転移早々縛りプレイってなんなん?
謎の女の子とベットで鉢合わせ数分、現在の透の状況はと言うと。
「――で、お前は一体誰なんだ?何が目的であたしのベットに潜り込んでた?」
女の子が透に気づき叫んだ後、思い切りグーパンチを受けて透は気絶。次に目を覚ましたときにはリビングのような場所でこうなっていた。
「だから俺だって訳わかんねーんだって!起きたら急に知らないところの知らないベットで知らない女がパンツ一丁で…」
「あ゛あ゛?良く聞こえねーんだけど?」
「ひぇ…」
みっともなく短い悲鳴を上げる透。彼は完全にパニックに陥っていた。朝起きたら知らない所にいた、というのもあるが普段人と話さない事に加えて異性と話している。それだけでも高難易度。その上相手が高圧的な態度なのでビビッていた。
「あらぁエイダちゃん朝から大声出してどうしたの?」
「むにゃむにゃ…朝から元気だねぇ」
ドア越しから女の子二人の声と階段を降りる音が聞こえてくる。そしてドアを開け部屋に入ってきた。
一人はスタイルのいい長身で透より淡い茶色のカールががった髪型、もう一人は銀髪でフードを被っていてどこか眠たそうな顔をしている。
「いやそれが、あたしが朝起きたらこいつがベットに潜り込んででさ、とりあえず一発ぶん殴って縛り上げて今尋問してるとこなんだけど。」
「ほほぉ…怪しいですなぁ…もしかして泥棒?」
「『盗賊』のアジトに泥棒なんて、随分威勢がいいわね。」
三人が疑心と興味の視線で透を見つめる。
「違う!俺は決して泥棒なんかじゃねーよ!それに今なんつった?盗賊?どゆこと?」
不慣れな女の子が三人に増えてますます困惑する透。しかも泥棒に間違えられている上に盗賊などと物騒なワードまで出てきてますます状況悪化している気がする。
エロゲの選択肢や変な妄想でしか活用しなかった脳みそを使ってこの場面をどう切り抜けようか考えるが某少年探偵のような閃きがそう簡単に思いつくこなどなくただ時間だけが過ぎていく。
「チッこのままじゃ埒があかねーな。」
先ほど長身の女の子にエイダと呼ばれてた子が軽く舌打ちをしてから腰に手を当てる。そして何かを取り出したかと思えばダガーやナイフなどと言われる所謂短剣を取り出した。
短剣といっても日本の法律では完全にアウトな品物だ。
「えっと、それでどうなさるおつもりで?」
「大丈夫。白状すれば痛くはしねーから。」
短剣を構えジリジリと詰め寄るエイダ。
「いや!危ねーから!ちょっと誰かこいつ止めて!」
悲痛な叫びも空しく長身の女の子は微笑ましい物でも見ているかの眼差しで見物し銀髪の子にいたってはこれから起こる事に興味津々で目を爛々とさせている。
もう駄目だ、お終いだ。親父、お袋ごめんな。
恩返しもろくに出来なかった両親に心の中で別れを告げギュッと目を瞑り覚悟を決める。
――その時、その一瞬だった。
『――右のポケットだよ。』
何処からか声聞こえてきた。それに聞き覚えはなかったが優しい声だった。
「右!右のポケット!」
「ああん?」
「だから右のポケットだよ!それを確認すればわかるから!」
幻聴かもしれない先ほどの言葉。しかし透はそれに賭けた。
「右ポケットだぁ?……おいスピカちょっと漁ってみ。」
「らじゃー。」
スピカと呼ばれた銀髪の女の子が気のない返事と敬礼をして透に近づく。
そしてぺたぺたと透のズボンを触ってから右ポケットに手を突っ込み物色。
――するとそこには。
「何かはっけーん!」
スピカが手に掲げているのは丁寧に二つ折りされた紙。勿論身に覚えがないものだ。
「どれどれ。」
スピカから紙を受け取ったエイダが紙を広げる。透けて何か字が書いてあることがわかった。
「ええっと『こいつは今日からうちの団に入るから宜しく頼む。 ボスより』……ってはああああああ!?」
「え?ええぇぇ!?」
――こうして透は盗賊団の仲間になった。