クレーマー事件簿!?(前編)
「コンビニの仕事ってレジ以外やることないでしょ」とよく言われるが、意外とコンビニ業務はやることが沢山あって忙しい。
まずは掃除。ダスターと呼ばれるク〇ックル〇イパーのドライバージョンみたいなので店の隅々の埃や砂を全てかき集め、そのあとしっかり絞ったモップで隅々までゴシゴシとこすり、窓もクリーナーを使いながら布でピカピカに仕上げる。
これが意外と重労働。
特に私の場合は時間がかかる。
「あぁぁっ!てんちょおおぉ!そこ、今拭いたんですから泥だらけの靴で入ってこないで下さい!!」
「あ?雨降ってんだからしょうがないだろ」
「だからって、店員がソッコー汚してたら掃除した意味ないでしょー!それとも嫌がらせですか!?」
「お、よくわかったな」
「この鬼畜人外店長が!!」
そう、店長が邪魔してくるから。
マジでこの人、人じゃねぇ。
そんなやり取りをみて、もう一人の夕方勤務のアルバイトである榊くん(18歳。マジ天使)がクスクスと笑った。
「榊くん、笑ってないで早くこの鬼畜妖怪オッサンを外に追い出してくれない?追い出してくれたら後でジュース奢ったげるから!」
「はーい!」
言うなり榊くんは鬼畜妖怪(以下略)を外に出すべく鬼畜(以下略)の背中を押し始めた。
「おい、篠原てめぇ、人を鬼畜妖怪オッサン呼ばわりした上に榊に追い出せとか命令した挙げ句、鬼畜(以下略)って面倒臭そうに略してんじゃねぇ!!そして榊、ジュースに釣られて俺を追い出そうとするな!!」
「篠原さーん!僕カルピスでお願いしまーす!」
「りょーかい!」
「無視か!!」
こうして、鬼(以下略)は榊くんの手によって追い出され、このACマートには再び平和が戻ってきた。
めでたし、めでたし♪
「めでたしじゃねぇ!俺は今から面接するんだよ!!」
「鬼再来!?」
「篠原さーん、ここに節分の時のあまりの豆、ありますよー」
「ナイス榊くん!5月だけど季節外れの豆まきしよう!!」
「待て!それを撒けば篠原、お前掃除が余計大変になるぞ!?」
「店長で遊ぶためには掃除も厭いません!」
「てめぇ、本当に捻れた根性してるな!?」
「そんな誉めないで下さいよ。照れちゃいます♪」
「誉めてねぇよ!」
(´∀`)/∥∴∵(゜Д゜)//
さて、まぁ店長で豆まきしたかどうかはさておき。
「え?新しいバイト入るんですか??」
「だから、今からその面接だっつーの」
「え、店長で大丈夫なんですか?」
「心配することはない。俺のこのイケメン顔を見れば大抵の女は頑張ってくれるからな」
「え?イケメン?どこが??」
「てめぇ、ぶっ飛ばすぞ」
「ていうか、その人女の人なんですか?」
「あぁ、河井広美。21歳。名前からして美人」
「へぇー。店長、手を出したらダメですよ」
「出さねぇよ!」
「本当ですかー?」
そんな事を言っていると、
「店長ー!面接の方来られましたよー!!」
「おぅ」
「あ、心配無用でしたねー」
「初めまして!僕、今日面接をお願いした河井です!!」
「男じゃねぇか…」
※人を名前で判断してはいけません。
*******************************************
…それはそんな面接の最中の出来事だった。
「「いらっしゃいませー!!」」
いつものように元気にお客さんに挨拶をした
…のがいけなかったらしい。
「うるっさいわねぇ、大きな声出さないで頂戴!」
入ってきたおばさん(多分50代公判くらい?)にいきなり文句を言われた。
「あ、すみません」
ちょっと煩かったかな?と思い、すぐさま謝った。
…のだが。
「謝って済む問題じゃないでしょ!鼓膜が破れたらどうしてくれんのよ!?」
…はぁ?
何言ってんの、このババァ?
こんな挨拶程度で鼓膜が破れるわけないだろ??
ちなみに私と榊くんの声を合わせても、別に普通のコンビニの店員さんが挨拶をするのとさして変わらない大きさの声で、元気に挨拶をした、と言ってもラーメン屋さんとかみたいに大人数で「へい!らっしゃい!!」って叫んだわけではない。(それでも鼓膜は破れない。そんな話聞いたことない。)
ババァは何かぶつぶつ「あぁ、もうお陰で耳鳴りが止まんないわ」とか言いながら買い物を始めた。
いや、あれで耳鳴りが止まらないって、どんだけ良すぎる耳してんのよ。
何か色んな理不尽さにちょっと腹を立てつつも、榊くんと苦笑いを交わしてから、お互いの作業を始めた。
しかしすぐに、
「何なのよ、このお店は!!」
突如、ババァの悲鳴に似た怒声が聞こえてきた。
どうしたのかとババァの方を見ると、片手にはカゴ。
「何でこんな小さなカゴで買い物しなきゃなんないのよ!」
…………。
はい?
えっと、またちなみになんですけど、うちのカゴはそこらのスーパーに置いてあるカゴとさほど変わらない大きさのカゴなんですが。
あれが小さいって、普段どんだけ大きいカゴで買い物してるんでしょうかねぇ。
そして、私はこの時察した。
あれは、通称クレーマーババァだと。
☆クレーマーババァとは。
その名の通り、クレームばかり言い続けるババァの事である。
それがどれだけ理不尽であっても、店員は問答無用で謝り続けなければならない。
故に、非常にストレスが溜まる超絶鬱陶しいババァの事である。(※個人の見解です)
(類:クレーマージジィ)
そんなクレーマーババァが今目の前に。
私がクレーマーババァに関するいらん解説をしている間も、何かと文句を言っている。
例えば、
何でこの店はこんなに小さいの、とか
(非常に一般的なコンビニのサイズです。)
何でこんな所にでっかい機械置いてあるのよ、回らないといけなくて面倒くさいじゃない、とか
(それはアイスを入れる、通称アイランドという冷凍庫です。それが無ければアイスを入れるとこ無くなります。)
何でおにぎり、キンキンに冷えてないのよ、とか
(おにぎりをキンキンに冷やしたらカチカチになります。キンキンにしたかったらアイランド型冷凍庫へどうぞ。)
とにかく出てくる、出てくる、文句の数々。
どうしたらそこまで文句を言えるのか、教えて欲しいくらいだわ。
いつもニコニコ天使の榊くんもフライヤー室(揚げ物を揚げる為の小部屋)から変なものを見る目でクレーマーババァを見てるよ。
榊くんのあんな顔、何なら初めて見たよ。
いいよ、私が対応するからそこで避難してて。
ひたすら文句を言いながら商品をカゴに入れまくったババァは(文句言ってた割りにめっちゃ買ってんじゃん。)レジにスタスタ歩いてきた。
さぁ、ここからが本当の戦いだ。
榊くん、そこで揚げ物をするフリをしながら、私の勇姿を見たまえ!
この、コンビニ勤務3年の私の勇姿を!!
私の頭の中でホラ貝が鳴り響いた。