゃんの事は私が見ておくよ」

 オーナーがそう申し出てくれたので、芽琉ちゃんには事務所にいてもらって、私たちは駐車場に行った。 


「で、話ってのは?」

「へい。実は、芽琉ちゃんの事なんですが…」

「「?」」


「自分のところで引き取らせて貰えないでしょうか!」



 …………。


「えぇぇぇぇ!?」

「お前、どうしたんだ、急に?」

「へぇ、兄貴が芽琉ちゃんを引き取るつもりだって言うのは知っていますし、アレなんですけど…自分、芽琉ちゃんを育てたいって思いまして」

「でもお前、嫁さんはいいって言ってんのかよ?」

「…実は嫁、不妊症でして…子供が出来ないんすよ。自分は子供はいなくてもいいって言ってるんですが、嫁は子供が出来ないのは私のせいだけど、でも出来れば子供欲しいって言ってて。だから、元よりどこかの施設から子供をから引き取ろうかって話は出てたんです」

「それで、芽琉を?」

「えぇ。それもありますし、何より…自分、芽琉ちゃんを幸せにしてあげたいんですよ。こんなに人を幸せにしたいって思ったのは、嫁さんの時以来です。こんなの自分のエゴですし、もしかしたら芽琉ちゃんは嫌かもしれませんが、自分はあの子を幸せにしたい。もっと綺麗な世界を見せてあげたいって、心から思ってるんです。なので、兄貴には申し訳ありませんが、自分に芽琉ちゃんを引き取らせて下さい。お願いします!」

 そう言って山内さんは深く頭を下げた。


「芽琉ちゃん、山内さんに凄くなついてますし…私はいいと思いますが…」

 私は隣にいる店長をちらりと見た。

「……お前、本当に芽琉を幸せにしたいって思ってるんだな?」

「はい」

「本当にだな?」

「はい。神に誓って」


 店長はその返事を聞き、ハァー…と長い溜め息をついてから言った。

「…わかった。芽琉の了承を得られたら、お前が引き取れ」

「…!兄貴、ありがとうございます!」

「芽琉がいいって言ったらな!」

「わかりました!」


 早速店に戻って、事務所で待っていた芽琉ちゃんに

「あのね、おいちゃんがね、芽琉ちゃんのパパになりたいんだって。いいかな?」

 と聞いてみた。


「おいちゃんが、パパに?」

 芽琉ちゃんは山内さんを見た。

「芽琉ちゃん」

 山内さんはしゃがみ、芽琉ちゃんと視線を合わせた。

「これから、おいちゃんの娘としておいちゃんと一緒に暮らしてくれないかな?」

 山内さんは優しい口調で芽琉ちゃんに聞いた。

 芽琉ちゃんは少しの間きょとんとしていたが、すぐに

「うん!いっしょにくらす!」と頷いた。

「本当にいい?」

 山内さんが念のためもう一度確認した。

「いいよ。める、おいちゃんだいすきだもん!」

「そっか。ありがとう」

 そう言って芽琉ちゃんの頭を撫でる山内さんの目はちょっとだけ潤んでいたけど、見なかったことにしよう。


 そんなわけで、芽琉ちゃんは山内家に引き取られ、山内芽琉ちゃんになった。


「篠原ー、今日山内と芽琉来るってよー」

 事務所からそんな店長の声が聞こえてきた。

 それから山内さんはちょくちょく芽琉ちゃんを連れて店に遊びに来てくれるようになった。

 そのお陰で芽琉ちゃんが山内さんに引き取られてすぐはどこか落ち込んでいた店長も、もう完全復活をした。

「落ち込んでる店長も面白かったのにな…」

「お前、また心の声がだだ漏れになってるぞ」

 事務所から出てきた店長が呆れたように言った。

「失礼。口が滑りました」

「なぁ、ちょっと最近思ってたんだが…お前、もしかしてわざとか?」

「バレました?」

「バレました?じゃねぇよ!そして、そんな小首かしげて言ってもダメだ!」

「可愛らしくなんて、そんな、店長ヤダー恥ずかしいわー」

「超棒読みしてんじゃねぇ!そして可愛らしくなんて一言も言ってねぇよ!」


 ピンポーンピンポーン♪


「おにーちゃん!おねーちゃん!こんばんは!」

「芽琉ちゃん!こんばんは」

「おぅ」

「うす!兄貴、姉御、こんばんはっす!」

「だから姉御じゃないですってば!山内さんの方が年上ですし!」

「それを言われれば、俺もそうなんだが…」

「それでも関係ありません!兄貴と姉御でいかせてください!」

「何故そこまで頑なに…」

「やっぱり兄貴は兄貴ですし、それなら兄貴の彼女さんなら姉御でしょう!」


「「だから付き合ってないっつーの!」」


 そんな感じで、今日もいつも通り騒がしく仕事が終わっていく。



 ーこの時、もうすでに次の事件が始まっていた事に私は全く気付いていなかった。


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