表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/43

第3章 3 影無双の予選会場

「ミランダ、行ってくる!」


「応援は任せておけ、スバル!」


 闘技大会予選の当日。デュランドの街は年に1度のお祭りイベントに盛り上がっており、色んな種族や職業の人を見かける。ちなみにミランダはこの前のデート服装で応援してくれるようだ。とっても似合っているよ。闘技大会はデュランドの街の中心地、コロシアムで開催される。





【闘技大会参加者は、受付からカードを貰ってから、こっちに並んでほしい】


 コロシアムに入った俺は、早速闘技大会参加の受付に向かう。そこでカードを貰う。スピーカーから聞こえる声に従って、コロシアム内の人々は移動している。この声はギルドマスターのジャックさんか。進んで行くと、人々が扉を開けて部屋に入っていく。俺も続き入ってみると、魔法陣が床に一面ある小さな個室だった。あれ、たくさんいた人々は?


【ようこそ、闘技大会へ。今から予選を開催する。参加者が多いからグループ分けを行う、カードに注目】


 ここにもスピーカーがある。ジャックさんから言われた通りにカードを見ると、10の数字が現れた。何の番号だろう?


【参加者はカードに書かれた番号の予選会場に転送。健闘を祈る!】


 なるほど。こうやって、参加者を分けているのか。魔法陣が輝き始めて俺の身体が転送され始めた。初めての闘技大会わくわくするぜ!



 


【第10グループの解説は、冒険者ギルド受付嬢メアリーでお送りします。よろしくお願いします】


 俺が転送された予選会場にはメアリーさんがいた。メアリーさん曰く、俺がいる第10グループは新米の新米や素行が悪い人達を中心に集められたらしい。確かに観客が僅かで、空席だらけ。周りもガラの悪そうな人もいれば、俺と同じような新米冒険者がいた。あ、ミランダが走ってきて手を振ってる。振り返そうっと。


【ルールは簡単、相手をフィールドから場外させると勝利です。10連勝すれば本選出場決定です。それでは試合を開始しますので、呼ばれた人はフィールドに入ってください】


 観客が僅かなら注目されないし、本選へのかくし球が出来るね。余程の相手が来ない限りは、必殺技スターライトバスターは封印しよう。まだまだ未完成だからね。まずは1勝を目指そう!





【第10グループ、スバル選手の第1試合を行います。対戦相手はハンジロウ選手です】


「初戦が俺様の相手とは不運だな、小僧! 俺様は『氷結団』を1人で壊滅させた闇属性の冒険者だ! 棄権するなら今のうちだぜ!」


「それで全身真っ黒なんだ」


 俺はフィールドに立つ。対戦相手との距離は約20メートル。近距離の武術、遠距離の魔法を平等にした距離感らしい。そういえば、ミランダやヴァンパイアのルビーとの決闘の時も大体このくらいだった。で、その対戦相手はまさかの俺の偽者でした。確かにシャドウスタイルは全身真っ黒だけど、普段からそうじゃないよ!


【試合開始!】


「くらえ、暗黒邪影剣!」


「いや、闇の魔力が纏ってないし、市販のロングソードじゃん。影弾〈シャドウボール〉!」


「ひでぶ!?」


 メアリーさんの声で試合が始まる。全身真っ黒人間が、同じような真っ黒の剣を構えて走ってきた。いや、色んなツッコミがしたい! 俺、魔法使いだから剣を使わないし、剣の名前が酷いし、何より闇属性の魔法が剣に纏ってない! 俺は色んな葛藤を抱えたまま、本物の闇属性の魔法シャドウボールを放った。全身真っ黒人間は奇妙な声を叫びながら場外まで飛んでいった。


【第1試合は勝者、スバル選手】


 勝った。まずは1勝! 最初は緊張したけど、あんな真っ黒人間を見ていたら緊張なんか無くなっていた。ミランダに手を振ってフィールドを降りた。後ろでは全身真っ黒人間が「本物……」と呟いていたらしい。





【ここからは連勝した勝者同士が戦いあいます。スバル選手の第2試合を行います。対戦相手はプットン選手です】


「くくく、私と同じ魔法使いか。第1試合では闇属性と見せかけた魔法を見ていたが、龍神教の目は誤魔化せまい」


「ちゃんとした闇属性の影魔法だけどね」


 次の相手は俺と同じ魔法使い。白い三角帽子に杖を構えており、俺の第1試合を観た感想を言っている。龍神教って何だ? 怪しい宗教はお断りします。闇の女神コスモス様一筋だ。それより、魔道具の杖は魔法を使うのに便利だけど、頼り過ぎると成長しないからと、父さんやじいちゃんから禁止されている。見た目はカッコいいのに。ま、いいや。今回の対戦相手も油断しているみたいだから、攻めよう!


【試合開始!】


「10秒で勝たせてもらう! 奥義、サイクロンハイパージャスティスバニッシュ……」


「長い。影拳〈シャドウパンチ〉!」


「ふべら!?」


 メアリーさんの合図と共に、俺は20メートル先の対戦相手に向かって駆け出す。白い魔法使いは、魔法を撃ち出すためか杖に魔力を集中しており、無防備だ。俺が魔法使いなのに、接近してきたことに気付いた時には手遅れだ。10秒経つまでに、影から現れた第3の拳で思いっきり殴った。大体、魔法の技の名前が長すぎ! 白い魔法使いはフィールドから場外した。


【第2試合勝者、スバル選手】


 2連勝! 連戦が続くルールだから速攻で倒して魔力をあまり使わなかったことにホッとする。あと、8人。出来るだけ攻めれる時は攻めようっと。俺の決意をよそに、後ろでは白い魔法使いが「りゅ、龍神様ぁ……」と呟いていたらしい。





【スバル選手の第6試合を行います。対戦相手はリリン選手です】


「まさか闇属性の人間がいるとはね。美味しそうな坊やだわ。でも、ハーピーであるあたくしのスピードについて来れれるかしら?」


「ハーピーか~、本当に腕が翼なんだ」


 ここまで5連勝。やっぱり闇属性と影魔法は初見殺しだね。うまく相手が油断してくれたから、何とか来れた。でも、次の対戦相手はハーピー。初めてみるね! ここからは油断出来ない、本番だ。ミランダ曰く、ハーピーのスピードは人間の3倍でドラゴニュートに次ぐ速さらしい。まずは防御からだ!


【試合開始!】


「先手必勝よ! 疾風刃〈サイクロンエッジ〉」


「っ!?」


「あらら、いくら闇属性とはいっても、この至近距離からの疾風刃〈サイクロンエッジ〉ではひとたまわりも……」


 メアリーさんの合図と共に、俺が魔法を用意しようとした瞬間、ハーピーさんは目の前にいた。あの、20メートルを一瞬で移動!? 爪から放たれたサイクロンエッジが身体に当たって、俺はフィールド場外まで飛んで行く。ヤバい、何とかしないと!


「影収納〈シャドウホール〉! 影腕〈シャドウアーム〉!」


「何よ、それ!?」


「お返すしますね。影放出〈シャドウリフレクト〉!」


「やぁん!?」


 勝利を確信したハーピーさんは追い打ちをしてこない。助かった! 俺は身体に当たっているサイクロンエッジをシャドウホールで影に沈める。そして、シャドウアームで空中にいる俺の身体を捕まえて、フィールドに投げ返す。その勢いのまま、影に沈めたサイクロンエッジをシャドウリフレクトで返した。ハーピーさんは自身のサイクロンエッジを防げず、フィールド場外に飛んでいった。


【第6試合勝者、スバル選手】


 6連勝! でも、危なかった! ミランダから獣人の身体能力について教えて貰ってなかったら負けていた。俺はお礼をかねて応援しているミランダに手を振った。あ、振り返してくれた。嬉しい。後ろではハーピーさんが「そんなのズルいわ……」と呟いていたらしい。





【スバル選手の第9試合を行います。対戦相手はアガット選手です】


「僕はオレメロン王国騎士団第5部隊副隊長アガットだ。参る!」


「スバルです、よろしく」


 8連勝で本選が見えてきた。でも、ここでまさかの騎士団。オレメロン王国を常に守っているエリート集団だ。俺達冒険者と違ってきちんとした装備をしているから、簡単には倒せないな。魔力の節約は考えないで、1つ1つの魔法に力を入れよう。どんな魔法を使ってくるかも分からないからね。相手は礼儀正しく名乗ってくれた、俺も返そう。


【試合開始!】


「今大会この魔法を破った者はいない! 戦いは数だ、土分身〈ランドクローン〉!」


「おっ?」


 副隊長はフィールドに魔法陣を出すと、地面から土の騎士を5体出した。しかも、各々が武器を構えている。ミランダが使っている風人形〈サイクロンドール〉と違って、意志があるみたい。横1列に並んで走ってきた。って、あれ?


「見よ」「これが」「僕達の」「最強」「魔法」「だ!」


「それなら、こっちも魔法を増やそう。影連弾〈シャドウボール・シックス〉!」


「「「「「「ぐわあああああああああああっ!」」」」」」


 副隊長本人も走ってきた。こういう魔法は、相手の力量を確かめるために本人は後方で様子見がベターなはず。それに実戦と違って予め20メートル離れているから、ハーピーのようなスピードじゃない限り魔法使いが魔力を貯めれる。それじゃあ、遠慮なくシャドウボールの連弾を1体ずつ当てた。1番左が本体だったみたいで、フィールド場外に飛んでいった。


【第9試合スバル選手の勝利。あと1勝で本選出場です】


 よし、9連勝! 本選出場まであと1勝だぜ。後ろでは騎士団第5部隊副隊長が「ぜ、全滅……」と呟いていたらしい。





【スバル選手の第10試合を行います。対戦相手はハックス選手です】


「あっしは精霊使いのハックス。出でよ、イフリート!」


『うおおおおっ!』


「あれが精霊……カッコいい」


 ついに本選出場が決まる最後の試合。それは対戦相手も同じだ。忘れていた緊張が復活してきた、落ち着け。俺が深呼吸していると、相手は火の精霊を召喚した。精霊使いはルール上、試合前から召喚できるようで、杖のような魔道具と同じ扱いらしい。それにしてもファンタジーの定番、精霊! 対戦相手とはいえ、カッコいいぞ!


【試合開始!】


「影弾〈シャドウボール〉!」


『ほう!』


「……っ!? 手応えが無い、精霊には魔法が効かないのか!」


『闇属性の人間とは珍しい。しかも、純粋な魔力に闇の女神コスモス様の加護までとは相当愛されているな』


 メアリーさんの合図と共に、俺は火の精霊に対して、シャドウボールを放つ。しかし、シャドウボールは精霊を通り抜けてしまった。見ている限り、ダメージが通っていない。理由は分からないが、精霊には魔法が効かない。そんな俺の思いとは裏腹に、精霊が口を動かして何かを話している。ごめん、俺は精霊使いじゃないから分からない!


「だったら精霊使い本人を倒せば!」


「イフリート、護れ!」


『むん!』


「イフリート、攻撃!」


『燃え上がれ、我が炎!』


 俺は精霊狙いを変更して、精霊使いにシャドウボールを放つ。しかし、火の精霊が今度は防御した。すり抜けることも出来れば、ちゃんと止めることも出来るのか! 今度は精霊が攻撃してきて、赤い炎がたくさん飛んできた。


「影壁〈シャドウウォール〉!」


『無駄無駄無駄無駄ー!』


「あっつー! くそっ、こっちの魔法は効かないのに向こうの攻撃は効くのか! 何か突破口はないか」


『なかなか楽しかったぞ。燃え上がれ、我が炎!』


「こんなところで!」


 火の精霊の攻撃に対して、俺はシャドウウォールで防御。しかし、赤い炎はシャドウウォールをすり抜けてきた。とっさにその場から離れて避けたけど、精霊の攻撃も魔法では通じないのか! そんなのありかよ!? 精霊への攻撃は効かない、精霊使いへの攻撃は精霊が防御する。これじゃあ、魔力の無駄遣いだし、勝ち目が無い! しかも、今度は精霊自体が迫ってきた。ここまでなのか!?





『はいはーい、ストップや。イフリートはん』


 俺の目の前に黒い精霊が現れた。しかも、火の精霊に対して立ち向かっている。どうなってる!?





「た、助かった……?」


『おいおい、何故お前が現れる?』


『女神の命令や。精霊が一方的に人間を攻撃するのは平等じゃないってさ』


「あれは闇の精霊シェイド!? 何でこんなところに!」


 黒い精霊が火の精霊の攻撃を防いでくれた。精霊使いも驚いている様子だから、相手が召喚した精霊じゃないのか。精霊同士が会話しているのは口が動いているのは分かるけど、何を話しているのかさっぱり分からん! 黒い精霊はシェイドという名前らしい。


『加護を与えた人間への過保護か。まあいい、普段現れないお前とやり合えるのは楽しいからな!』


『やれやれ、相変わらずの戦闘狂やな。まあ、闇属性の人間なんて滅多に会わへんから特別に戦ってあげるわ』


「イフリート、何してる。さっさと魔法使いを倒せ!」


 精霊と会話が出来る精霊使いは何か荒れている。こっちは混乱して困っているのに。とりあえず、シェイドさんに話しかけてみよう。


「何か精霊同士で話しているのは分かるけど、俺は全く分からん。シェイド? さんでいいかな。俺の言葉が分かるなら、右手をあげてほしい」


『ほい』


「ありがとう。あなたは俺の味方でいいかな?」


『ほい』


「分かった。あっちの精霊はお願いします。俺は精霊使いを倒す!」


『ええよ』


 簡単なコミュニケーションをしてみて闇の精霊は味方のようだ。言葉が通じて良かった。これで反撃が出来る。俺は闘技大会本選に出場して、仲間を守るために優勝するんだ。こんなところで負けてたまるか!


『面白くなってきたぜ! さあ来い、シェイド!』


『久々に動くで』


「影腕〈シャドウアーム〉! 両腕全開!」


「ちょっ、イフリート。あっしを守ってーーー!」


 精霊同士の攻撃がぶつかり合い、俺は精霊使いを狙う。精霊使いは接近する俺に背を向けて逃げ出した。って、足はやっ!





【第10試合勝者、スバル選手。スバル選手、本選出場決定です】


『満足満足!』


『闇属性の人間スバルはん、これからもコスモス様をよろしゅう』


 10連勝やったぜ! あの後は精霊同士が戦いあい、精霊使いは精霊がいないと何も出来ないみたいで、必死にフィールド内を逃げ回っていた。結構速くて魔法を何度か外したのが反省点だね。精霊同士は火の精霊が満足して消え、闇の精霊は何かを言って消えた。だから、分からないって!  まあいいか、これで闘技大会本選出場だぜ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ