とある歯車が崩れた
「すぅ………………んぅ……」
薄暗い洞窟。そこには絶世の美女がいた。冷たい石の寝台の上に白く薄い布を纏った女性。寝台の下へ流れる長い桃色の髪、その呼吸で豊かな胸が上下する。
洞窟の隙間から光が差し込み、白い肌を晒している。動くものはなにもない、神秘的な光景。
だが、そこには異物があった。胸から生えた黒い剣。それは彼女を地に縫い止めている封印の様な雰囲気がある。
「んぅ……………はぁ……………………ん」
身動ぎをする。日の光がますます強くなり、ついに彼女は目を開ける。
「ああ、静かね」
声は枯れていない。回りの埃の被り具合から、彼女がこの寝台にいた時間は短くない。だが、彼女の美しい声は洞窟に響く。そして自分の胸から生えた黒い剣を掴み、引き抜く。
何故か、血はでない。
からん、と剣は床に落ち、彼女は顔を上げる。
「やってくれたわね、ルガナ」
その顔は先程までの美しい顔とは思えないほど、醜く歪み、
「まあ、いいわ。あなたが戻ってくるまで、
私はーーー
ーーーーーー遊んで待ってるわ」
少女のように嗤っていた。