最終回.召喚少女は、愛を伝えた
少しのBL表現と不快表現あり
ここ数日、紗奈様の元を離れて実家の稼業をしています。
と言っても、暗殺稼業ではなく実験と趣味と観察をかねてターゲットにトラウマを段階的に植え付けていたのです。
楽しんでいる私に気を使ってか、両親や親族たちは誰も声をかけてきませんでした。不思議ですね?
本来なら、弟ヴァジムがするはずだったらしいのですが、両親に土下座して頼まれたので私がしました。
ヴァジムがするはずだったのに私が依頼を受けたのはごく簡単な理由です。
そうです。ヴァジムが紗奈様の伝える愛に完全に堕ちていなかったからです。
私がいれば、愛を伝える作業が中断するかもしれないので、離れていたのです。
紗奈様に用意されている部屋がある別邸の周りには、侵入者対策にトラップを仕掛けてきました。これで、私がいない間も安心です。
私が紗奈様の傍を離れている時に、自体は意味不明な明後日の方向に行ってしまいました。
オパール国第一王子アドリアーノ・オパール様とトルマリン国第一王子ヴェニアミーン・トルマリン様が、BL道に超特急で突っ走っていったのです。
紗奈様によると、お二人に愛を伝えている途中でそれに嫉妬したキュオスティ・アクアマリン様、ヴァジム・ラピスラズリ、ケレイブ・サードニクス様、コナー・サードニクス様たちが乱入して思いもよらぬ方向に行ってしまったとのことです。そして、あのお二方は引き返すことのできないほどに勢いよく男色の性癖に目覚めてしまったのだとか。
私はお二人が紗奈様の部屋でイチャつき始めたので、簀巻きを巻きつけて引き摺り、別室に閉じ込めました。
結果、アドリアーノ・オパール様とヴェニアミーン・トルマリン様の恋愛展開は見ないことにしました。
小説で読むのはいいのですが、現実で見るとなると反応に困るのです。
目を逸らすしかないですしね。
その間も、四馬鹿は紗奈様に構ってオーラを出しています。
四馬鹿全員が仕事の日に、紗奈様は気分転換がしたいと言いました。
ですので、なぜか一年中咲いているチューリップ園に行くことにしました。
紗奈様が、現実で本当にチューリップ園にチューリップが咲いているか見てみたいと言ったためです。
元の世界の常識で考えると、チューリップが一年中咲き誇るのはありえないですからね。
そこに、クライヴ少年とグレタ王女様がいました。
お二人は婚約者の関係です。
結果的に言えば、私がお二人を引き合わせたようなものです。
「ヴァレンティーナ、巫女様、御機嫌よう」
「グレタ様、クライヴ少年、おはようございます」
「ヴァレンティーナ様、巫女様、おはようございます。ヴァレンティーナ様、いい加減少年呼びは止めて下さい!」
「クライヴ少年、私にとってはいつまでもクライヴ少年はクライヴ少年のままですよ」
私が笑顔で言うと、クライヴ少年は黙ってしまいました。
紗奈様は、クライヴ少年をここから追い出して欲しそうにしています。
どこかしら、顔色が悪くなったような感じがします。
「グレタ様、クライヴ少年、婚約者同士といえど年頃の男女が二人でこのような場所にいれば、勘ぐられてしまいますよ。ですので、早くお戻りになった方がよろしいかと。クライヴ少年、グレタ様をきちんとお送りするのですよ」
「分かりました。失礼します、ヴァレンティーナ様、巫女様」
クライヴ少年とグレタ様は、ここから立ち去って行きました。
「ありがとう、ヴァレンティーナ。あの男、苦手なのよね」
「クライヴ少年って、攻略対象でした?」
「知らない? 隠しキャラよ。小さい頃、親に売られて性奴隷にされて巫女として召喚されたヒロインに偏執的な愛を注ぐのよ。ヤンデレ監禁EDしかなくてトラウマになったわよ!」
「今のクライヴ少年は、ごく普通の好青年でそんな過去はありませんよ」
「本当!?」
「はい。小さい頃に、ゲスで最低な親たちから私が助けたせいかもしれませんね」
「あなたは、神か! 知らずに、私が不幸になるフラグをすでに折っているなんて!」
「そこら辺にいるごく普通で平凡な侍女です」
「侍女という名のサポートキャラなんですね、分かります」
こうして、紗奈様はこの世界のこの国が用意した恋愛相手(約二名除く)を物理を交えて精神的に攻略完了しました。




