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作戦会議

 あらかた硫黄臭も収まり、床も綺麗になったところで夕食をとることにした。


 「はぁい、今日は新鮮なデストロイドメタルキノコよぉ。」


 テーブルに並べられたのは昼間山菜屋で購入した傘が毒々しいキノコが精肉店で買い揃えた肉との炒め物だ。


 「うわぁ、カラフルだなぁ。」


 見た目がアメリカや原宿などで出てきそうな着色料たっぷりのスイーツのようだ。


 口に入れることに若干戸惑っているも周りは皆なんの違和感もなくパクパク食べ始めているようなので透も恐る恐る口に運んでみる。


 「ん!?これは!?」


 意外にいける!?と言うよりも美味しい。


 キノコの風味だけでも美味しさ十分だが店主がいっていた通り噛めば噛むほど粘り気が出てきてそれが癖になる。うむ、ご飯が進む。


 意外にも美味しかったキノコに舌鼓を打ち、異世界の味覚を堪能した。


 夕食後、綺麗に片付いたテーブルにはバサっと一枚の大きな紙が広げられる。

 四人はその紙をまじまじと眺める。


 「これがウ゛ォルザーク邸かぁ。改めて見ると広いな。」


 そう、その紙は今回のターゲットであるウ゛ォルザーク領の領邸の見取り図だ。


 それにスピカが何かを書き足していく。


 「これが守衛の配置だよ。」


 前回、偵察に行ったときに見た配置通り、前門に二人、壁周辺に一辺につき大体二人か三人。そして中央の噴水周辺にはポツポツと黒のマークがある。


 「中々の警備体制じゃねーか。」


 「そうねぇ。結構厳しそうだわぁ。」


 エイダとカトレアがそんな事をポツリと呟く。だがその目にはやる気に満ちていた。


 こうして作戦会議が進む。が、透は話にイマイチついていけず。

 そもそもの話、透は作戦決行においての根本的な所を聞いていない。


 それは。


 「なぁ、話を遮って悪いし、とても今更なんだが俺たちは何を盗みにいくんだ?」


 そう、盗賊といったら金銭やらお宝やらを盗むのだと思うが、話の成り行きで盗賊になり今に至るので肝心なその話を聞きそびれていた。


 その発言に他の三人は目を丸くする。


 「はぁっ!?お前聞かされてなかったのか!?」


 エイダが顔に手をやり完全に呆れ顔だ。


 「いや、すまん。っていうかお前らが教えてくれなかったんじゃねーか!」


 「あらあら、てっきりボスから話は聞いていると思ってたから。それは悪いことをしたわぁ。」


 カトレアがごめんなさいねと付け加えて謝ってくる。


 「別に謝んなくてもいいけど、誰か説明してくんないか?」


 そういうとスピカがはいはーいと手を挙げてから。


 「私達は『聖具(せいぐ)』を集めてるんだよ。」


 「聖具?」


 聖具とは……。この世界の創造神『スリーズ・テレンス』が世界を創世するために使用したと言われる道具の事だ。


 「それで、今回狙うのは『聖剣(ホーリーセイバー)』。なんでもその一振りで大地を裂いて海と陸地を造ったとか。」


 「ほほぅ、聖剣ねぇ。」


 「まぁ私も本当に大地を斬れるとは思ってないけどねぇ。」


 今回は聖剣を強奪ということだそうだが、急に聖剣だとか創造神だとかファンタジー感をだされても困るのだが。


 奪取するものはわかった。だが、わかったところでもう一つの疑問が出てくる。


 「盗んだ後で、その……聖剣とやらはどうするんだ?」


 質屋にでも売り飛ばすのか、それとも実際に戦闘にでも使用するのであろうか。


 「いや、ただ盗んで保管しとくだけだぜ。」


 「え?」


 「だから、ただ倉庫に入れておくだけ。あたし達は聖具を保管するのと、忍び込んだ屋敷からちょっとばかり金貨を頂くのが主な仕事だからな。」


 エイダがぶっきら棒にそう答える。


 「えっ?まじで?俺はてっきり金目のものだから狙ってるのかと。保管してどうすんだよ。」


 「そんなんあたしが知るかよ。ボスがそういう目的で作ったんだからな。」


 ボスという人物は相当な変わり者なのだろう。命を落としかねないこの職業でこんなことをしているなんて。


 と、いうよりも。


 「……お前ら変わり者だな。」


 その変わり者と一緒に盗賊なんかしている三人も変わり者だ。


 皮肉気味にそういうと三人は顔を合わせて、それから笑った。


 「……それじゃあ改めてなんだけど作戦をおさらいするから、よぉーく聞いててね。」


 こほんとカトレアが一つ間を置いてから今作戦の概要を話す。



 

 「……以上よ。トオル君、何か質問はある?」


 「あるっつうか大有りだよ!」


 真剣に聞いていたがどうにも解せない、解せないのである。


 「ほんとに大丈夫か?この作戦?」


 「いいじゃねぇか、こういうシンプルなの好きだぜあたしは。」


 「同じく意義なーし。」


 透は文句ありげだが他の二人はないようだ。寧ろエイダに至っては目をギラギラと光らせやる気満々の様子。


 「……特に問題ないみたいだからこれでお開きにしましょうか。決行は明日だから皆ゆっくり休んでね。」


 パタリと地図を閉じてそのまま自室に向かうカトレア。それに続いてエイダ、スピカも戻っていった。


 ポツンと一人リビングに残った透。ドっと椅子の背もたれに持たれかけて腕で顔を覆った。


 「本当に大丈夫かよ。」


 不安が残るがここまできたらやるしかない。自分に言い聞かせて透も今日の疲れを癒すため自室に戻った。


 こうして作戦会議は終了し、決行の夜を迎えるのであった。

次回からいよいよウ゛ォルザーク邸に突入します!おたのしみに!

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