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消された少女は復讐を誓いつつ、第三の生活を送りたい!  作者: 米好美緒
少女が消されるまで
7/10

神話終戦祭 2

ルビア側


 祭りの始まりを告げる鐘が鳴ったとき、ルビアは気配を消して狭い路地裏を歩いていた。表通りの賑やかな音や子供の声。


 祭りを楽しんでいる彼らは、これから教会同士の抗争が起こるかもしれない、とは思いもしないだろう。




 この様な路地裏を抗争に使われたら、騎士は阻止しづらくなる。


 騎士が警備しているのは主に表通りや広場のみであり、こんな貧民しか通らない人通りのない道など、普段なら注意を払っただろうが、祭りの今日は見向きもしない。



 今回は特にそういう道が利用される可能性があるのだが、下端の騎士にそれを気づけと言うのも酷だろう。








 ルビアはマドレード教会の塀の裏側にたどり着いた。


 周りに人がいないのを確認し、魔力結界を一部だけ解く為のフィレアから渡された、魔導具を取り出し、魔力を注ぐ。

 しかし、魔力が思っていた以上に消費される。



(闇市で買った物だろうけど………フィアめ、粗悪品をつかまされたな……………)



 3分位かけてやっと結界を解き終わり、【身体強化】をかけて塀に登る。

 そして、塀を踏み台にして二階の開いていた窓に飛び込んだ。


 スキル《無音着地LV6》と《無音移動LV7》を併用し、風魔法も使い、出した音を軽減する。




 姿消しの魔導具も使う。少なくなった魔力を補うため、マジックポーションをイッキ飲みしてから教会の廊下を進んでいく。





◇◇◇





 ルビアが入ったのは教会の南、シスターや神父の部屋が並ぶ廊下だった。


 ルビアに人のプライベートを覗く趣味はないが、一つ一つ針金を使って鍵を開け、中に入って調べる。

 

 しかし、今は祭りの最中だからか、人影は見えない。


(はぁ……収穫は、なしか)



 特に何も出てこなかったので場所を変えようと思い、ちょうどあった階段で一階に降りる。


 ルビアも正面の人が出入りする場所を調べようとは思えず、教会関係者の中でも高位の者しかはいれない区域に入ることにした。

 



 そこからの区域には強固な結界が張ってあり、魔導具で対応できる物ではなかった。だが、運良く、結構高位と思われる年配の顔を隠したシスターが入って行き、その一瞬にルビアも入ることができた。


 力を持つ高位の魔導士の場合、姿消しを見破る事ができたりする。


 なので、入る時に念のため、姿消しの魔導具にたっぷり魔力を注いだせいで、三つ持ってきたマジックポーションのうち、音を消すためにちょくちょく使っていた風魔法で消費させられた分の回復も込めて、二つ目のマジックポーションを飲み干してしまった。



(ふぅ、ここに来てしまった以上。もう後には引けないね)



 どんな物があるか分からないので、ルビアはますます気を引き締め直す。










 立ち入り禁止区域は不気味な雰囲気が漂っていた。まだ昼なに全ての窓は閉じられていて、普通の人間なら時間感覚が鈍っただろう。


 ルビアはしっかり把握していた。まだこの区域に入ってから一時間程度だということを。それでも空気が重く、倍以上の時間が立っているように感じられる。




 前に見える高位シスターは階段を上がって進み、降りて進んでいた。彼女の足音以外、物音1つ聞こえない。




(あの人の足音以外になにも聞こえない……………これはおかしい、彼女は何処に向かっているの?)





 ずっとシスターをつけていて、ルビアも流石に不気味に思い、シスターに対して攻撃するなり、気絶させるといったアクションを取ろうと考えていた。

 そんな時シスターが廊下の角を曲がった。そして、ガタン、と機械的な音が廊下に響いた。




 ルビアの姿は消えているが、念のため即座に近くの柱の影に身を隠す。そして、そっと柱の影から顔を出すとシスターの姿が見えた。



 シスターは曲がってすぐのところにある柱の奥に手を突っ込み、何かをしていた。息を潜めて、待つ。

 


(何をしているの?)



 すると、何処からか足音が聞こえてきた。音の発生源は3つ隣の柱からだった。

 

 



(なっ!この足音は……多い………約100人!?)




 柱の装飾が動き、その奥にあった扉からシスターや男達、神父達が無言で出てきたのだ。しかも、全員武装していた。


 神父やシスターは杖を持ち、平民と見られる男達は騎士のお下がりと見られる中古の剣や弓矢などを持っていた。

 この時点でどこかの貴族が関係していると分かる。




 ルビアは戦力を考える。

 王都に被害を及ぼすならば、充分な戦力だ。

 その上、これだけの人数が今王都にいる騎士や観光に来た冒険者、ルガナ教会の武装信者達と交えたら大変なことになる。平民らしき男達だけなら被害は出るが、なんとかなるだろう。


 

 だが、魔法を使えるシスターや神父は別だ。見たところ、高位のシスターと神父も混じっている。

 彼らが民や観光客を人質に取りでもしたら、騎士や冒険者達も手が出しずらい。それどころか、もっと被害が拡大するだろう。




 すると、高位の神父の一人が感情の入っていない声で声をかけた。





「シスターミネア、ご苦労だった。知っていると思うが、これから私達は分かれて神王の名を偽るルガナの信者粛清に向かう。君も来るといい。共に女神の救済を」


「はい。そうさせていただきますが、ワヘド様。リヤス様より伝言です。我らは先に神罰を与えるのでマドレード様に祈りを捧げに行って良い、とのことです」


「ほう、それはリヤス殿に感謝しよう。それならば、少しの時間、祈りに行こうか」




(何が、共に女神の救済を、だよ!それに…………ワヘド、リヤス?聞いたことがある………確か、無宗教派の高位貴族じゃない!)



 ギリッ、とルビアは歯ぎりする。ルビアにとってこの状況は予想以上にまずい。仮に、今ルビアが飛び出し、奇襲が成功しても100人のうち10人倒せればいい方だ。



(この狂信者共以外に先に行動している信者集団があるなら、こちらを倒しても意味がない!それに……………)



 ルビアはテイマーだ。今は元暗殺者として行動しているが、一番ポテンシャルが発揮されるのは魔物を連れたとき。

 魔物は許可なく教会内部に入ると警報が鳴るので、外に置いてこなければならなかったのだ。


 ルビアはその事を恨めしく思いつつ、もし連れていても返り討ちにされていたと分かっているので、どちらにしろここで付いていくか、戻るか選択を余儀なくされていただろうと考える。




 一応、フィレアに連絡を取れる手段はあるが、それでは伝えられる情報が少ない上に、ここからの距離では魔力が確実に感知されるので使えない。現在ルビアはその理由で姿消しの魔導具も使えず、スキルのみを使用して隠れている。





「そうですね、その前に祈りを捧げに行きましょう。終わりの鐘が鳴るまでは、まだまだ時間がありますし」


「では、行くか」





 信者集団が動きだし、どこかに祈りにいこうとする。ルビアはフィレア達を信じることにして、信者集団に付いていくことにした。


 その一歩を踏み出ーーー





ガダッ




「えっ?」





     ーーーした


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