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第1章 9 闇属性の人間

「ギルドが見えた!」


俺はミランダをお姫様抱っこで町中を駆け抜ける。多少目立っても仕方ない。ミランダの命の方が大事。


「メアリーさん!」


「スバル様、お帰りな……」


「ミランダがヴァンパイアに襲われて怪我しました! 血魔法の治療してください!」


「「「「ヴァンパイア!?」」」」


 俺はギルドに入る。メアリーさんが俺達の格好を見て固まった。そういえば、血魔法とかで血まみれだった。俺は初心者ダンジョンで起こった出来事を伝えると、ギルド中がパニックになった!


「す、スバル様も血魔法の跡が!」


「あ、俺は闇属性なので多少は大丈夫です」


「「「「闇属性!?」」」」」


 メアリーさんは血魔法が俺にも影響があるのに気付く。普通の人間だと血魔法で命を落とすけど、俺の場合ギリギリ大丈夫。それでも、メアリーさん含めてギルド中が再び驚いている。闇属性の人間ってめったにいないからね。


「聞きたいことはたくさんあるけど、まずは怪我人の手当てからよ!」


「ギルドマスターに緊急報告! 各ギルドにも伝えなさい!」


「あ……れ……?」


「スバル様!? ミランダ!? しっかりして下さい!」


 俺はギルド中が忙しくなるなか、意識が朦朧とし始める。ホッとしたみたいなのか、ミランダを抱えたまま倒れた。最後にメアリーさんが焦った顔をして駆け寄って来たのが見えた。





『ここまで来たら大丈夫、お疲れ様です。もう安心して休んでくださいね』


 優しい女の人の声が、はっきりと聞こえる。そしたら、俺の意識は眠りについた。





「ここは……」


「スバル様、お気付きになりましたか。ミランダ様もご無事ですよ」


「良かった~」


 俺は目を覚ますと、仰向けで寝ていた。周りを見ると白いベットばかりで病室だと直ぐに気付く。前世で嫌というほど見てきたからね。メアリーさんが近くにいて俺が目覚めたのに気が付いたみたい。隣のベットにはミランダが眠っていて、お互い無事だった。メアリーさんによると、俺は1日中眠っていたようだ。


「スバル様、こちらを納めください」


「これは?」


「魔物の目撃情報代です。今回はヴァンパイアという世界レベルの目撃情報のため、異例の金額です。血魔法という跡が何よりの証拠でした、血魔法はヴァンパイアのみ使用出来る魔法ですから」


「ありがとうございます。あの、初心者ダンジョンの件は……」


 メアリーさんが黒いカバンを俺に渡した。中身を見てみると、お金がいっぱいに入っている。余りの多さにびっくりしていると、メアリーさんが説明してくれた。ヴァンパイアは500年前に滅んだとされる知性のある魔族、その魔物が生きていたというだけで危険度は世界レベル。何故ならヴァンパイアは、遥か昔に魔物の国を造って人間と戦争したことがあるぐらい、脅威のある魔族。


「しばらく閉鎖してダンジョン調査ですね。ヴァンパイアが何をしていたのか怪しいですから」


「また挑戦します」


「申し訳ありません。スバル様パーティーの実力はD級に相応しいのは、私達ギルドは認めています。調査が終わり次第、1番にお伝えしますね」


「ありがとうございます、メアリーさん」


 冒険者ギルドはヴァンパイア目撃を世界中に報告。目撃された場所である初心者ダンジョンは閉鎖。D級への昇格試験の代わりは簡単には用意出来ないらしく、しばらくはE級で頑張ろう。ヴァンパイアが初心者ダンジョンで何をしていたのか、目撃者の俺達も戦闘しかしていないため、詳しい情報は無い。もやもやする気持ちはあるけど、ギルドからD級扱いされているのは嬉しかった。これからわくわくするぜ。





「本当にごめん! 油断していたよ。ミランダを怪我させることも無かった」


「マスターは悪くない。むしろ、私が謝ねばならない。私を買ってくれた夜も襲われると構えていた。今まで私を買った連中は身体ばかり目当てで迫ってきた。マスターを全く信用していなかった」


「ミランダ……」


「だが、マスターは私に優しかった。ちゃんと武器を買ってくれたり、パーティーの強さを確認するために決闘してお互いに理解。ヴァンパイアとの戦いで私を庇い、一緒に生還した。素晴らしいマスターだ」


「あ、ありがとう。これからよろしく、ミランダ」


「ああ、よろしくスバル」


 俺達はギルド専用医療施設から1週間で退院。ミランダの血魔法はダークエルフの加護によってギリギリ治療が間に合った。俺の場合は闇属性で耐性があるために無事。もしも他属性だったら、血魔法が継続的に身体を蝕み、命の落とす危険があった。闇の女神コスモス様に感謝。

 宿屋『満腹亭』に戻る。おばちゃんはギルドから説明を聞いていたらしく、夕食は退院祝いで豪華だった。夕食が終わって、俺はミランダから全てを打ち明けられた。やっぱり、俺は警戒されていたね。だけど、俺と一緒に過ごして認めてくれたようだ。やっと、名前も呼んでくれた。今夜は久し振りに病室のベットじゃない、良い気分で眠れそう。





「ミランダ、その……」


「どうした、スバル?」


「……近すぎない?」


 夜。満天の星空を見ながら、いつものようにベットで寝る俺。ただ、いつもと違うのは寝る位置がベットの真ん中。そして、端っこで寝ていたミランダは俺にくっついている。すごく良い匂いや何か柔らかい物が当たっています。ヤバいです。


「スバルは私を助けてくれた。今も胸の鼓動が止まらない、ドキドキしている」


「その胸が……」


「当てている」


「とても嬉しいけど、養えるお金が無いよ。俺だって必死に我慢しているのに……」


 ミランダがデレデレになっちゃった。めちゃくちゃ恥ずかしいよー。前世も含めて恋愛なんかしたことないし、ライトノベルの知識しか無いし! とにかく、えっちな事はまだ駄目! ヴァンパイア目撃情報報酬は、今後の冒険での武装、宿屋に払う、血魔法の治療代で多くは残らないと考える。多少の余裕があっても精々3ヶ月ぐらい。今後の生活もあるから、えっちな事はまだ駄目! 大事なことだから2回言った!


「す、すまない」


「ち、ちゃんと余裕が出来たら考えるから、しばらくはお預け。い、良いね!」


「分かった。だが……」





 ちゅっ。





「ほへ?」


「き、今までのお礼だ。そ、それから一緒に寝ることは止めないからな。おやすみ」


「おやすみ……」


 ほっぺにちゅー。ミランダは顔を背けて寝てしまったけど、耳が真っ赤。きっとミランダの顔は真っ赤だろうね、何故なら俺はそれ以上に真っ赤だからね。今日、俺は眠れないね。ヴァンパイアのことを考えながら興奮を抑えていこう。





「ヴァンパイアかー。俺も強くならないと。闇属性の戦い方を教えてくれたじいちゃんに会いたいけど、どこにいるのかな?」


 ミランダが戦って勝ったタンザナイト、俺達を見逃してくれたルビー。ヴァンパイアという脅威。強くなるために、父さんに内緒で、俺に闇属性と必殺技を教えてくれたじいちゃんに会いたい。伝説の勇者がヴァンパイアの王様を討伐して、ちょうど500年が経とうとしている。再び、ヴァンパイアが動き始めているかもしれないな。俺は満天の星空を眺めながら、これからのことを考えて眠るのであった。

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