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第1章 4 ダークエルフのミランダ

「仮面さん、ありがとう」


「お礼はいらないの」


「また何か困ったことがあったら相談にくるね」


「その時は私の商品を買って欲しいの」


「分かった、約束するよ」


 俺はミランダを連れて奴隷商店から出ると、仮面さんが待っていてくれた。仮面さんにお礼を言うと商人らしい答えが返ってくる。その通りだね、仮面さんからは何も買ってないや。奴隷腕輪を着けたミランダにコートを着させて裏道から出た。紫色のタンクトップにホットパンツは、褐色肌の露出が高くて目のやりどころに困る。こんな姿を街の人達に見せたくない。まずは宿屋に戻ろう。





「お帰り、スバルちゃん。そっちは?」


「戦闘奴隷のミランダです」


「奴隷は同じ部屋よ。夕食がそろそろ出来るわ」


「ありがとう。部屋で食べますね」


「あいよ」


 満腹亭に帰ってきた。俺はおばちゃんにミランダを紹介した。 奴隷と言ってもおばちゃんは普通に接してくれる。きっと、色んな冒険者を見てきたから動じないと思うね。夕食は楽しみだ、街は村より食べ物が豊富だから料理のバリエーションが多いよ。さっきから黙っているミランダを俺の部屋に連れて行くけど、結構ドキドキするな。





「まずは自己紹介。俺はスバル=ブラックスター。1週間前に冒険者になって今日E級になった。闇属性で影魔法を使う魔法使いだ」


「…………人間の闇属性は初めて見たな。私はミランダ。風属性で風魔法を使う槍使いだ。何故……、私を買った?」


「初心者ダンジョンに挑戦するため。冒険のパーティメンバーが必要だったから」


「………………それだけ、か?」


「うん、それだけ」


「そうか……」


 俺はミランダに自分のことを紹介した。やっぱり闇属性であることに驚いている。普通は会わないもんね。ミランダのことも聞いて、槍使いはありがたい。接近戦は苦手だよ。ミランダは部屋に入ってから更に警戒心が強くなってる。当然だよね。買った目的を伝えたら落ち着いてくれたみたい。





「スバルちゃん、夕食よ」


「ありがとう、おばちゃん。ミランダ、夕食は一緒に食べよう」


「良いのか、奴隷は床で食べるものだぞ」


「そんな行儀の悪いことはしないよ」


 話が一区切りした時、おばちゃんが夕食を持ってきてくれた。良いタイミング、お腹もすいていたからね。ご飯は皆で食べたら美味しい。ミランダが床で食べるって言ってるけど、俺は奴隷の常識は無視。結局、一緒にテーブルで夕食を食べたけど、ちらちら見られると気になるよー。


「お風呂の時間だ」


「風呂……!」


「ミランダ?」


「い、いや。何でもない」


 夕食の後はお風呂。ここ『満腹亭』は個室で浴槽が着いてある。一見高そうに感じるけど、そこは異世界。魔法で管理されており、夕食後の2時間しか水が出ない。水はどの世界でも貴重だね。それより、ミランダがお風呂に反応した。すぐに無口になったけど、入りたいみたい。


「お風呂に入っていいよ」


「本当か! …………ごほん。奴隷は風呂禁止なことを知っているだろ」


「そうなのか? でも、ここには俺とミランダしかいない。なら、俺の奴隷をどうしようが勝手だよ」


「ふ、ふん。マスターの命令なら仕方ないな。うん、仕方ない。………………よしッ!」


 ミランダがぶつぶつ言いながらお風呂場に向かって行った。それにしても、奴隷をお風呂に入れないなんて、身体が汚れたり臭ったりして商品価値が下がると思うけどね。アレックスのおっちゃんも同じなのかな? それより1番分かったことは、ミランダはお風呂好きだった。鼻歌が聞こえてきたからね。嬉しそうでなによりだよ。


「良い湯加減だった。感謝する」


「それは良かった。じゃあ、一緒にベッドで寝るよ」


「……っ! 最初からそれが狙いか!」


 湯上がりのミランダが笑顔から一変、鋭い目付きになった。めっちゃ警戒している。正直えっちなことは興味はあるけど、今は冒険のわくわく感が勝っている。前世でもベットで寝たきりだったしね。まあ良いや、明日も早いから寝ようっと。ミランダのペースは空けて寝転ぶ。


「そんな端っこだとベッドから落ちちゃうよ」


「……まだ、身体も心も許す気はない。少しでも近付くと、今までの奴らのように槍で突き刺す!」


「そっか、おやすみ」


 ミランダは四苦八苦した後、ベッドの端で横になっていた。お互いに端だからぽっかり真ん中スペース空いてる。コスモス様にも祈って、明日からよろしくね、ミランダ。





「おはよう」


「……おはよう」


「朝食を食べ終わったら冒険者ギルドに行こう。そのあと、衣服と槍を買おう」


「分かった……。あ、マスター」


「何?」


「い、いや。何でもない」


 朝、起きるとミランダが既に起きていた。早起きは良いことあるねと思っていると、朝食を持ってきてくれた。ありがとう、ミランダ。おばちゃんも早いや。今日のやることを伝えて、冒険者ギルドに行く。ミランダが何か言いたそうだったけど、後で聞くね。今日は忙しい1日になるぞ!





「メアリーさん、おはようございます」


「おはようございます、スバル様。本日のご用件は?」


 お馴染みの冒険者ギルド受付嬢メアリーさん。いつもお世話になってます。


「戦闘奴隷の冒険者登録です」


「戦闘奴隷、ですか。昨日の今日でよく見つけてきましたね。お名前は?」


「ミランダです」


 ミランダが冒険者になれば、お金を稼ぐのも2倍早くなる。メアリーさんが一瞬じっと俺を見た気がしたような、すぐに書類を作成したから気のせいか。


「待ってくれ、マスター。私は元冒険者だ」


「え、そうなの?」


「ミランダ様、ありました。半年前に冒険者から奴隷に変更されていますね」


「それじゃあ、俺の書類に登録出来ますか?」


「もちろんです。ちなみに2人以上はパーティーとなり、パーティーの名前を付けますか?」


 まさかミランダが元冒険者とは思わなかった。嬉しい誤算。ミランダから貰った冒険者カードを見て、メアリーさんが確かめてくれた。それにしても、ミランダは半年前に戦闘奴隷になったのか。いつか、理由を言ってほしいな。それとパーティーの名前か、俺センス無いから後回しで!


「名前は保留します。初心者ダンジョンをクリア出来たら考えます」


「分かりました。ミランダの登録を受理します」





ミランダ

性別 女性

年齢 ???歳

種族 ダークエルフ

出身 ダークエルフの里

職業 冒険者スバルの戦闘奴隷

属性 風

魔法 風

称号 ダークエルフの加護





「メアリーさん、すみません。ミランダの衣服を買いたいのですが、オススメのお店はありますか?」


「ありますよ。でも、スバル様はこの街に詳しくありませんよね?」


「はい……」


「私も一緒に行ってあげますよ」


「本当ですか!? ありがとうございます!」


 俺はメアリーさんにミランダの衣服について尋ねた。プライベートな質問になっちゃうけど、女性の服は前世も含めても全く分からないよ。詳しい話を伝えたらメアリーさんが一緒に来てくれることに。ありがとう、メアリーさん。俺は周りの人に助けてもらってばっかりだな。コスモス様も含めて、本当今の俺って幸せ者だよ。





「……久しぶりに期待出来る新米冒険者スバル様。しかし、戦闘奴隷を短期間で手に入れた経緯など、怪しい点があります。奴隷と一緒に抜き打ちチェックです」


 メアリーさんの楽しそうな言葉に全く気付かなかったけどね。





「長いなー」


 とほほ。女性の買い物は長いと聞いたことあったけど、ここまで長いとは知らなかった。俺は女性服の商店に来てその入り口の椅子に座って、ミランダとメアリーさんを待っている状態。ちらほら周りは男性だらけ、皆俺と同じみたい。早く帰って来ないかな~。





「ミランダ様、これなんてどうですか?」


 私に衣服を渡してくる笑顔の冒険者ギルド受付嬢。だが、眼が鋭い。先手を打つ。


「…………マスターを離して何が狙いだ」


「そんな怖い顔をしないでください。私が気になったのは、スバル様が冒険者登録1週間で戦闘奴隷を手に入れた経緯だけですよ。お答えください」


 先ほどまでの受付嬢の笑顔が消える。これは下手に嘘をつくと、マスターの立場が悪くなるな。


「私は裏市場で売られていた。マスターとは、そこで出会った」


「裏市場。なるほど、戦闘奴隷も格安で売られていますからね。しかし、スバル様は裏に関わる人間ですか? 全く見えませんが」


「……私も同意だ。そもそも裏市場に来たことが不思議。あそこは魔道具の結界で普通は入れない。ましてや、冒険者になったばかりの人間だぞ」


 あるとすれば、マスターが闇属性ということ。だが、ギルドといえど全てを話すのはマスター次第だ。このことは隠しておく。


「その辺りも気になりますね。何か他に気付いた点は?」


「…………悪いがもう話すことは無い。少なくとも、悪意は全く感じない。マスターは良い奴だ」


「分かりました。スバル様が良い人なのは、百も承知です。では、服選びを再開しましょう。これでスバル様を虜にしてみますか?」


 質問が終わった瞬間、メアリーは笑顔で透き通ったワンピースを見せてきた。何だそのヒラヒラは。そんなものでは戦闘中に気になるだろう。この動きやすいホットパンツで充分。おい、ニヤニヤするな。止めろ、そんなもの絶対に着ないぞ!





「メアリーさん、またね」


「さようなら、スバル様、ミランダ様。……この件は、念のためギルドマスターに報告しておきますね」


「…………覚えてろよ」


「ふふ、良い買い物でした。信頼出来たら頑張ってくださいね」


 ようやく出てきたミランダとメアリーさん。いっぱい買ってるね。明日からは採取と討伐依頼を頑張らないと。ところで、メアリーさんが去る時にミランダと話していたけど何だったのかな?





「次は仮面さんの商店でミランダの槍を買いにいこう!」


「…………了解、マスター」


 仮面さんとの約束、武器を買いにいこう。また、掘り出し物はあるか楽しみだ。わくわくするぜ。

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