そして現在・・・
場面変わって、ここは太平洋上。一艘の小舟に、3人の男女が乗っていた。
そのうちの一人・紺色の長髪の青年に、赤紫のの少女が語りかけた。
浮世の過去話を不思議そうに聞いていた少女に、彼は話を続けた。
「それからは、先日も話したように、布袋と出会い、一戦交えたが敗れた。その後、布袋のアイテムで東京へ向かい、親父さんこと、大黒天と再会したわけだ」
《大黒天…貴方はまだ何か隠しているようですね。再会した日の夜、二人で語り合ったが、帝釈天のことも、以前から知ってるような感じがした。だからこそ、心が広いのかもな》
「兄貴はその後は、すぐに打ち解け、コブの使い方もすぐにマスターしたんじゃよ、更音ちゃん」
相撲力士のような体格をした小太りの青年が、更音と呼ばれた少女に補足した。
「へぇ~でも、布袋さんの方が強そう」
「おわっ!そりゃ嬉しいわい!」布袋は、顔を赤らめた。彼は更音に気があるらしい。
「そりゃあそうさ。布袋は相撲の経験があるし、俺は敗れたしな」
「な~に言ってんじゃ、兄貴。さっきの戦いでの指揮ぶり、見事じゃったわ!流石は恵比須! 親父さんと並ぶリーダー格だけのこと、あるわい。こうして3人無事なのも、兄貴のおかげじゃい。なぁ、更音ちゃん」
「そうね。浮世さ…」
「更音、いや弁天…」
浮世は突然、更音を優しく抱きしめた。
「わひっ…///_///」布袋は突然の、浮世の行為に、真っ赤になる。
「え…?」
《もう、俺の感触だけは、分かっただろ?大丈夫、徐々に 思い出せるさ》
《え、ええ…》
「兄貴~ラブシーンはもういいから、出発じゃい!また天使人類の奴らに襲われたら、たまらんわい!」
「ああ、そうだな。急ぐとするか」
「じゃあ、私が操縦するわ」
「いや、俺がする」
浮世こと恵比須は、小舟の操縦席に座るや、操縦桿を握り締めると、船のスピードを上げ始めた。
まるでホバークラフト並み、いやそれ以上の速さである。
操縦しながら、彼はひとりごちた。
《婆さん、俺は今でも貴方に感謝してます。貴方に出会わなかったら、とっくにあの世に逝ってました…またいつか、摩周湖に行ってみたいです。ただし今度は独りじゃない…》
彼は後部座席の更音を見つめた。
彼女はニッコリと、浮世を見つめ返す。
《そして天使人類ラスボス・帝釈天!2年前の屈辱を晴らし、貴様の野望を打ち砕いてやる!》
浮世はそう決意するや、小舟のスピードをさらに上げた。
小舟は波を蹴立て、大黒天が待ってる東京湾へと向かっていった。
(完)