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初めての町とドラララ

 「おお…すげぇな」


 透は今町に来ていた。


 写真やテレビなどで見たことがあるドイツの田舎町の様な町並み。街道には色鮮やかな花や針葉樹が綺麗に立ち並び、空気がとても澄みきっていて歩いていてとても気分がいい。


 「……おい、チンタラ歩いてんじゃねーぞ。」


 エイダはその逆の様だが……。


 スピカが閃いたそれは透を『おつかい』に行かせようという案だった。それもエイダと一緒に。


 思惑としてはエイダとの仲を良好にさせようという魂胆(こんたん)だろうが現実はそう上手くいかない。


 ――何故なら


「……あの、エイダさん?」


 「あ゛あ゛?」


 「ふひぃ……」


 ご覧のとおりの様である。


 気の強い、しかも機嫌が悪いエイダとコミュ症な上にヒキオタである透の相性は最悪でまさに『水と油』いや『水と燃えカス』だ。


 そんな二人が仲良くお買い物などできるはずもなく。


 「っチ」


 誰に向けてかはわからないが舌打ちをしてからエイダはズンズン先へ進む。


 「ちょっ!ちょっと待って!」



 それを斜め後ろから小走りで追いかける透。


 「んだよ。さっきからうるせーな。」


 「いや、ちょっと歩くの速いんだって、もう少しゆっくり……」


 「お前があたしに合わせろよ。」


 「いや、合わせられないからいってんだろーが!このクソおん」


 「あ゛あ゛ん?」


 「うへへ…ごめんなさい…。」

 


 こんなやりとりが数回続いた後ようやく町の商店街らしきエリアにたどり着く。

 ここは町の中心に位置しておりロータリーのような円状の広間に店が並んでいて町の住人や旅人らしき風貌の人物、さらには西洋風の鎧を纏った人などで賑わっていた。


「さてと、ちゃっちゃと買い物済ませるかー。」


 「あのー買い物ってなに買うんすかね?」


 道中のやり取りで二人の間に上下関係が生まれたのか完全にした下手(したで)になる透。


 「なにって、えっとな、まずお前の服だろ。んでお前の装備に…。あ、後お前が来たからその分の追加の食料を……。って全部お前のモンばっかりじゃねーか!」


 「何かすいませんね自分の物ばっかりで。」


 「ほんとだよ。ったく何であたしまでこんな奴の買い物なんかに付き合わなきゃなんねーんだよ。」


 「ほんと恐縮です……。」


 「それによぉ丸腰って時点でおかしいだろ。……服もダサいしよぉ。」


 「あ゛?」


 ――ここで今まで下手に出でいた透が切れた。


 自分を馬鹿にされたからではない。自分の『服』を馬鹿にされたことに怒っているのだ。

 透はヒキオタ。友達がいない分彼にとって自分の『物』の愛着というのは世間一般でいう友情や愛情に近いそれがある。


 故に彼は切れたのである!頭がプッツンきたのである!


 「てめぇ、今俺の服装なんつったぁ?」


 「あ?だからよくもまぁそんなヨボヨボの服なんかきて町歩けるなっていったんだよ。」


 「ドラァ!」


 透の右拳がエイダ目掛けて放たれた。

 しかしヒキオタの軟弱な拳が到達する前にエイダは無駄の無い俊敏な動きで一気に透の背後へ。

 そして腰に手をとり短剣を抜きそれを人間の急所である首下にかざした。


 ――そして。


 「次妙な真似したらそのひょろい首切り裂いてやるからな。」


 「ふえぇぇ。」


 こうして二人の上下関係がはっきりしたところで楽しいショッピングが始まるのであった。 

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