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縁の下ソルジャーズ緊急出動!  作者: 宗谷 圭
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 初瀬誠がこの職に就いたのは、そもそもがピンクの世良桃子に憧れたからだった。

 共に戦いたいと思った。少しでも憧れの人の近くにいたいと。僅かでも力になって、支える事ができれば、と。

 だが、共に戦うには致命的な弱点が誠にはあった。極度の運動音痴なのである。

 レッドの中花は病弱だが、元気な時にはその病弱さによる役に立たなさを補って余りあるほどの強さを誇る。体調を崩している時だって、少々具合が悪い程度であれば、無理をして戦う事もできる。

 だが、誠はベストコンディションの時でも、怪人と戦うなどという事はできない。具合が悪い時は無理をしても能率が悪く、結局寝ていた方がマシである。

 何もしなければ、誠は病弱な中花よりも弱く、役に立たない人間なのだ。

 だから、必死で学んだ。学んで技術を習得し、技術課に所属できるよう、何年も努力を重ねた。

 現場で共に戦えないのであれば、技術面で支えよう。彼女を守る防具を作り、彼女の刃となる武器を作り、彼女の代わりに巨大な敵と戦うロボットを作ろう。

 壊れたら直す。それまでの武器で太刀打ちできない敵が現れたら、寝る時間も惜しんで新たな武器を開発する。

 それが延いては、彼女を支える事になるはずだ。そう信じて学び、技術を磨き、採用試験に臨んだ。

 結果は、めでたく採用。これで彼女を支える事ができる! 採用通知が来た日に、誠はそう、喜んだ。

 だが、世の中はそう都合よくはできていない。誠が採用されたのはたしかに技術班であり、技術者として求められての事だった。しかし、配属されたのは壊れた街を復興する技術四班だったのである。

 立派な仕事だとは思う。無くてはならない仕事で、街の人々からすれば技術班の中では他のどこよりも必要な班だとは思う。

 だが、違う。そうじゃない。そういう事じゃないんだ。この班に配属された事自体は非常に誇らしいが、所属したかったのは技術一班か、技術二班だったんだ。

 それを、歓迎会でつい痛飲してしまった故に口にしてしまった。志望動機も、本当は技術一班か二班に所属したかった事も。

 そのため、誠が世良に憧れを抱いている事は、技術四班の人間全員が知っているし、どこから漏れたのか他の技術班員も一部は知っている。そして戦士達も世良以外には知れ渡っている。

 本当は技術一班か二班に所属したかっただの、志望動機は憧れの女性がいるからだの。普通なら嫌悪感を抱く人間もいそうなものだが、いつも修羅場になっているこの職場。今時珍しいかもしれない純粋な恋愛感情に逆に好感を持ったのか。皆、今ではすっかり良い酒の肴……否、応援すべき対象として誠の事を見守っている。

 しかし、悲しいかな。当の世良が、ちっとも誠の気持ちに気付かない。技術四班に配属され、言葉を交わすようになってまだ数ヶ月。誠も世良にぐいぐいと迫っていくような度胸は無い。気持ちに気付いてもらえないのも、当然と言えば当然か。

 こうして、気持ちを伝える事ができぬまま、時ばかりが無情に過ぎていく。

 世良は誠の想いに気付かぬまま怪人達と戦い続け、誠は日々悶々としながら、破壊された街の復興に勤しむのだった。

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