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龍に育てられた兄妹は龍に教えられた術で世界を謳歌するそうです  作者: 欲しい灯油
序章 『龍』に育てられた兄妹
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7話 母さんとの模擬戦

お待たせしました!投稿再開します!

  「ふっ!ふっ!ふっ!」


  アルクールの森の中腹辺りに存在するシア特製の訓練場。そこに規則的な呼吸音とヒュ!という風切り音が木霊する。


  その音を発生させている張本人であるレインは愛刀である木刀を振り、型の確認をしていた。


  今や、アルクールの森の生物ではレインに勝利する事は愚か、傷一つ与える事も出来ない程レインは強くなっており、その剣の技量はこの世界『アスフィア』でも指折りのものとなっていた。少なからずともこのアルクールの森が存在する王国『レイギス王国』では一、二を争う程だろう。


  そんなレインの鍛錬をじっと見つめる影が二つ。


  一つは緩りとした丈の短いワンピースにホットパンツの少女。するりとした純白の脚には黒いニーハイソックスが履かれており、ホットパンツとニーハイソックスの間は見事な()()()()を作り出している。


  白く透き通った肌に黒いニーハイソックスを身につけた姿は扇情的で()という生物に劣情を抱かせる程美しい影。


  もう一つはだらりと肩の出された黒を基調とする中に白のラインの入った丈の長い羽織りを腰上から朱色の帯で巻き止める、日本で言うところの『和服』に似た格好をした少し背の高い女性。


  だらりと露出された肩とそこから流れる様に視線を奪うであろう豊満な双丘は緩りとした格好からか際どい程露わになっており、今にも零れ落ちそうである。 そんな()()()()を全て兼ね備えた影。


  そんな見る者全てを魅了する美女、美少女のシアとルーナは熱に浮かされた様にポーっと視線をレインに釘付けていた。



  「はぁ、普段はあんなに愛らしいのに剣を降る姿はなんであんなに凛々しいのかしらねぇ…」

  「はふぅ、ほんとですぅ。お兄さまは剣を握ると人が変わりますよねぇ~」

  「そうねぇ、技術面で言っても、太刀筋を綺麗だし、何より姿勢がいいのよ。剣の道を歩む者ならあの姿を見ただけで格の違いを理解せざるを得ないわ」

  「お母さまがそこまで言う程なのですねぇ~。確かに剣のわからないルーナが見てもすごく綺麗だと思いますぅ~」

  「 「あぁ、濡れちゃう(わ~♡) (ますぅ~♡)」」



  普段ならいつ如何なる時も剣を振るう場合は気が他に飛ぶ事は無いのだが、二人からの熱に浮かされた中に獲物を狙う野獣のような鋭い視線を感じるレインは流石に耐えきれなくなったのか、木刀を収めるとそんな視線を送ってくるシアとルーナの所へ向かって行った。


  「二人とも、さっきからちらちら視線を感じるんだけどどうした?」

  「「っ!?」」

  「なんでもない(わよ~) (ですぅ~)」


  レインに話しかけられたルーナとシアは少しばかりビクリと体を震わせたが、何事も無かったように返事を返した。


  あからさまに動揺した二人であったが、そこに意味を見出す事の出来なかったレインは「ま、気にする事でも無いか」と、少し鬱陶しい視線を無視して再び鍛錬を始める。



  すると何かを思いついたのかシアが「あっ!!」と声を上げた。


  「「どうかしたの?」」


  急に声を上げたシアに視線を向けたレインとルーナは何を思いついたのか凄いドヤ顔をするシアに疑問を投げかけた。


  シアはその視線を「待ってました!」とばかりに嬉嬉として受け止めると「ふ、ふ、ふ…」と怪しげな声を上げながら考えついた()()を高々と声にした。



  「レイン!私と模擬戦をしなさい!」

 

 

  「「ん?」」


 

  レインとルーナはシアの発した言葉の意味が理解出来ずきょとんとしてしまう。


  そんな二人を見てシアはやれやれと肩を竦める演技じみた仕草をすると自分の発した言葉の真意を話し始めた――






 ◇◇◇


  「――と、いう事でレインはお母さんと模擬戦をするって訳。いい?」


  シアは二人に"模擬戦"を行う理由を問われ、その理由を答えた。



  曰く、レインの実力をシアが知るため。

  また、これから話すことになるであろう()()()()()と、その話の中で出てくる"ある力"への適性と耐性見るため。

 

  その三つを検査する為らしい。ただ一番の理由はレインの鍛錬を見て、剣士の血が滾ったが故だろうが、恥ずかしいのでそれは話してはいない……。



  以上の三つの検査を踏まえた"模擬戦"を行うとシアはレインに話した。


  「ふむ、()()()()()()は気になるし、その"ある力"とやらも非常に興味深いけれど、確かに俺も小さい頃しか母さんと剣を打ち合った事無かったし、面白そうだからいいよ」

  「ふふ、貴方ならそういうと思ったわ。流石私の息子、根っからの剣士ね」



  シアから話された模擬戦の意図の中に気になるワードはあったが、それよりも昔稽古を付けてもらっていた師匠との模擬戦など剣士として心踊らない訳はなく、また何より母親に自分の強くなった所を見てほしいという実に年頃の少年らしい理由から模擬戦の承諾をレインは受けた。


  そんなレインの快い返事に嬉しく思いつつ、その実に剣士らしい姿勢に感嘆と微笑ましい気持ちを抱くと、スっと目を細めて()()から()()としてのシアになる。



  「!? 母さんやる気充分みたいだね」



  雰囲気が普段のシアから()()としてのシアになった事を感じ取ったレインはその体から発せられる気迫に少したじろぐが、すぐにシアの本気を感じ取って、自分も臨戦態勢に入る。


  「ええ、息子だからって手加減はしないわ。それは貴方への失礼になるしね」

  「じゃあ、ルーナが審判をしますぅ~」



  二人のやり取りをじっと聞いていたルーナは模擬戦なら審判が必要だと名乗りをあげる。


  「それじゃあ、ルーナにお願いするわね」

  「よろしく頼むよ、ルーナ」



  自ら審判を勝手でたルーナに声をかけると、レインとシアは互いに距離を取り合い、訓練場の端へと向かう。


  このシアお手製の訓練場はシアの魔法による結界が張られており、直径三キロメートル程のドームになっている。


  しかし、使用者一人が発動可能な結界が最大でも直径五百メートルと言われている事からその大きさは以上で、もし同じ規模の結界を張ろうものなら最上級の魔術師が十人は必要と考えられるので、その結界を一人で貼ることの可能なシアの異常さが殊更良くわかる。



  そんなシアの創り出した結界にしんとした静寂が訪れる。


  聞こえるのは三人の呼吸音と僅かな魔力の胎動。


  張り詰めた空気の中、シアが口火を切った。


  「ところでレイン。貴方はその木刀でいいの?」

  「ん?あぁ、これが一番使い慣れてるからね。そういう母さんはどうするの? 剣なんて持ってた?」

  「いいえ、持ってないわよ。けど私には()()があるから」



  そう言うとシアは右手に魔力を収束する。すると魔力が具現化し、黒光りする反りの入った”刀”が現れた。

  しかし、その刀身を守る為の鞘は存在せず、刀が抜き身になっている。


  「へぇ、そんなことが出来るんだ」



  レインは目の前で武器が生み出された事に衝撃と感動を覚える。


  そんなキラキラとしたレインの眼差しを受け、少し恥ずかしそうにしながら自分の成した現象についてシアは説明を始める。



  「これは魔力による武具。私のオリジナル魔法の一つよ。私は【魔具生成】と読んでいるわ。

  色々と種類があるのだけど、今回はその中でも風の魔力を刀状に固定した『黒嵐(クロノアラシ)』という魔具。風の魔力で鎌鼬を飛ばすことや、一時的に切れ味を引き上げる事も可能という優れものだけど魔力で出来てる分、発動してるだけで魔力を消費してしまうっていうデメリットもあるのよ」



  この【魔具生成】には二つの大きな能力がある。


  一つは魔力による武具の具現化。


  もう一つは生成する際に使用した魔力の特性を生成した武具に付与できる事。


  故にバリエーションがとても豊富だ。形状は作り出す際にイメージした形状にする事が出来るので、豊富な武器種からその場にあった魔力を付与できるという正に適材適所で自らの武具を生み出せるのだ。


  しかし、その能力にもデメリットが存在し、作り出す際にしたイメージが複雑ならば複雑な程、消費する魔力も大きく、また魔力を収束して武具として具現化する為かなりの繊細な魔力操作を必要とするのだ。

 

  現状、この魔法を使用できるのは発案者のシアしかいないだろう。それは圧倒的な魔法のセンスを持つレインやルーナを以てしても不可能である。



  そんなシアの【魔具生成】を目の当たりにしたレインは、自身にも魔法の才能がある為この魔法の複雑さを一目見ただけで理解していた。


  そして、それを成した"母"であり"師"でもあるシアに尊敬の念を抱いていた。



  (はは、流石母さん。でも、今回負ける気は毛頭ないからね)



  心の中で自らの決意を固めると強く愛刀を握りしめ中断の構えをとる。



  「双方、準備はいいですね?」

  「あぁ、問題ない」

  「えぇ、いつでもいいわよ」

  「……それでは試合開始!!」




  今、親子であり、師弟でもあるレインとシアの模擬戦の幕が切って落とされた…。


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