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第3章 7 3回戦 賢者レグルス

【3回戦であります。最初はベテランとルーキーの対決。今大会最年長の出場者、4属性の魔法使い『賢者』レグルス=ブロンザー選手であります!】


【個人的には、じいさんを応援している】


【対するは今大会ダークホース、闇属性の魔法使い『星影』スバル選手であります!】


 午前11時。2回戦最後の試合だった俺は、今回3回戦最初の試合になった。運が悪いな、魔力があまり回復していない。連戦トーナメントならではか。とにかく気合いを入れてフィールドに行こう。レフトさんの実況を聞きながら入場。今回の対戦相手はギルドマスターのジャックさんが敬う『賢者』レグルス。俺が今まで戦ってきた上位クラスに入るな。ちなみに、ヴァンパイアのルビー、氷結のカシオペア、そして父さんだ。





「かわいい孫のために出場したが、懐かしい魔法使いに会えるとはのう。長生きしてみるもんじゃ。お主の影魔法を操る実力は本物か。偽物ならば……成敗じゃ!」


「おじいちゃん、がんばれー!」


「偽物?」


 俺とレグルスさんがフィールドに向かい合う。白ひげが似合うおじいさんだけど、魔力が質が凄いな。観客席から小さな男の子が応援している。そのレグルスさん、俺を見るなり偽物と言ってきた。確かに俺の偽物っぽいのは予選で戦った。一応、俺は本物ですよ。





【試合開始!】


「レグルスさん、俺が偽物ってどういうこと?」


「問答無用! 風浮遊〈サイクロンフロート〉」


「浮遊魔法か。影弾〈シャドウボール〉!」


 レフトさんの合図で試合が始まるけど、俺はレグルスさんに質問。だけど、レグルスさんは戦闘モードになってしまう。2回戦のドラン選手と違って油断出来ない。いきなり、風魔法の浮遊を使ってきた。浮遊魔法は父さんも使っていたから知っている。空中は地上からだと当てにくいから、さっさと落とさないと! 行け、シャドウボール!


「ほっ。影魔法は本物のようじゃな」


「避けるのは想定内。そこだ、影連弾〈シャドウボール・シックス〉!」


「これは避けにくい。土壁〈ランドウォール〉」


「固い!」


 シャドウボールはレグルスさんに当たる途中の距離で移動されたから当たらなかった。だけど、それは予想通りでれさんが移動した先に、複数の連弾シャドウボール・シックスを発射。そしたら、レグルスさんはランドウォールを発動してシャドウボール・シックスを防いだ。こんなに全く手応えの無いシャドウボールは初めてだ。これが『賢者』の魔法か。


「こちらの番じゃ。火針〈ヒートニードル〉、水連弾〈ウォーターガトリング〉」


「同時魔法!? 1つ1つの魔法が桁違いだ! 影壁〈シャドウウォール〉、傘バージョン!」


 空中から火と水の魔法が雨のように降ってくる。同時魔法は俺も使っているけど、火と水の2属性を同時なのは初めて聞いたし見たよ。そして今、くらっているよ! 俺はシャドウウォールを作り出してそれを傘のように広げた。父さんとの特訓で覚えていて良かった。ここから反撃したい。





「ふむ。あやつを思い出させる影魔法のキレはあるようじゃが……」


「くっそ、やっぱり相手が空中だとボール系は駄目か。それなら引きずり落とす、影腕〈シャドウアーム〉!」


「ほう! 風加速〈サイクロンアクセル〉」


 レグルスさんは俺を見て誰かと比べているようだ。誰と比べているかは知らないけど、俺は俺のやり方で戦うだけだ。シャドウボールは空中の相手には当てにくい、ならばシャドウアームで直接攻撃してやる! 俺の影から現れレグルスさんに向かって伸びていく影の腕。その手が掴むと確信した瞬間、レグルスさんは空中で加速した。浮遊しながら加速だと!?


「速い! 影が追いつかない!」


「爆撃開始じゃ。火弾〈ヒートボール〉、水塊〈ウォーターバレット〉、風射〈サイクロンシュート〉、土矢〈ランドアロー〉」


「4属性魔法のオンパレードかよおおおおおおおお!?」


 シャドウアームは俺の中でもコントロールしやすく、シャドウボールに次ぐ得意魔法。自分の腕を動かして影の腕を操り、大抵の物は捕らえる自信はあったつもりだ。でも、レグルスさんは俺を上回って避けながら4属性の魔法を空中から放ってきた。俺はシャドウアームの操作を止めてひたすらフィールドを走る。後ろを振り返るな、足を止めたらマジで負けてしまう!


「……粘るのぅ」


「ぬおおおおおっ! こうなったら、俺も空を飛んでみるか! このまま何も出来ないままより、試して失敗したほうがマシだ……行くぞ!」


「ほ?」


「影気〈シャドウオーラ〉、影手〈シャドウハンド〉! 影よ、俺を投げ飛ばせえええっ!」


「なんと!」


「くらえええええええぇぇぇ、影拳〈シャドウパンチ〉!」


 レグルスさんが小さく呟いたなど、知らない俺はひたすらフィールドを走りながら考えていた。シャドウボールもシャドウアームも駄目、スターライトバスターは魔力の消費が大きいし、こんな走りながらとか失敗するに決まっている! それならいっそう俺も空中に行けば、何か変わるかもしれない。空飛ぶ方法は1発勝負! シャドウオーラは風圧対策、シャドウハンドで俺自身を掴む。よく狙いすまして俺を投げ飛ばす。空中にいるレグルスさんに向かって飛んで行くことに成功だ! 初めてレグルスさんを動揺させたぞ。ここからシャドウパンチで反撃だ!


「……発想が柔軟なのは認めよう。じゃが、初めて使ったのがバレバレじゃ」


「げっ」


「お主が落ちろ。火槌〈ヒートハンマー〉」


「いっ、てええええええぇぇぇっ!」


「さっきより念入りに爆撃じゃ。火弾〈ヒートボール〉、水塊〈ウォーターバレット〉、風射〈サイクロンシュート〉、土矢〈ランドアロー〉」


「どわあああぁぁぁっ!」


 レグルスさんは俺が空中に飛んできたことを褒めてくれたけど、1発勝負を見透かしていた。俺が動揺したと同時に赤い大きなハンマーを用意。やべっ、飛んで行くことだけ考えていたから方向転換のやり方が分かんねぇ! 俺が飛んできたタイミングに合わせて、おもいっきりハンマーを振り下ろして直撃、フィールドに叩き突かれた。や、ヤバい、意識がくらくらする。眼に映るフィールドがぐるぐる回っており、耳に聴こえてきたのは先程の4属性魔法! に、逃げないと……。





「スバルー!」


「スバル様!」


《スバルさん!》


【レグルス選手の魔法が決まったー! これはスバル選手、倒れてしまったか?】


 観客席からはミランダ、メアリー、クリスの悲鳴があがる。レフトによる実況がコロシアムの雰囲気を盛り上げる。





「魔力を感じぬ……消えよったか?」


「隙あり、影腕〈シャドウアーム〉!」


「うぬ!? お主、わしの影に隠れておったのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 レグルスさんは俺を見失っているようだ。俺は今いる場所で呼吸を整えてから一瞬の隙を狙った。俺は影から飛び出して空中にいるレグルスさんをシャドウアームで掴んだ。そう、レグルスさんの影から出てきたのだ。今まで自分の影ばっかり隠れていたけど、うまく行って良かった。でも、自分の影じゃないから長く隠れることが出来なかった。何故か分からないけど、それは後で考えよう。レグルスさんを落として、ここからが本当の戦いだ!





「はぁ……はぁ、奇襲でもこの程度かよ……」


「いたたたた、けっこう効いたのぅ。どうやら、お主を甘くみていたようじゃ。これは早く飛んだほうがいい、サイクロ……」


「逃がさない! もう空を飛ぶ余裕を無くす……ケリを着けてやる、影衣〈シャドウスタイル〉!」


 影からの攻撃はレグルスさんをフィールドに立たせた。でも、大したダメージは与えていなかった。分かっていたけど悔しい。レグルスさんはシャドウアームで掴まれたまま、再び空中へ飛び立とうとしている。そうはさせない。あなたは今、ここで倒す!





「あれは……っ! ヤバい、メアリー伏せろ!」


「大丈夫です。レグルス様の魔法でも観客席を護る3重結界が壊れたこと無いですよ」


「違う! スバルの魔法だ! あれは身体を支える身体強化魔法で、次の魔法がヤバい! 特訓時とは違って最大火力は『氷結』の魔女を真正面から討ちとった威力だぞ!」


「…………あ、大変です。影魔法は想定外でした…………伏せます!」


《ミニゴーレム、防御体勢。あれは結界の中でも衝撃でゴーレムが飛んでいっちゃうの》


「ゴーーー」


 観客席から見守っていたミランダは、シャドウスタイルを見てスバルの意図を察知。何も知らないメアリーに本気で注意して自らも伏せる。クリスもまたスバルの最強魔法を知っているので、ミニゴーレムを丸めて衝撃に備える。その瞬間、コロシアム全体にスバルの魔力が広がった。





「はあああああああああああああ……!」


【こ、こいつは……】


【闇の魔力であります!?】


 ジャックさんとレフトさんが何かを叫んでいるけど、全く聞こえない。シャドウスタイルで足を固定。右腕を左手を支える。右の掌に魔力を溜める。そして全神経をシャドウアームで掴んでいるレグルスさんに集中!


「……っ!? この膨大な魔力は……生意気な。良かろう、お主が本物ならワシの魔法を撃ち破れるはずじゃ! 奥義、全魔激突〈ストライクオールラッシュ〉!」


「本物、偽物、どうでもいい! 俺は俺だあああぁぁぁ! くらええええぇぇぇっ!」


 レグルスさんはシャドウスタイルを見て警戒体勢に入った。その直感は当たりだ。流石、俺より遥かに長く戦っている魔法使い。シャドウアームで掴まれたまま、俺の魔力を感じ取って、俺より早く魔力を溜めて火・水・風・土が混ざった最強の複合魔法を放ってきた。複合魔法はその名の通り、魔法と魔法を合わせた強力な魔法。4つの魔法が1つになった攻撃魔法はシャドウアームを簡単に消し飛ばした。恐らく、氷結の魔女の最強魔法より遥かに上。ならば超えてみせる! 見せてやる俺の魔法を! 最初から見比べている誰かじゃない、この俺スバル=ブラックスターの魔法だ!





「スタァァァライトォ! バスタァァァァァァ!」


 俺の最強魔法、星影砲〈スターライトバスター〉を解き放った。





「こ、この、魔法は!」


【な……っ、なんじゃありゃああぁぁぁ!】


【な、なんという魔法! レグルス選手の魔法を押し返しているであります! ふぃ、フィールド全体に闇の魔力が!?】


「いっけええええええええええええええええええっ!」


「こ、これは、あやつの!? 間違いない、わしの魔法を飲み込んで強大化しておる! そうか、お主は本物じゃったか……」


 俺が解き放ったスターライトバスターを見て誰もが驚愕している。ある人は見たことない影魔法を見て、ある人はレグルスさんの最強魔法と互角に戦っているのを見て、ある人はその影魔法が自らの魔法を吸収してパワーアップしている事実を見て確信する。それぞれの人が驚くスターライトバスターは、ストライクオールラッシュを押し返しながら吸収。レグルスさんに直撃して尚且つ、観客を護る結界魔法に当たってから消滅した。





【う、嘘だろ……】


【3重結界の1つが壊れたであります……】


「マジか……、立っているだと……」


「ほっほっほ。この魔法とは何度も戦ったことがあるのじゃ。まだまだあやつ程では無いのぅ」


「くそったれ……」


 レフトさんとジャックさんの驚きの声が聞こえるけど、俺にとっては別のことで驚いている。レグルスさんが立っており、しかも傷ついた様子が無い!? あのスターライトバスターは確かに直撃したはずだ。その後は軌道が逸れて結界魔法に直撃……まさか、4属性の防御魔法を合わせた複合魔法か! ヤバい。今の俺は魔力が空っぽに近い状態。対して、レグルスさんは余裕の表情かよ。畜生、ここまでか……。少しでも『星影の衣』を守れる畏怖は見せれたかな……。





「さてと……」


「くっ……!」


「降参じゃ」


「……は?」


【……はい?】


 レグルスさんが近いてくる。そして、俺をじっと見つめてきた。膝をついている俺は、レグルスさんを見上げて睨むぐらいしか出来ない。5秒ほど何も起こらない時間が過ぎた瞬間、何故かレグルスさんはにかっと笑った。そして、降参を宣言。……ん、降参? 言葉の意味が理解出来ない俺とレフトさん。





「降参じゃ。審判、早よせんかい」


【おいおい。流石に予想外だぜ……】


【な、なんとレグルス選手、まさかの棄権! よって勝者、スバル選手!】


 レグルスさんは実況席に向かって再び降参宣言。ジャックさんも頭が真っ白になったらしくて、理解が追いついていない。先に回復したレフトさんが勝利宣言を叫ぶ。ただ、コロシアムの観客達も戸惑っておりざわめきが続いている。俺だって戸惑っているよ。一体、何がどうなっているの!?


「スバルくん」


「レグルスさん、一体何を……」


「1つ聞かせておくれ。お主に最後の影魔法を教えたのは誰じゃ?」


「最後の魔法……スターライトバスターのこと? 俺のじいちゃんだ」


「ーーーーっ!? もしや、名前はアルデバランではないかの?」


「は、はい」


「……そうかそうか。疑って悪かったのぅ。準決勝、楽しみにしておるわい」


 レグルスさんが再び俺に近づいてきた。俺は降参宣言を尋ねようとしたけど、いきなり質問された。質問の内容はスターライトバスターを教えてくれた人について。答えは俺のじいちゃんだよ。アルデバラン=ブラックスター、俺に影魔法の基本を少しだけ教えてくれた。でも自由奔放な『人』だから修行の途中で居なくなった。もうちょっと教えてほしかったよ。それにしても、レグルスさんはじいちゃんのことを知っているのかな? 俺の答えに満足したのか、レグルスさんはもう1度笑ってから去っていった。





「結局、何だったんだ……あっ!」


 降参宣言の理由、聞けなかった!





「おじいちゃん!」


「おお、ショルトや」


「何で降参したの? 応援していたのに……。それにおじいちゃんはもっとすごい魔法が使えるの知ってるよ」


「すまんのぅ。おじいちゃん、ショルトに良いとこ見せようと張り切り過ぎて疲れたのじゃ」


「大丈夫?」


「大丈夫じゃ、それに満足しておる。新しい世代が出てくるのは良いことじゃ。……それにしても、あやつめ。まさか孫が出来ておったとは……相変わらず連絡も無しに自由奔放しとるのぅ」


 レグルスは孫ショルトと控え室で会話。ショルト曰く、レグルスは本気を出していない。何故ならスバルと闘った時は全て初級魔法ばっかりだった。孫に怒られて困っているレグルスだったが、その表情は笑っている。レグルスが思う人物、スバルの祖父アルデバランのことを懐かしむのであった。





【準決勝は午後1時から行います。それまでお昼休みであります!】


 レフトさんの放送で本選は一旦お昼休み。ありがたい、魔力がすっからかんだから飯を食って補給しなきゃ。


「スバル!」


「ミランダ!? それに皆も!」


「メアリーが許可してくれた」


「大会関係者とはいえ、特別ですよ」


 俺は控え室に戻ると、そこにはミランダ、クリス、メアリーさんがいた。どうやら冒険者ギルド受付嬢メアリーさんのおかげで入ってこれたらしい。メアリーさんには頭が上がらないよ。そんなことを思っていると、クリスのミニゴーレムから魔法陣が現れた。何だ?


《スバルさん、次は準決勝なの! 私が作ったお弁当で回復するの!》


「また抜け駆けを! 私の分もあるぞ、スバル!」


「《むむむむむむ!》」


 クリスはお弁当をマヨネップ帝国から送ってくれた。でも、これって上級レベルの転送魔法だよね。クリスはやっぱり相当の実力者みたいだ。商人でも侮れないな。そしたら、今度はミランダがお弁当を出してきた。栄養バランス満点で美味しそう。あ、また2人が睨み合っている。どっちも食べるから喧嘩しないでと言おうとした瞬間。


「スバル様、ギルド特製弁当もありますよ。はい、どうぞ」


「あ、ありがとう……」


「《なぬ!?》」


「……ふっ」


「《しまった、思わぬ伏兵がいた(の)!》」


 メアリーさんからお弁当を貰ってしまった。いつもお世話になっているから断れなかった。ミランダとクリスがメアリーさんに睨みあい、メアリーさんはドヤ顔している。俺のために嫉妬してくれるのは嬉しいけど、やっぱり恥ずかしいよー! 結局、3人全員のお弁当を全部いただきました。美味しかった! さあ、いよいよ準決勝だぜ!

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