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第2章 7 氷結団アジト

「ら、光射〈ライトシュート〉ぉぉ~~~!」


「火矢〈ヒートアロー〉! いつまで隠れているつもり、さっさと出てくるのですわ、おばさん!」


「ぐわあああっ!?」


「ぎゃあああっ!?」


 氷結団のアジトに来たエドガーとフレアは、スバルの予想通り真正面からアジトを攻撃。異変に気づいた部下達が飛び出してくるが、次々と倒していく。


「ここまで来るとはとんだお馬鹿さんザマス。氷塊〈アイスバレット〉!」


「見つけましたわ! エドガー様、わたくし達が氷結団を壊滅して英雄になるのですわ!」


「お、おおーっ!」


「やれやれザマス……。こんなドラゴニュートとエルフは誰も買わないザマス。二度と来ないように始末するザマス!」


 あまりの騒動に氷結の魔女カシオペアが現れる。特にフレアを見て溜め息、うんざりしている。エドガーとフレアは魔女を倒すことのみ考えて攻撃を始め、カシオペアも裏市場すら買わないだろう2人を倒すために戦闘を開始した。





「予想通り、氷結団と戦っているの」


「護衛依頼のことなんか忘れているに違いない」


「予定通り裏から侵入だ、影空間〈シャドウスペース〉。アジトの影の中を移動するよ」


「これは便利なの」


「欠点は影の中に入っている時間、魔力が消費し続けていくこと。戦闘には向かない魔法だよ」


 俺達はペガサス山の頂上に到着した。そこには氷結団のアジトらしき建物があり、所々が燃えていたり破壊されていた。正面入口では『日天の剣』と魔女が戦っていて、予想通り過ぎて呆れた。でも、ちょうどチャンス。俺達は見つからないように裏口に移動して作戦開始。影魔法シャドウスペースを発動、アジト自体の影に入りこむ。仮面さんが感心しているけど、魔力の消費が早いから使いにくい魔法だけどね。さあ、取り返すとしますか!





「急げ! 急げ! 頭の援護に行くぞ! お前ら、奴隷の奴を見張っておけ。こいつは集落で捕まえた貴重な魔法使いだ。絶対に逃がすな」


「「「イエッサー!」」」


 シャドウスペースの中を歩いていると、氷結団の部下がたくさんいるところに繋がった。そこには牢屋にいる奴隷がいて、話を聞いていると、あの集落の旦那さんだった。良かった、まだ生きていた!


「あの人、もしかして集落の旦那さん!」


「スバル、どうする?」


「スバルさんに一任すると決めたの」


「……助けよう。俺が防音の影魔法を発動するから、その隙にミランダと仮面さんは鎮圧してくれ」


「「分かった!」」


 俺は集落の旦那さんに気付くと、ミランダと仮面さんを見た。2人は俺の判断に従ってくれるみたい。ありがとう。早速作戦を伝えて氷結団に立ち向かう。


「影家〈シャドウハウス〉!」


「何だ?」

「敵襲……ぐわっ!?」

「てめえら、どこから……がはっ!?」


「お見事だよ、ミランダ、仮面さん!」


 俺はシャドウハウスを発動。部屋一面を影で覆う。氷結団の奴らが俺達に気付くけど、もう遅い。ミランダと仮面さんが後ろから攻撃して悲鳴をあげて倒れた。


「き、きみ達は一体?」


「俺達は集落の娘さんから助けを求められた通りすがりの冒険者です。助けにきました」


「ありがとう。僕は氷結団に奴隷腕輪を無理やり作っていた。こんなモノ、本来は人為的に作ってはいけないモノなんだ!」


 旦那さんは突然現れた俺達に驚いている。確かにびっくりするよね。俺達は事情を説明する。旦那さんはミランダが着けている奴隷腕輪を作らされていたのか。恐ろしいな。


「これらは全部パチもんなの。私の商品ではないの」


「旦那はどうする?」


「旦那さんは、ハウスゴーレムの中に隠れておくの」


〈サモン ハウスゴーレム〉


「ありがとう、仮面さん。引き続き、仮面さんの商品を探そう」


 仮面さんの商品ではなかった。でも、旦那さんが見つかって良かった。旦那さんはハウスゴーレムで隠れてもらおう。俺達は再びシャドウスペースに入った。人拐いをして幸せを奪う氷結団……許せない。





「ここは宝物庫か」


「キュオオオオオン……」


「ペガサス!?」


 俺達はアジトの影に入って移動している。今のところ、氷結団の姿は無い。恐らく『日天の剣』を倒すために全員外にいるのか。建物は外から見ると3階建てで、地下室は無かった。護衛商品を探していると、3階の端に頑丈そうな錠前がある部屋を見つけた。普通なら鍵が必要だけど、影空間には全く意味無し。入ってみて影空間を解除すると、目に映ったのは白い翼がある馬がいた。ペガサスだ、初めて見た!


「これは酷いの。魔道具で強制的に魔力を吸収していて、かなり痩せ細っているの。それに、ろくに食事を与えていないの」


「氷結団に捕まっていたのか。ますます許せないな。ミランダ、可哀想だから回復魔法をしてあげて」


「分かった。風治療〈サイクロンヒール〉」


「キュオオオオン!」


「落ち着いて、俺達は君の敵じゃない。氷結団から奪われた物を取り返しに来ただけだ。元気になったら逃がしてあげる」


「キュオオオオン……」


 ペガサスは弱っていた。仮面さんが見ると、かなり痩せているみたいで元気が無い。便利な魔道具も使い手によっては凶器になる。俺はミランダに回復魔法を指示してペガサスに近づく。突然現れた俺達に威嚇しているペガサスだけど、俺が解放することを伝えると、ゆっくり座って横になった。今までの疲労があったみたいで、ミランダの回復魔法を与えるとリラックスしている。かっこいいペガサスを傷める氷結団……ますます許せない。





「商品があったの」


「仮面さん、俺の影に護衛商品を入れても良いかな?」


「お願いするの」


 俺とミランダがペガサスを説得している間、仮面さんは護衛商品を探していたみたい。台車は無くて商品のみを置いてあったみたいだ。アレックスさんの雑貨商品も含め、俺の影シャドウホールに納しておく。


「魔力が半分になった。ごめん、ここから先は戦闘になった場合を考えるとシャドウスペースが使えない」


「充分なの」


「スバルのおかげだ」


「後は脱出するのみ」


 俺はシャドウスペースが使えないことを伝える。俺1人ならともかく、3人分の移動は魔力が想像以上に消耗していた。ペガサスの回復が終われば、直ぐに脱出。護衛商品を取り返し、こんなところに用は無い。





「ここが宝物庫~~!」


「私達の勝利ですわ!」


「待つザマス!」


 聞き覚えのある声が、ここに入ってこなければ。





「「「げっ…………」」」


 俺達は絶対同じ表情をしていたに違いない。どこまでお邪魔虫だ、このやろーーーーっ!





「ねずみが3匹いたザマス!」


「スバルくん!?」


「あなた達、いつの間に! もしや、わたくし達を出し抜く算段ですわ!」


「最悪だ!」


「囮にもならないの」


「戦闘陣形!」


 俺は魔女さえ居なければ『日天の剣』の連中に影魔法を思いっきり当てていただろう。相変わらず、勘違いエルフの言葉を無視してミランダと仮面さんに指示。予め考えていた戦闘陣形の態勢に移る。魔力を貯めようとしていると、後ろから強い鳴き声が部屋に響いた。





「キュオオオオオオオオン!」


「ふべら!?」


「すげえ、ペガサス! 行くぞ、ミランダ、仮面さん!」


「「分かった(の)!」」


 ペガサスが魔女に体当たりして、その勢いのまま壁を粉砕。良かった、元気を取り戻したのか。外に飛ばされた魔女を見て思わず興奮してしまった。ペガサス、かっけえええええっ!





「スバルくん、待って~~!?」


「待ちなさい! わたくし達の治療をしなさい!」


「お前達いい加減に……!」


「ミランダ、先に行って。すぐ行く」


「了解!」


 魔女に追い打ちするべく攻める俺達に『日天の剣』の連中が待ったをかける。あまりの発言にミランダの限界が越えそうだし、俺も流石に限界。ミランダと仮面さんを先に行かして、奴らを封じよう。もう邪魔だ。


「そんな怪我で、ヘラ口を叩けるなら問題無いな」


「治療しないよ! わたくし達を誰だと!」


「誰?」


「まあ!? この御方はイストール家のエドガー様ですわ! そして、わたくしはその従者フレア!」


 俺は勘違い連中を皮肉る。氷結団や魔女との闘いで連中は怪我をしているが、かわいそうとは思えない。俺の冷たい目に気づいたのか、とうとう家の名前を言ってきた。この世界で名字があるのは、貴族や王族に有名な家系のみ。俺の家も名字があるけど、今は関係ない。





「知らん」


「「……………は?」」


 エルフのどや顔に対して、俺は普通に返した。





「じゃあな」


「待ちなさい、イストール家ですわ! かつて、ヴァンパイアの王を仕留めた名誉ある英雄の子孫で……」


 俺が立ち去ろうとする見て、焦るエルフはイストール家について説明。再びどや顔をしているが。





「やっぱり知らん」


 残念ながら、俺はこう返す。





「な、な、何と常識はずれな庶民ですわ!?」


「あーもー、ごちゃごちゃごちゃごちゃ、うるせえ!」


「「…………っ!」」


 勘違いエルフに対して、俺は怒り爆発する。今までのストレスが全て解放されたのか、自然と闇の魔力が身体から溢れ出した。人間から闇が出ているのに驚いたのか、化け物を見ているのか、どうでも良い。お前はもう黙れ。


「関わるなと言ったのは、お前だ! 冒険者なら冒険者らしく自ら責任を果たせ!」


「な、何て暴言を! 侮辱ですわ、この」


「もう耳障りだ、影家〈シャドウハウス〉」


 俺は勘違いエルフに言われたことを同じように返した。冒険者は自由だけど、自分自身の行動には責任がある。それを家の名前を使って責任から逃れることは1人の冒険者として許さない。勘違いエルフはともかく、同じパーティのヘタレのドラゴニュートも同罪。リーダーなら仲間の過ちを止めろ! 俺は仮面さんが発動していたハウスゴーレムの物真似したシャドウハウスを発動。 影が『日天の剣』を閉じ込めた。





「ーーーーーーーー!」


「シャドウハウスは防音に優れているから、何も聞こえないよ。あー、すっきりした」


 わざわざ見えやすくしたシャドウハウスから勘違いエルフが何かを叫んでいる。ちなみに破壊しようとしても、周りに影がシャドウハウスに映っている限り、外から影が消えることは無い。俺が解除するまで、邪魔するな。さて、ミランダと仮面さんのもとに向かうか。2人のほうが心配だ。





「お待たせ。あいつらは俺の影魔法で閉じ込めたから思う存分戦おう」


「「ありがとう(なの)!」」


 俺は3階から降りて外に出る。ミランダと仮面さんは氷結団の部下を一掃して、ペガサスが魔女と戦っている。勘違いエルフとヘタレのドラゴニュートを閉じ込めたことを伝えると、笑顔で親指を立ててサムズアップしてくれた。この世界でもサムズアップあるみたいで同じように返した。


「キュオオオオオオオオン!」


「あべしっ!?」


「ペガサスも無事みたいだね。ここから先は俺達は引き受ける。ミランダ、仮面さんと一緒に戦うよ」


「不本意だが、スバルの命令だ。仮面女、協力してもらう」


「商品を取り返してくれたスバルさんのためなの。もちろん協力するの」


 俺達はペガサスのもとに行く。魔女カシオペアは何故かペガサスに苦戦しているので、絶好のチャンスだ。やっぱりペガサスって強い。俺は魔力を解放して、ミランダも槍に魔力を纏い、仮面さんは魔道具でゴーレムを造り出す。さあ、行くぞ!

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