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即席英雄と七人の柱と一つのお皿  作者: 砂上天秤
第一章 魔王と少年と少女の放浪
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戦術的逃走とは

魔王は考えた、何故この少女が必要までに此方を挑発するのか、何故無駄な話を長々とするのか。

目の前の赤は本気を出せば簡単に此方から逃げおおせる事ができるだろう。

それに直接戦闘はあまり好まない、どちらかと言えば策略家タイプの性格をしている筈なのに何故?という疑問が大きい。


即ち足止め、だが、何を待っているのか?


A:即席英雄の召喚


おそらくコレだろう……だが殺害する意思が無いのに何故召喚を待つ必要がある?

アンサーは出てこない、だが……召喚を待って居るのだとしたら、それを止める事で事態は好転する可能性がある。


あるいは、本当に此方と話したいのかもしれない。

故に、一旦此方が英雄召喚を止めにいくフリをして相手の様子を伺えばいい。


それが魔王の出した答えだった。


答えを求め駆け出し、焦り追いかけようとする少女の顔を見て確信を得る。


新たに勝利条件を設定。

『勝利条件:召喚の阻止、あるいはそれに準ずる妨害行為』


そこからの行動は早かった、あろう事かこの魔王、逃げと守りに関して世界最高峰の手腕を持つ。


跳躍系魔術を警戒し、原始の魔術で空間をかき乱しながら進む、恐ろしく手慣れた物だ……実は盗賊と言われても納得の逃げっぷりである。


触れれば崩れるが一度だけあらゆる魔術を防ぐ壁、魔力を流し込めば簡単に崩れるが1度だけあらゆる物理攻撃を弾く壁。

それらを何十にも壁に施し逃げ続け、闇に揺れる通路をモミアゲ大怪盗よろしく走り抜ける。


「義兄さん!話を聞いて下さい!」


それでも距離を離さず付いてくる少女の技量も流石という他無い。

異形の手と魔を同時に100以上駆使し、その道を切り開く。

されど距離は縮まらない。


同時に、相手が悪かった。

彼以外であれば追いついていたであろうが……


「断る!『原始の闇、4足の獣、宙を這う』」


その詠唱と共に、シルドは自らの影の中に溶け込むと、一直線で突き進む影の矢と姿を変貌させる。

『闇歩き』と呼ばれる高度な原始の魔と魔術の混合魔法。

闇に対する高い適正が無ければ扱え無いが、移動すべき場所まであらゆる障害物を無視し直線距離で移動できる。


「なっ!?」


尚、この魔術、赤の少女は相性が悪く使えず、少女も魔王が使える事を知らないが魔王はその双方を知っていた。

相手の手の内を知っているがこその一手であり、この状況を作った盗賊……もとい魔王の実力とも言えるだろう。


シルドは剣の腕に優れている訳では無いし、魔術に優れている訳でもない、

彼が優れていると言われている点は扱いにくい武具の扱い、そして、流れや空気を作る事であろう。


戦いには流れという物がある。

苦せずして勝てる流れ、即ち相手を呑んだ流れと言うべきだろうか?

相手は元来の力を発揮できず、此方は元来以上の力を発揮する流れ。


俗にメタ戦術や、ハマると強いとも言うかもしれない。

相手の得意を潰し、相手の一番弱い部分に自らの一番強い部分を押し当てる戦いだ。


小手先と言えば小手先だろうが互いに余地が無い程極まった状態であれば、それは十分に通じる。

彼が倒して来た相手は大凡彼よりも強い者が多い、体力が、力が、地力が彼よりも上の実力者達だ。

だが、彼は今このように生きている。

相手に劣っていても、直感・知識・経験・技量・策略・粘り・胆力、それらを持って自らよりも強い相手を常に打ち倒して来た。


『弱者』の戦い、工夫ある戦いだ。


時に逃げる事もある、しかし、逃げた相手は常に後に打ち倒している。

魔王に打ち勝てたのも、その慎重さやセンスがあってこそだと断言できる。


その実力が遺憾なく発揮された状況、即ち少女は『詰み』であると言える、実に南無三。


「義兄様アアァァ!!」


絶叫にも近い咆哮が通廊に響く、

全て後の祭りなのだが、それでも叫ばざるを得ないのだ。


過去の奴片っ端から修正したので少し読みやすくなってる筈、タブンネ!

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