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「というわけだにゃ」
「要するにお前は魔界から人類を救うためにやってきて、行き倒れてコーラ飴を欲していたと?」
取ってつけた理由だなあ。
「まあそんなとこだにゃ。貴様らみたいにゃ下等生物にはこのくらいの説明の方がしっくりくるにゃ」
「そんなこと信じられるわけないだろ! そのコスプレを剥がせば普通の人間じゃないか」
俺はそう言って頭についている耳を握った。
思いの外硬く張り付いてるなあ。外す時にハゲるんじゃないのか?
よく見てみればきている服はうちの高校の制服だし、大方中二病でもこじらせたかわいそうな子なんだろう。
確かに気づいたら亮は倒れてたし、この女はコンビニの屋根に飛び乗っていたわけだが、あれはおそらくトリックだ。
どうせ後で「トリックだよ」みたいなネタバレでもしてくるんだろう。案外亮もグルで慰謝料請求でもしてくるつもりかも。
「かわいそうなものを見る目はやめろー!」
コーラ飴を舐めながらかわいそうなコスプレ少女は叫んだ。
「とりあえず言ってる意味はわかるけど、魔界から来たような奴がコーラ飴舐めるのはなんだかなあ」
「我々異世界の生き物は実体を保つためになんらかのエネルギーを得ないといけないにゃ。エネルギーとは夢であり人々の希望にゃんだが、この世界ではそうそう集まらにゃいので夢の塊、つまりコーラ飴が必要なんだにゃ」
「なるほどわからん」
コーラ飴の何が夢なんだよ。
張り切ったコスプレの割には妙にリアリティがない設定なんだなあ。
「もちろんにゃ。ネコマタの私は他にも、エネルギーを得られる方法もあるにはあるんだが、そっちはちょっとめんどうなんのでにゃ。手伝ってくれるならうれしいんだけどにゃー?」
可愛く言っても俺には効かない。
面倒なのはこっちだよ全く。
一刻も早くこの場から逃げ出したい。
「後始末は勝手にしておいてね。じゃ」
「ちょっと! 待ちにゃさいよ!」
引き止められた。
「そういう遊びは他の人に頼んでくれ」
「そうはいかないにゃ!」
腕を掴まれて引き寄せられる。
「もう勘弁してくれよ。こんな変な奴のいられるの見られたら明日から噂になっちゃうだろ」
とは言ってもこんな田舎町のコンビニの周りのは人っ子ひとりいない。
夕焼け空にカラスが三羽飛んでいるだけだ。
「違うにゃ。この男死んでるにゃ。言うこと聞かないとお前が犯人にゃ」
えぇ……。
嘘だろぉ。
この女が倒した時から動かないなあとは思っていたが。
「だったらどうしろって言うんだよ!」
ネコマタはニヤついていった。
「私と契約して魔法少女になって!」
おいおい。語尾の設定忘れてるぞ。
「じゃなかったにゃ。私の協力者になるにゃ」
「俺に犯罪の片棒を担げっていうのかよ!」
「まあまあ、そう熱くならにゃいで」
そう言ってネコマタはポケットから言いようのないほど禍々しい指輪のようなものを取り出した。
そしてそれを差し出して、
「契約だにゃ!」