プロローグ-死人の視認-
煌々と光る粒子の中を少年の意識が流れる。
(ここは………)
流れる意識の中で、ふと、目につく一人の男が居た。
「ようこそ、狭間の世界へ」
男は白衣姿にメガネをかけた髭面といった風貌で、
机に向き合い何故か碁盤でチェスを行っている。
(あんたは?)
「研究者、ここで世界の観測を行ってる、
後趣味で二つの世界が繋がるかどうか試してる。
でまぁ、薬物を混ぜ合わせる代わりに……
人間を混ぜ合わせどういった科学反応が出るのか試している訳だな、
実は君の世界にも向うの世界の人間が居たりする訳だが……
それもまた些細な問題だ」
(俺はなぜ呼ばれた?)
その言葉を聞くと心底嬉しそうに男が笑った。
「求めたからだよ……誰よりも強く日々の変化を、つまらなかったんだろう?」
だからさ、とニヤリと笑う男の目はどこまでも楽しそうなのに……
どこか虚ろなのは気の所業か?
「さて、君は私の呼びかけに答えた……
君にはこれから別の世界に行ってもらう訳だが、
異なる文化、異なる言葉……
まぁ、正直君にそれらを乗り切る頭も経験もあると思えないから、
すこーし以上のプレゼントだよ、
適当に使って精々死なぬように気を付けてくれ」
男がパチンと指を鳴らすと視界の端に、
見慣れたゲームのようなウィンドウが表記される。
(これは?)
「ゲームみたいだろ?わかりやすさを優先したインターフェイスだ、
だが、君の行く世界は間違いなくリアル……
その辺はき違えると本気で死ぬから注意ね、
ステータス割り振り式のゲームはやったことあるかい?
ステータス画面からそんな感じで振り当ててくれ、
知らないならとりあえずSTRとAGIとDEXちょっと振っとけばなんとかなるよ。」
(盗賊!?)
「なんだ知ってるじゃないか……マニュアルあるから熟読しときなさい、
悪しからず……じゃぁまぁ頑張って!」
男は再度パチンと指を鳴らすと、再び意識は光の奔流に飲み込まれていった。
幾程の時間が経過したのだろうか?
光の本流を流される途中に何度か白い膜のような物が目についた、
初めは回避するように動いていたのだが、
途中で逆に触れてみると脳内にしびれるような快楽が叩きつけられた。
どうやらこれは悪いものではないらしい、
そう思いまるで誘蛾灯のような白い膜へと触れていくと、
不意に今度は痛みが走った。痛い、痛い、痛い。
現実味の無いような、夢の中で切られたような熱い痛みが駆け巡る。
痛みに耐えながら、ふと、
視線を流すと木の実のような物がフワフワと近寄ってくる、
はて、これは一体なんだろうかと、痛みも忘れ手を伸ばすと。
触れた瞬間、体が何かに引き込まれる感覚が走り……
気づくと光に満ちる部屋の中に居た。
次の話は……デロデロに酔った状態で、
即席英雄が歩み始めるお話、後慈悲は無い