第4章 7 決着
「攻撃開始だ、プレアデス!」
高さ10メートルのシャドウゴーレムとキャッスルゴーレムの赤い単眼が睨みあうなか、俺はゴーレムの左肩に立って一緒にいる。キャッスルゴーレムは自分で魔法が使えるみたいだけど、シャドウゴーレムのプレアデスは俺の魔法イメージが無いと発動できないのだ。でも、たっぷり魔力を注ぎ込んだから簡単には負けないぞ。俺の指示でプレアデスは動き出した。
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
プレアデスとキャッスルは雄叫びを上げて、お互いパンチ攻撃を繰り出した。パンチがぶつかり合うと、凄まじき轟音が最上階に鳴り響き、衝撃波が俺達を襲った。肩に乗っている俺は魔力の影を使って何とか踏ん張ったけど、すごいパワーだ! プレアデスもすごいけど、キャッスルはミランダ達が弱体化させた後でこのパワーだから全く油断できない。恐ろしい魔物だ。
「きゃあああああああっ!」
「なんと言う衝撃!」
「これが闘技大会の準決勝でスバルくんが出した巨大ゴーレム!」
残念エルフ親子とエドガー先輩の『日天の剣』は巨大ゴーレム同士の戦いに圧倒されている。野生でも珍しい巨大魔物と規則外の巨大魔道具。どちらもエルフの長い人生でも見たことが無い。唯一知っていたエドガーもまた実際に見てみると、驚きを隠せていない。
「スバル、気を付けろよ」
「……スバルさん」
「皆さん、壁際に集まってください。今のうちに回復します!」
ミランダとシャロンはスバルを心配しながらも、メアリーの元へ向かう。あの戦いに巻き込まれると、スバルの足を引っ張ることは分かっていた。メアリーもまた遠く離れた壁際で回復魔法を展開。万が一を考えて、いつでもスバルの援護が出来るように待機する。
「きひひひひひひひ! 素晴らしい! ただの市販品ゴーレムがここまで強くなる、か! 闇属性とはいえ、ただの人間と考えていたがこんな切り札を持っているとは嬉しい誤算! 星影くんか……ぜひとも調べたい!」
「し、師匠?」
コラムは笑う、嗤う、ワラう。最上階に入ってから人が変わったかのように興奮している。巨大ゴーレム同士の戦いも、まるで新しい玩具を見つけた子供のように楽しむ。ドランはコラムの様子がおかしいことに戸惑う。
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
「パワーは互角か。プレアデス、そろそろ俺も参戦するぞ!」
「ゴーーーーー!」
何度もぶつかり合うプレアデスとキャッスル。キャッスルの攻撃手段はパンチと体当たりのみで重力魔法を使ってこない。どうやら純粋なパワー勝負を望んでおり、プレアデスもそれに応えている。でも、このままだとラチが明かないし、野生魔物キャッスルと違って魔道具プレアデスは魔力量に限りがある。俺はプレアデスに指示して影魔法の用意を始める。悪いね、キャッスル!
「プレアデス、俺の魔法をイメージしろ。巨大影拳〈ジャイアントシャドウパンチ〉だ!」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!?」
早速プレアデスに魔法のイメージを伝えると、巨大右腕が魔力を纏った。闘技大会でも感じたけど、やっぱりクリスの魔道具は普段以上の力が出てくる。魔力を得たプレアデスは巨大右腕で格闘家のようなアッパーをくり出して、キャッスルの腹にめり込ませた。相当な破壊力があったのか、キャッスルの身体にヒビが拡がっていき悲鳴をあげている。
「追撃だ! 巨大影弾〈ジャイアントシャドウボール〉!」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!?」
キャッスルが膝から崩れ落ちていくなか、巨大左腕の掌からジャイアントシャドウボールを撃ち出す。プレアデスには悪いけど、これはコラムさんからの討伐依頼なんだ。依頼を果たして『秘宝』を手に入れることが大事。キャッスルはジャイアントシャドウボールをくらってバラバラに砕け散った。やったぜ!
「流石、私達のリーダーだ!」
「……かっこいい」
「ちょっと待ってください。あれは何ですか?」
キャッスルゴーレムが崩れ倒れたのを見てミランダ達は喜ぶ。スバルがますます強くなっていることを自分のことのように嬉しい。しかし、事態は思わぬ方向へ進むことになる。メアリーが気付いたのは、キャッスルゴーレムの瓦礫から白く光る球体が浮かんできた。それは離れていたミランダ達からでも分かるほどの大きさだった。
《ガ……ガガ……ガーー》
ん? キャッスルゴーレムを倒したと思っていたら、何か白く光る球体が現れた。その球体は浮かんでいき、俺達と同じ高さまで飛んできて停止した。この壊れたラジオのような変な音も聞こえてくるし、一体何だろう?
《キャッスルゴーレム テイシ カクニン》
《キンキュウ キノウ ジッコウ》
《コウゲキ タイショウ ヤミ ゾクセイ カクニン》
《キャッスルゴーレム ヒカリ ゾクセイ ヘンコウ》
《サイキドウ ジッコウ》
《サモン キャッスルゴーレム》
…………は?
白く光る球体から聞こえてきた音に驚いた。音というよりは言葉だった。まるで前世の病院にあったコンピューターが自動で修復していく画面のと同じだよ!? バラバラに砕け散ったはずの瓦礫が、次々と空中で合わさっていき元に戻っていく。目の前には先程倒したはずのキャッスルゴーレムが現れた。何よりも最後に聞こえてきた言葉が、俺の判断を鈍らせた。
《コウゲキ カイシ 光弾〈ライトボール〉》
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!?」
「ぐわあああああああああっ!」
完全復活したキャッスルゴーレム。図体は弱体化したままだけど、身体は黄金に輝き、先程いきなり現れた白い球体が胸にめり込んである。でも、今の俺は最後の言葉のせいで混乱していた。そのため、キャッスルの攻撃に気付くのが遅れてしまい、プレアデスと共にまともに当たってしまった。しかも、これってエドガー先輩が使っている光魔法!? ちょっと待ってくれ、次々と起こる事に頭の理解が追いついていない!
「光魔法!?」
「間違いないですわ! お父様、こ、これは、どういうことですか……!?」
「馬鹿な、光属性は光の女神カオス様に選ばれし者の証。ゴーレムごときが光属性など有り得ない! あり得ないでござる! そそそ、そんなことがあってたまるかああああっ!?」
エドガー率いる『日天の剣』もまた驚いていた。こちらは知識がある分、余計に混乱している。エドガーは同じ光属性が目の前にいること、フレアは光魔法を見て戸惑い父親に尋ね、ハイエルフのシリウスは1番混乱を越えて錯乱していた。何故なら、この依頼は光の女神カオスによる天啓『秘宝に闇が迫る』がきっかけ。しかし、目の前で迫るのは光属性の巨大ゴーレム。その矛盾した光景がシリウスを更なる苦しみを味わせる。
《コウゲキ ゾッコウ》
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
「おい……嘘だろ、あれは……」
キャッスルゴーレムが謎の言葉と共に迫ってくる。落ち着け、落ち着くんだスバル=ブラックスター。今の状況を整理して考えろ。魔本でも載っていない光属性のゴーレム、聞き覚えのある最後の言葉『サモン』。何より近付いてくる胸の白い球体が目に映ったことで分かってしまった。まさか、この巨大魔物の正体は……!
「……………………きひひ、やはり己の光属性を組み込んでいたか。厄介な魔道具だよ。伝説の勇者オリオン=フォン=イストール」
白い光る球体には見覚えのある掌サイズの小さなゴーレムが入っていた。こいつはシャドウゴーレムと同じ魔道具なのか!?
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
「ふぅぅぅぅぅ~~~~っ、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~っ」
キャッスルゴーレムの咆哮を聞きながら深呼吸。予想外なことがたくさん続いたけど、もう大丈夫。要するに土属性のキャッスルゴーレムが光属性に変わっただけだ。恐らく魔法もエドガー先輩が使っているのと同じだろう。何で魔道具なのか、何でここにいるのかと色々な謎はあるけど今は関係ない。俺とプレアデスの力で目の前にいる巨大ゴーレムをぶっ飛ばす!
「光属性の巨大ゴーレム……キャッスル。相手にとって不足なし! 行くよ、プレアデス」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
《光気〈ライトオーラ〉 ハツドウ》
「こっちは影気〈シャドウオーラ〉!」
俺は気合いを込めて叫び、プレアデスも応じる。俺と白い球体はお互いにオーラ系の身体強化魔法を発動。キャッスルは黄金に輝き、プレアデスは暗黒に染まっていく。光と闇の対照的な巨大ゴーレムが対立している。あの白い球体にある魔道具ゴーレムを倒せば再生はしないはず。それに魔道具は貯めている魔力に限りがあって、俺達と同じ条件だ。こんなヤバい雰囲気なのに身体が熱くなっていくのを感じる。わくわくしてきたぜ!
「スバル……」
「……スバルさん」
「スバル様……」
「全てがこれで決まる!」
「さらに禍々しいですわ……」
「認めたくないが、神々しいぜよ」
巨大ゴーレム2体の膨大な魔力が最上階全体に拡がっていく。見守るしか出来ない『星影の衣』『日天の剣』メンバー。それぞれの想いが入り交じる。
「きひ、きひひ、きひひひひひひ……! まさにクライマックス! 闇属性の人間くん、キミはどこまでボクを楽しませてくれる!」
「ーーーーーっ!?」
コラムは笑いが止まらず、マーマンであるはずの魚人から蒼髪に蒼コートを着た別人に一瞬だけ変化。ドランはコラムの姿が一瞬変化したことに、口を必死に抑える。気付いたことをバレたらヤバいと、本能が警告していた。
「巨大影弾〈ジャイアントシャドウボール!〉」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
《巨大光弾〈ジャイアントライトボール〉》
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
プレアデスとキャッスルの魔法対決が始まった。黒と白の巨大ボールがぶつかる。先程のパワー対決とは違う光景。どちらも魔道具ゴーレムであり、魔法も同じ。違うのは闇と光の属性、そしてプレアデスには人間の俺が一緒に戦っていることだ。ぶつかり合っていた黒と白の巨大ボールはお互い消滅。魔法の破壊力も一筋縄ではいかないな!
「巨大影矢〈ジャイアントシャドウアロー〉!」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!?」
ボールが駄目ならアローだ。プレアデスの巨大左手に黒い矢を構える。アロー系はボール系に比べて攻撃範囲が狭いけど攻撃力は上回っている。俺はボール系のほうが得意だから使わないけど、プレアデスが上手く発射してくれた。黒い矢は魔力が一点集中しており、キャッスルの右肩を貫通できた。この戦い、初めてまともなダメージを与えれた。
《フショウ カクニン》
《ホジョ コウゲキ テンカイ》
《浮遊砲台〈フロートバッテリー〉》
「何だあれ!?」
白い球体の魔道具が新しい魔法を使ってきたけど、光魔法じゃない。初めて聞く魔法だ。キャッスルゴーレムの両肩の上に小さな物体が2つ現れる。その小さな物体は浮かんでおり、よく見ると大砲のような筒……って大砲!? あれはヤバい!
《チャージ カイシ》
《チャージ カンリョウ》
《巨大光砲〈ジャイアントライトバスター〉》
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
「プレアデス、最大防御! 巨大影盾〈ジャイアントシャドウシールド〉!」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
白い球体の合図と共に浮遊砲台の大砲部分に光が集まっていく。あの光はとんでもない魔力の塊。離れている俺でさえ感じてしまう。キャッスルの雄叫びによって強力な光魔法が発射された。その瞬間、俺はプレアデスに防御を指示。プレアデスに蓄えている魔力を使いきっても構わないと考えるほどの防御魔法を展開した。そして、目の前が真っ白になった。
「ぬおおおおおおおおおおおおっ!」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
キャッスルの光魔法がプレアデスの防御魔法を直撃して、僅かに押している。まるで光魔法版のスターライトバスターみたいだ! 俺は影魔法で無理やり足をプレアデスの肩に縛らせているけど、油断すると吹き飛びそうだ! プレアデスも必死に耐えているのが伝わってくる。プレアデスが頑張っているのに俺が踏ん張らないでどうする!
《巨大光誘導弾〈ジャイアントライトミサイル〉》
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!?」
追撃!? しかもジャイアントシャドウシールドを避けてプレアデスの身体に直撃した。これは追尾系の魔法か! プレアデスがよろけて尻餅を着いた。幸い、倒れていないのが唯一の救いだ。キャッスルの歓喜のような雄叫びが響く。この野郎、意外と感情豊かで調子に乗っているな!
「プレアデス、落ち着け! 立ち上がらなくて良いから、そのまま身体を丸めて防御体勢にするんだ」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ」
プレアデスは尻餅を着いたまま背中を丸めて防御。いわゆる体育座りだ。あの追尾攻撃はシールドを避けてきた。ならば当たることを前提とした対策をすれば良い。あとは魔力を節約しつつ、身体とシールドに魔力を一点集中。守備堅めにしてチャンスを待つ。キャッスルの攻撃はすごいけど、プレアデスの防御だってすごいぞ。
《マリョク ブソク》
《ヒカリ マホウ テイシ》
「大丈夫か、プレアデス?」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
良し! キャッスルの攻撃を防ぎきった。スターライトバスター級の光魔法は凄まじかったぜ。プレアデスの身体は無事だけど、魔力量が少ない。このままだとプレアデスの巨大化が解けてしまう。でも、それは相手だって同じなはず。同じ魔道具ゴーレムだから、キャッスルの光魔法攻撃だって永遠に続くわけではない。プレアデスの雄叫びが元気な証拠、まだまだこれからだ!
《マホウ コウゲキ ヘンコウ》
《ブツリ コウゲキ イコウ》
《巨大飛翔拳〈ジャイアントブーストナックル〉》
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
「なにいいいいいいぃぃっ!?」
キャッスルゴーレムの右腕が飛んできた!? 思わず叫んでしまった! ロケットパンチだと!? この魔道具はどういうものか益々分からないけど、これを造った人は間違いなく尊敬できる。くそったれ、カッコいいぞ。漢のロマンだ! プレアデス負けてられない、俺達もやるぞ! 影魔法は相手の物真似が真骨頂だ!
「巨大飛翔拳〈ジャイアントブーストナックル〉!」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
俺の魔法イメージをプレアデスに覚えさせる。ロケットパンチは前世のアニメや漫画で簡単にイメージが思い浮かべれる。俺の魔法イメージが伝わったみたいでプレアデスの巨大右腕が噴射して発射された。行けっ、ロケットパーンチ!
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!?」
ロケットパンチがぶつかり合う。お互いの拳が当たることで摩擦が聞こえて耳が痛い。その後、ロケットパンチは離れては当たってを繰返していき、キャッスルのロケットパンチが砕ける。俺達のロケットパンチがキャッスルのロケットパンチを上回った。これで右腕を破壊! プレアデスのロケットパンチはちゃんと戻ってきて身体に繋がった。キャッスルの悲鳴が広場に響くけど、悪く思うなよ。
《アーム キノウ エラー》
《サイセイ フカノウ エラー》
《エラー エラー》
《エラー エラー エラー エラー》
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
「うわあああああああああああああああああああっ!?」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!?」
右腕が完全に壊れたキャッスル。白い球体の言葉がエラーしか聞こえなくなった。キャッスルが今までで1番大きい雄叫びをあげて突撃、巨大な身体全体を使った体当たりしてきた。魔法攻撃を構えていた俺達は隙をつかれて吹き飛ばされる。やけくそか!?
《ハイジョ ハイジョ ハイジョ ハイジョ ハイジョ ハイジョ》
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
「んぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎっ!」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
白い球体とキャッスルの殺意が言葉となって聞こえてくる。恐いよ! プレアデスが純粋なパワーでキャッスルに負けている。まずい、押し返しているけど完全に押されている。プレアデスも踏んばっているけど、地面に足の道が続いていく。パワーだけでなく、スピードも半端ない。全ての魔力を使いきる気か! このままだと後ろにいるミランダ達に当たってしまう! それだけは何としても阻止しないといけない。止まれええええええええええっ!
〈勝て、スバル!〉
〈……頑張れ、スバルさん!〉
〈信じてます、スバル様!〉
ミランダ達の念話〈テレパシー〉が聞こえた……。こんな状況でも俺を信じてくれている。ありがとう……。俺は……仲間のためなら……限界を超える!
《ハイジョ ハイジョ ハイジョ ハイジョ ハイジョ ハイジョ》
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
「排除排除うるせぇな! プレアデぇぇぇぇぇぇスぅっ! 負けるなああああああぁぁぁぁぁぁ! お前の底力を見せてやれえええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーーッ!」
みんなの応援が俺とプレアデスの気持ちを1つにする。もはや排除しか言わなくなった白い球体と暴走キャッスルに、俺達の全力をぶつける! プレアデスの魔道具に込めた魔力を全て踏んばっている足裏に移行。ロケットパンチと同じ要領で足裏から魔力を噴射。キャッスルのパワーに押されていたけど、ついに押さえつけた。それだけではない。プレアデスがキャッスルを押し始めた!
「ジャァァァァイアーーントッ、シャドウ、タァァッーーーークルゥゥゥゥ!」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォーーーーッッ!」
《エラー エラー エラー エラー エラー エラー エラー エラー エラー エラー エラー エラー…………セントウ……ゾッコウ……フノウ……》
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォーー………………」
プレアデスの今日1番の力強い雄叫びと共に放った巨大影突撃〈ジャイアントシャドウタックル〉。プレアデスの魔力を全て使ったフルパワーがキャッスルの身体を完全粉砕。俺達を苦しめた浮遊砲台もまたバラバラになった。いきなり現れた白い球体もまた魔力を使いきったのか、輝きを失い地面に落ちた。顔部分だけ残ったキャッスルゴーレムの悲しい嘆きが広場に響き渡る。まるで泣いているようにしか聞こえなかったから、俺とプレアデスは雄叫びをあげずに無言のガッツポーズ。お前達は本当に強かった……だけど、俺達の勝ちだ!




