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第3章 2 予想外のデート?

「ただいまー」


「お帰り、スバル」


「ミランダ、大事な話があるんだ。クリスとも話すからソファーに座ろう」


「分かった」


 俺は冒険者ギルドから満腹亭に帰ってきた。この部屋は『氷結の魔女』の賞金を貰ってからもそのままだ。1つだけ変わったのはお風呂が自由な時間に入れるようになったくらい、とってもありがたいよ。ミランダは可愛いエプロンを着て色んな調味料を作っていた。その作業を中断させて、連絡用ミニゴーレムを用意。


《サモン ミニゴーレム》


「クリス、もしもーし」


《スバルさん、お久しぶりなの》


「実はミランダとクリスに大事な話があるから連絡した。俺、闘技大会に出場することになった」


「本当か!?」


《おめでとうなの!》


 俺はマヨネップ帝国にいる『星影の衣』仲間であるクリスに連絡。そしたら、クリスの姿がミニゴーレムの立体映像で現れた。相変わらず、黄色い仮面は着けているのね。早速本題である闘技大会出場について話すと、2人は自分のことのように喜んでくれた。





「出場する理由はスバル自身と私達の『星影の衣』を守るため、か。悔しいぞ、スバル」


《スバルさんらしいの。『氷結団』事件はこっちでもたまに聞くから、このままだと確かに危険だったの》


「私も出場したいが、ダークエルフが出ると余計に迷惑がかかるから、しっかり応援するぞ!」


 そして、出場理由がギルドマスターからの伝言、メアリーさんの推薦、俺達のパーティ『星影の衣』について話すと、2人とも心当たりがあったみたい。パーティが少しずつ有名になるのは良いけど、俺達の場合は危険が迫る可能性がある。ミランダは何とか納得してくれて今回はサポートに回ってくれる。


「クリスは?」


《最近の出来事は、裏市場で面白い話題があったの》


「おいクリス、裏市場は辞めたはずでは?」


《ミランダ安心してほしいの。情報を売買しているだけで、スバルさんに迷惑かけていないの》


 マヨネップ帝国にいるクリスは商人という立場を利用して様々な場所を移動しているようだ。しかも、この前に止めた裏市場もたまに行っているみたいで、ミランダが少し疑った。俺は心配だったけど、クリスは『星影の衣』として迷惑はかけないと誓ってくれる。でも、気になる言葉があった。


「情報だと?」


《魔道具だけが商品じゃないの。誰が何の商品を買ったか、この行動自体も私の商品になるの》


「ややこしいし、難しいね。俺は商人には向いてないな」


「私も同じだな。新しい料理の献立を考えているほうが楽しそうだ」


《そう簡単に出来たら私の立場が無いの。表舞台では国民に伝えられないニュースがいっぱいなの。もちろん『星影の衣』に役立つ魔道具も探しているの。最近、曰く付きの魔道具セットが売れたのが話題になったの》


「ふーん」


 クリス曰く、商人の仕事は商品をいかに集めるか、らしい。魔道具は安いものから高いもの、情報は古いものから新しいものまで早く手に入れること。それがお金に繋がっていくようだ。うーん、すごく大変そうだ。ミランダも俺と同じように困っており、クリスは俺達を見て苦笑している。ちなみに最近の新しい情報は『曰く付き魔道具』らしい、物好きな人もいるのか。


「俺の報告は終わり。クリス、これからも気をつけて商売してね」


《分かったの、心配してくれてありがとうなの。スバルさん、大好きなの♪》


「えっ!?」


「おい! 抜け駆けはズルいぞ、クリス!」


《毎日会えるミランダには言われたくないの! またねー、スバルさん》


 俺達の和気あいあいとした報告を終えると、最後にクリスが爆弾を落としていった。これって愛の告白!? 分からないけど、顔が熱いよ~。ミランダはミニゴーレムにものすごく怒っているし、クリスも負けじと反発している。やがて、クリスがミニゴーレムを切って立体映像が消えた。気まずいよー、誰か助けて!





「スバル!」


「は、はい!」


「明日一緒にデュランドの街を遊びに行くぞ!」


「う、うん、良いよ」


「本当に良いのか!? よ、よし分かった、ちょっと出かけてくる! ………………クリスに負けてたまるか!」


 急に立ち上がったミランダが真っ赤な顔のまま話してきた。俺は頭が回っておらず、話の内容を理解していないまま、その勢いに思わず頷いてしまった。そしたら、ミランダは真っ赤な顔で風のように満腹亭を飛び出して行った。最後、遠すぎて何を言っているか分からなかった。あれ、これってもしかしてデート!?





「メアリー、助けてくれ! スバルとデートすることになった!」


 私は思わずスバルにデートを申し込んでしまった。だって、クリスに負けたくなかったからだ! 満腹亭を飛び出してやって来たのは冒険者ギルド。私が唯一頼りにしている受付嬢メアリーに助けを求めた。


「いきなり来たと思えば、なんですか。初心ですね、それでも年上ですか」


「年は関係ない、頼む!」


「仕方ないですね、休憩時間になったら付き合ってあげますよ」


「助かる! ありがとう、メアリー」


 私の頼みを聞いたメアリーはすごく呆れた顔で私を見つめてきた。そんな顔しないでくれ! ダークエルフの里でもこんな体験したこと無い。男を好きになったこと自体初めてなんだ! メアリーは何とか納得してくれて、付き合ってくれることになった。私は休憩時間まで待ってメアリーと表市場に出かけた。


「この前に買ったワンピースは着ていないのですか?」


「あ、あんな透け透けの服で街中を歩けるか!」


 メアリーと初めて買い物に行った時のワンピースとやらは、1度は着てみたが、あまりにも恥ずかしかった。何だあれは、下着が丸見えだったぞ。スバルを誘惑しろというのか。サキュバス族じゃあるまいし!


「確かに寝室用のネグリジェに近いタイプでした。まずは服装ですね」


「よ、よし」


「男性は色んなタイプがありますが、スバル様の場合は露出は控えめにして清楚系で攻めましょう。でも、スタイルが分かるような女性らしさのトップスにロングスカートを加えたら良いですね。ミランダは胸も大きく、くびれもありますから似合いますよ」


「これで良いのか。しかし、スバルの好みなどよく分かるな?」


「スバル様は男性の冒険者としては珍しい優良物件ですから」


 メアリーはギルド制服もそうだが、服を着こなしている気がする。今の私服もデュランド街で流行っているものだ。私は奴隷という立場もあり、服が少ない。スバルに頼めば買ってくれそうだが、それでは奴隷を甘やかしていると見られてしまう。今回買うのも1つだけだ。メアリーが服装を説明してくれるがとても分かりやすい。何故かスバルが好きそうな服装ばかりを選んでくれる。確かにスバルは大人しい服装を着ているから同じほうが良いな。だが、メアリーがスバルのことを話す様子が何か引っかけりを感じる。これは、まさか!?


「……メアリー、お前もスバルを狙っているのか?」


「こっちの服はどうですか?」


「……逃げたな。うう、ライバルが多いぞ……」


「ふふふ♪」


 メアリーがスバルのことを話す様子はクリスと似ていたからだ。仮面は被っていても明らかに他人と話す時とは違っていたのだ。カマをかけてみたが、あっさりと避けられた。メアリーのことは嫌いではないが、やっぱり悔しい。くそう、全部モテるスバルが悪い!





「ぶわっくしょん!」


 風邪かな? それとも、誰か噂しているのかな?


『モテモテですね、スバルさん。でも、女の子を困らせては駄目ですよ』


 いつもは聞こえない優しい女性の声がすごく近くで聞こえたのは、気のせいかな?





「ミランダ、似合っているよ」


「ありがとう、スバル。でも……」


「あー、うん。残念だけど、今日のデートは中止だね」


「何で今日に限って大雨が降るんだ!? うー、雨なんて嫌いだ!」


 翌日、気合いを入れたミランダの服装を褒めてデュランドの街を遊びに行こうとしたけど、すっごい雨風。ミランダが部屋の隅っこで大雨に対して怒っていた。ちなみにオレメロン王国での数年に1度の大雨だったらしい、とほほ。

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