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第1章 6 スバルVSミランダ

「ミランダ、お願いがある」


 暗黒騎士の槍を購入した翌日。採取依頼をしている俺は、ミランダを連れて東の森に来ている。今日の採取は薬草。正午までに集めることが出来て期限の日没には時間があった。そこで俺はあることを考えてみた。


「マスター、普通は奴隷に対してお願いなど言わないぞ。命令すれば良い」


「分かった。じゃあ、俺と戦ってほしい」


「………………は?」


 俺の言葉にぽかんとするミランダ。そんな顔も出来たのね。ちょっと可愛かった、新しい一面が見れた。


「ミランダがどのくらい強いか知りたいし、俺の実力も知ってもらいたい」


「かなりの自信だな。さぞかし魔物を狩ってきたのか?」


「いや、全然」


「………………………………は?」


「この前、初めて魔物と戦ったばっかりだ」


 東の森の所々には広場がある。そこでミランダと対決だ。準備体操をしていると、ミランダが話しかけてくる。最近は警戒されなくなってきたな。ゴブリン以外の魔物は倒したことない。父さんも修行時でも許してくれなかったし。


「マスター、戦闘奴隷は主人に対して反撃できることを忘れたのか。命を落としても知らないぞ」


「大丈夫。その時は全力で逃げるから」


「はあ、本当に変なマスターだな。分かった、戦おう」


 俺の返事にミランダからため息に加えて呆れられた。何故だ。直感で勝てない相手は逃げるに限る。納得いかないまま、ミランダと戦うことになった。わくわくするぜ。





「勝敗は相手が参ったと言えば勝ち。それじゃあ、冒険者決闘のルール通り、このコインが落ちたら決闘開始でいいね」


「了解だ」


「準備は良い?」


「いつでも来い」


「えいっ!」


 冒険者決闘。冒険者同士が実力を見せ合うのがきっかけで始まった伝統。今では闘技大会という高ランクの冒険者が競い合う大会まである。まあ今からするのは一番簡単なルールで相手に降参を認めさせること。準備が整った俺達は森の広場で戦い合う。俺はコインを投げた、戦闘開始!





「風気〈サイクロンオーラ〉。風槍〈サイクロンスピア〉」


「影気〈シャドウオーラ〉!」


「……………………闇属性とは本当だったのか」


「何か言った?」


「何でもない」


 ミランダが風魔法を発動し、俺は影魔法だ。闇属性の魔法は3種類。闇魔法、影魔法、血魔法。闇魔法は種類が多い『ダーク』があるが応用しにくい。影魔法は1種類の『シャドウ』だが応用しやすい。血魔法は覚えることが出来なくて、とある魔族が生まれつきの才能のみで開花する『ブラッディ』。俺は周りに闇属性の人間がいなかったから応用しやすい影魔法を我流で使っている。それより、影魔法を使った後にミランダが声が聞こえた気がしたけど、気のせいかな?


「槍に風の魔力が纏ってるのは初めて見た」


「基本中の基本だぞ。それより、勝負中に話すとは余裕だな」


 オーラの魔法は身体強化。これは父さんの真似で覚えたけど、ミランダの元暗黒騎士の槍に魔力を纏うことは知らない。父さんとの修行は魔法向上ばかりで武器は使ったことないよ。やっぱり世界は俺の知らないことがいっぱいだ。それにしても、ミランダが槍を構えている姿が綺麗だ。ドキッとするね。


「そんなことないよ。影弾〈シャドウボール〉!」


「……本当に影魔法を使うとはな。はっ!」


「すごい、ミランダ!」


 先制のシャドウボールを放つも、簡単に槍で弾かれる。闇と風の魔法がぶつかるの初めてだ。わくわくするぜ。ちなみに色で表すと、闇魔法は紫、影魔法は黒、血魔法は紅色。同じ闇属性でも全然違う。


「褒めても手加減しない。今度はこちらの番だ」


「うひゃあ!」


「ふっ、はあっ!」


「影鎖〈シャドウチェイン〉!」


「風盾〈サイクロンシールド〉」


「あっ!?」


 俺はすごい速さで迫ってくるミランダに驚き、槍の突きを間一髪で避ける。危ない危ない、一撃で負けてたら修行にならない。シャドウチェインでミランダの動きを封じ込めようとしたけど、緑の立方体のバリアがミランダを囲って黒い鎖が効かない。思わず声に出ちゃった。


「どうしたマスター、そんなものか?」


「まだまだこれからだよ、影弾〈シャドウボール〉! 影弾〈シャドウボール〉!」


「無駄だ。同じ魔法は2度通用しない。もっと考えて策を講じろ」


「くっそー。勝つまで諦めないぞ!」


 俺は接近戦は苦手だよ。しかも槍のリーチがあって微妙に遠いから見てからでも魔法を避けられる。ちょっと無謀だったかも。でも、ミランダに認めてもらえるまで頑張る!





「どうだ、参ったか?」


「ま、参りました」


 俺は結局、負けてしまった。魔力切れで力が出ない。魔力が切れると、どんな種族でも身体が動かせなくなる。あの後も同じ事の繰り返しで、俺の攻撃は弾かれてミランダの攻撃をギリギリ避けるだけ。戦闘奴隷より弱い主人って駄目だよな。分かっていたことだけど、ショックが大きい。


「う~、俺ってやっぱり弱いかな」


「経験の差だ。相手の魔法を気になったり、自分の魔法が効かなかったことに驚くなど、隙がありすぎる」


「だって、ミランダの魔法が綺麗だったから、その、つい……」


「お世辞は良い。初心者ダンジョンは私に任せておけ」


「本当なのに……。よろしくお願いします。俺も頑張るから!」


「ならば、足手まといにならないことだな。私は向こう側で休んでくる」


「は~い」


 俺は魔力が切れかかっていることもあり、森の広場のど真ん中で仰向けに寝転ぶ。空は青いなー、っと現実逃避中。ミランダがグサッと俺の反省点を述べていて心が痛い。初心者ダンジョンの件もミランダがやる気になっているけど、俺いらない子になってる。離れて行くミランダに寂しさが覚えたよ、とほほ。





「………………闇の魔力を纏った時や、あの純粋なシャドウボール。闇属性は私達のような魔族や野生の魔物しか居ないはず、人族が使いこなすなど、私が生きてきた中でも見たことも聞いたこともない。今回のマスターは性格といい不思議だ……」


 ミランダがぶつぶつ呟いているけど、弱い主人だから頼りにならないと思われているかもしれない。初心者ダンジョン、少しでもミランダの力になってみせるぞ!





「む……!」


「どうしたの、ミランダ?」


「マスター、何かを感じる……」


 デュラントの街に帰ろうとした矢先、ミランダが急に槍を構えた。俺には分からないけど、ミランダの雰囲気が決闘時とは違う。本気モードみたい。ミランダがある方向に目を反らさないで集中していると、大きな音が聞こえてきた。


「グオオオオオオオオオオオオオオオオっ!」


「あ、あの時の赤熊!」


「マスター、下がれ。私がやる」


 右腕の無い赤熊! 俺が初めて冒険者になって見た巨大魔物。なんか前と違って、より赤く見えるけど気のせいかな。それより、俺はいきなりの赤熊で魔法の準備をしていなかった。どうするかと考えていると、ミランダが前に出た。


「風気〈サイクロンオーラ〉。風槍〈サイクロンスピア〉!」


「グオオオオっ……」


「い、一撃……。すごい、ミランダ!」


 ミランダが放ったサイクロンスピアは、赤熊の心臓を突く。あまりの速さにびっくり。魔法の詠唱が早口言葉のように聞こえた。俺の決闘時は全然本気じゃなかったのか。


「いや、既に手負いだった。何故こんな人里近くにレッドベアーがいる?」


「俺がこの前に見た同じ赤熊だよ。右腕の無い赤熊なんて、そうはいないよ」


 赤熊は俺達と出会う前からボロボロだったみたい。ますます謎だな。メアリーさんに報告することを思いながらデュラントの街に戻るのであった。

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