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消された少女は復讐を誓いつつ、第三の生活を送りたい!  作者: 米好美緒
少女が消されるまで
9/10

神話終戦祭 4

ルビアがマドレードとドンパチやる少し前

 フィレアは王城の西の廊下をヒュースと歩く。

 取り敢えず屋敷に戻り、公爵家主催の茶会の準備。つまり、仕事をしに帰ろうとしていた。




(ルビアが頑張っている時にこんなことしかできないなんて………)




 ふと、ドレスのポケットが光っていることに気がついた。考え事をしながら歩いていたので、兄との間が開き周りに誰もいなかったのでこっそりと光るものを取り出した





「あれ?これは………ルビアからの緊急用の通信!?………この内容は!」


「フィア、どうしたんだ?何を言ったかよく聞こえなかったんだが」


「………何でもありませんお兄様。ですが今すぐにしないといけないことができました!今すぐにお父様のいる場所を教えててください!」


「でも家に帰って仕事をするんでは……………はぁ………分かった、わかったから」





 ヒュースはフィレアの真剣な眼差しを受けて、仕方なく了承した。そして、渡り廊下から見える王城の窓の1つを指差す。




「ほら、あそこだ」


「ではヒュー兄様、行きましょう!【身体強化】!」


「な、何をしているんだ?姿消しまで使って。お、おいフィア……?」




 フィレアは場所を教えてもらった途端、【身体強化】と姿消しを使った。そしてヒュースの腕をガシっと掴む。




「ふふふふふ。お兄様も来てくださいね」

 



 にこっと笑って、さらに強く腕を掴むとヒュースにも姿消しを使う。ヒュースは【身体強化】をまだしていなかったので「やめろ!」と言ったが、フィレアは王城内を猛ダッシュした。







◇◇◇







「お父様、フィレアです。入ってもよろしいですか? と聞きたいところですが、今はそんな場合ではありません。失礼します!」


「ゲホッ、ゴホ………父上、失礼します」





 ヒュースの顔は真っ青だったが、フィレアとヒュースは無事(?)にイザンの私室にたどり着き、ノックをしてから部屋に入った。



 


「勝手に入ってくるとは………公爵令嬢としての自覚を持てといつも言っているだろう!ヒュースもだ。お前達は何をやっている………」


「申し訳ございません………ゲホッ」




 イザンに怒られた事と【身体強化】なしでフィレアに引っ張られた事を合わせて、ヒュースの顔色はますます青くなる。




「うぅ、ごめんなさい……ってそうではなくてお父様!今すぐに祭りを中止してください!」


「はぁ!?何を言っている!」


(はぁ!?本当にフィアは何を言っているんだ!)





 フィレアの言ったことがあまりにも唐突だったので、イザンは彼らしくない大声をあげる。



「祭りを中止になど出来ない!どれ程多額の資金を使っていると思っている!他国からの貴族や冒険者、商人。最終日だけ中止などあり得るか!何より祭りの鐘はもう鳴っている!」




 ヒュースもそんな気持ちだった。だが、今の状態で口を開ければ父の私室のカーペットが大惨事になる気がしたので、口を押さえる。


 フィレアは焦って言う。




「それでも!祭りを今すぐに中止しなければ民に被害が出てします!マドレード信者達はもう行動し、いつ戦闘が始まるかわかりません!祭りに来ている人々を巻き込み、王都でたくさんの血が流れてしまう可能性が高いのです!しかも今回は貴族が関わっています。今すぐに祭りの中止を!」


「何!?その情報はどこで手に入れたんだ!」


「っ!それは………………それよりも今は祭りを中止して、騎士達を対処に当たらせなければいけません!時間がないのです!」





 思わず口が滑り、ルビアから教えてもらった情報をそのまま言ってしまった。イザンから追及されたが、フィレアはあからさまに話を反らし、祭りの中止を訴えた。




「ゲホッゲホ………はぁ、はぁ……父上!フィアの言及はまた後で、今はマドレード信者の対処を考えなければいけません」



 そこでヒュースがフォローを入れる。ちなみに、ヒュースは自分がフィレアに少し甘いのは自覚している。



「………そうだな、怒鳴ったりしてすまなかった。だがフィア、その情報については後で聞かせてもらおう。私は情報を宰相殿と他の2家にも伝え、家の者も手伝いに回そう」


「私は騎士達を指揮しているダリューク様に抗争の事を伝えに行きます。………最後に、フィア。今から祭りを引っ掻き回せば何とかなるかもしれない。だがこの情報が偽情報だった場合、私達は家の顔に泥を三回ほど重ね塗りすることになる………その情報は本当に信用できるのか?」


「………………お父様、お兄様。私は、この情報を送ってくれた者もこの情報も心の底から120%信頼できます!だから…………この状況になにも出来ない無力な私に代わってどうか……よろしくお願いします」



 フィレアはドレスを手で握り込み、頭を深く下げ、精一杯心を込めて頼む。


 いつも、フィレアは問題が起こったときに自分の出来る限りを尽くす。

 だが今回出来たことは精々二人に情報を伝えただけ。それに実際に、情報を手に入れたのはルビアだ。何も出来ない事がフィレアはとても辛く、悔しかった。





「分かった。しかし、お前は間違っているよフィア。その情報を手に入れたのは誰だか知らないが、私とヒュースにそれを伝え、働きかけたのはお前だ。お前は決して無力ではない。それをよく覚えておきなさい」


「父上の言う通りだフィア。お前には助けられてる。お前は無力でなく、私の愛しの可愛い妹のフィレア・ユーラストだ!いつもありがとうな」



 その言葉から滲み出てきた優しさはフィレアが『優里』が心から欲した、家族の愛。

 生活しているなかで何気なく掛けられる優しい言葉は全て、フィレアの心に刻まれていた。



「っ…………はいっ!こちらこそ、いつもありがとうございます!私は幸せですっ」



(やっぱり。お父様やお兄様は、すごい人ですねっ)



 フィレアは少し涙が出てきてしまった事を隠すかのように、顔を上げ、幸せそうに笑った。



 そして、今貰った言葉は心の奥に深く深く刻んだ。



何があっても忘れないように。



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